電磁気学を深く理解するための数学
F: 第9章 電磁気学に必要な微分幾何
微分幾何は、電磁気学とは別の物理理論ではありません。Gaussの法則やStokesの定理で何を積分しているか、座標を変えても何が保存されるか、材料則がどこへ入るかを、曖昧なく記述するための数学です。学部編で動かした電位、電界、磁力線、ベクトルポテンシャルを、微分形式、計量、座標変換の言葉で捉え直し、その重要応用としてローレンツ力、Maxwell応力、磁気コエネルギーによる電磁力を学びます。節点力への離散化、有限要素法、仮想仕事、位相自由度、誤差評価は、G編「有限要素法」へ渡します。
| 学部編で先に理解する量 | 微分形式での読み方 | 積分する対象 |
|---|---|---|
| 電位 $V$ | 0-form | 点で値を読む |
| 電界の循環 $\vec E\cdot d\vec\ell$ | 1-form | 曲線に沿って積分する |
| 電気束 $\vec D\cdot\vec n\,dS$ | 2-form | 面を貫いて積分する |
| 電荷 $\rho\,dV$ | 3-form | 体積にわたって積分する |
二編の学習の見通し
式を抽象化すること自体が目的ではありません。電圧は線に沿って測り、磁束は面を貫いて測るという電磁気の具体像から出発し、連続な場の保存構造を壊さず有限要素法へ渡すまでを、可視化と式の対応から学びます。
動く具体例から式へ進む
微分幾何は記号だけを追うと、何を測り、何が保存されるのかを見失いやすい分野です。本教材では各回の中心となる動く例を、次の順で使います。
修士課程の共通読解軸
毎回、次の5問へ自分の言葉で答える
Canvasを動かして終わりにはしません。観察した電磁気現象を式で説明し、FEMの結果が正しいかを別の量で検算し、自分の研究問題へ使えるところまで進みます。
- 何を測っているか。未知量は点の値か、線積分か、面積分か、体積積分か。何-formとして、どの幾何学的対象へ積分するかを答えます。
- どの保存則か。外微分 $d$ が表すMaxwell方程式を特定し、湧き出し、循環、境界のどれを保存しているかを答えます。
- 何が材料と形状に依存するか。長さ、角度、体積、誘電率、透磁率など、計量と材料がHodge starへ入る場所を答えます。
- 何が変換後も保存されるか。座標変換のpullback、向き、穴を回る周期を区別し、線積分・磁束・エネルギーのどれが保たれるかを答えます。
- 計算間違いをどう発見するか。残差、周期、エネルギー正値性、Jacobian、上下界、$\boldsymbol C\boldsymbol G=\boldsymbol0$ など、その回とは別の診断量で判定します。
二編を終えたときの到達判定
一つの電磁石を選び、積分形Maxwell方程式から未知量のform次数と適合空間を決め、位相的な接続と材料Hodgeを分けて弱形式を組み立てます。計算後は、同じ式を見直すだけでなく、保存則、周期、エネルギー、相補上下界のうち独立な量で結果を検算し、必要なh細分またはp高次化を選べれば到達です。
二編を貫く量の地図
微分形式の次数は、量を積分する幾何学的対象と対応します。ただし、次数だけでは不十分です。Bossavitのorientation-freeな定式化では、通常のpullbackで変換する straight form と、向きの情報も持つ twisted form を区別します。twisted formは、ordinary form $\omega$ と空間の向き $\mathrm{Or}$ の組を
という同値類にしたものです。向きを選ばないまま積分や構成則を記述できる、理論的に最も素直な定式化です。外微分 $d$ は次数を一つ上げながらstraight/twistedの別を保ち、計量Hodge $\widetilde{\star}_g$ は両者を入れ替えながら相補的な次数を結びます。
| 幾何学的対象 | 次数 | intrinsicなstraight form | intrinsicなtwisted form | 直接積分する量 |
|---|---|---|---|---|
| 点 | 0-form | 電位 $V$、流れ関数 $T$、Clebschポテンシャル $\alpha,\beta$ | 磁気スカラーポテンシャル $\widetilde\Phi_m$ | 値そのもの |
| 曲線 | 1-form | 電界 $\mathcal E$、磁気ベクトルポテンシャル $\mathcal A$ | 磁界 $\widetilde{\mathcal H}$ | $\int_C\mathcal E$、$\int_C\widetilde{\mathcal H}$ |
| 面 | 2-form | 磁束密度 $\mathcal B$ | 電束密度 $\widetilde{\mathcal D}$、電流密度 $\widetilde{\mathcal J}$ | $\int_S\mathcal B$、$\int_S\widetilde{\mathcal D}$、$\int_S\widetilde{\mathcal J}$ |
| 体積 | 3-form | orientationを選んだ体積形式 | 電荷密度 $\widetilde\varrho$、エネルギー密度 $\widetilde{\mathcal U}_m=\mathcal B\wedge\widetilde{\mathcal H}/2$ | $\int_\Omega\widetilde\varrho$、$W_m=\int_\Omega\widetilde{\mathcal U}_m$ |
| 計量・材料 | parity-changing Hodge | $\widetilde{\mathcal D}=\widetilde{\star}_{\varepsilon}\mathcal E$、$\mathcal B=\widetilde{\star}_{\mu}\widetilde{\mathcal H}$ | straightとtwistedの対応 | |
ここでtwisted 3-formなのは空間上のエネルギー密度 $\widetilde{\mathcal U}_m$ です。正の体積密度を選んで $\widetilde{\mathcal U}_m=w_m\widetilde{\mathrm{vol}}_g$ と分けた係数 $w_m$ は0-form、積分後の全エネルギー $W_m$ は実数です。さらに $W_m(q)$ と書くときは、物理空間ではなく配置空間上のスカラー関数を意味します。
本教材と我々の手法では、ここから計算規約を簡単にします。各領域で右手系を一度選び、twisted formの同値類からその向きに対応するordinary formだけを取り出します。以後の式に現れる $\Phi_m,\mathcal H,\mathcal D,\mathcal J,\varrho,\mathcal U_m$ は、この右手系代表です。領域内部ではすべて普通の微分形式として計算し、同値類を式ごとに書き下しません。
代償として、異なる領域を写像 $g$ で対応させるときだけ符号表を使います。intrinsicにstraightな量は $\eta=g^*\eta'$、intrinsicにtwistedな量の右手系代表は $\omega=s_g\,g^*\omega'$、$s_g=\operatorname{sgn}(\det\boldsymbol Dg)$ です。したがって右手系どうしの通常の変換では追加処理がなく、向きを反転するKelvin変換だけで $s_g=-1$ を掛けます。これはBossavitの理論を近似する操作ではなく、向きの束を右手系で自明化した記法上の妥協です。全回で使う検算は、$d^2=0$、$g^*(d\omega)=d(g^*\omega)$、符号表の整合、$\int_\Omega\omega\wedge\star_g\omega\ge0$ というエネルギーの正値性です。
幾何代数ではtwisted専用型を持たない
F-8では、この右手系代表の運用を幾何代数でさらに明示します。三次元ユークリッド空間で計量と右手系を選ぶと、straight $p$-formはgrade $p$、twisted $p$-formは擬スカラー $I$ による双対を通したgrade $3-p$のmultivectorとして、同じ代数の中に保持できます。
したがって領域内ではtwisted用の別データ型を持つ必要がありません。ただし向きの情報は消えず、単位擬スカラー
に残ります。回転では $\det(Q)=+1$、鏡映やKelvin変換では $\det(Q)=-1$ です。負号は領域を結ぶ写像で一度だけ入れ、材料定数を負にしたり、左手系の座標軸を描いたりしません。F-8の3D比較では、同じ右手系の中で $Q(BI^{-1})$ と $B'I^{-1}$ を並べ、鏡映時だけ両者が反対向きになることを操作できます。
学部電磁気学からの橋渡し
| 学部で見た量・法則 | 二編での読み替え | 対応する回 |
|---|---|---|
| 線積分・アンペールの法則 | 1-formを経路へ引き戻して積分する | F-1・F-2 |
| 曲面の曲率と閉曲線 | 接ベクトルの平行移動を追い、ホロノミーを曲率2-formの面積分として読む | F-2 |
| 電界と電束、磁界と磁束 | Hodge starで1-formと2-formを結ぶ | F-3 |
| 表面電流とベクトルポテンシャル | 流れ関数の等値線を巻線へ変換する | F-4 |
| Hodograph座標・厳密解・可逆性 | 場の座標を使い分け、非線形方程式を既知係数の連続問題へ写す | F-5 |
| 3次元磁束線 | 2つのClebsch等値面の交線として磁束線を表す | F-6 |
| 開境界・外場 | Pullback/Kelvin変換で有限エネルギーの反作用場と材料を有限領域へ写す | F-7 |
| 内積・外積・軸性ベクトル・向き | 幾何積を分解し、twisted専用型を擬スカラー $I$ のparityへ集約する | F-8 |
| 有限要素法の基礎 | 要素補間、組立て、境界条件、辺要素を動かす | G-1 |
| 磁気ベクトルポテンシャル・逆Hodograph | 弱形式、Q1最小二乗、組立て、零空間、非線形FEMによる独立検証を診断する | G-2 |
| 材料則・有限要素法 | Whitney形式と離散Hodgeで位相と材料を分離する | G-3 |
| ローレンツ力・Maxwell応力・磁気コエネルギー | 体積力、閉曲面の面力、エネルギー微分を同じ合力へ結び付ける | F応用 |
| 電磁力の節点力 | 仮想変位を形状関数で離散化し、要素節点力と全体の合力を照合する | G-4 |
| 磁性体の局所変形と仮想仕事 | 1-formと2-formの変換則から仮想仕事を導き、FEMの節点力へ組み立てる | G-5 |
| 穴を回る磁界と多価ポテンシャル | cohomology、切断面、tree-cotreeゲージで大域循環を離散化する | G-6 |
| 有限要素解の保証付き評価 | curl側とdiv側の許容場を相補させ、磁気抵抗の上下界で解を挟む | G-7 |
| 高次階層基底と適応解析 | NGSolveの基底を確認し、局所指標からh細分・p次数上昇を選ぶ | G-8 |
| 開境界と外部領域の縮約 | Dirichlet traceをNeumann traceへ写すDtN作用素をFEM弱形式へ組み込む | G-9 |
第9章 F編の全8回
連続な場を、座標・計量・微分形式・変換・変形の観点から読みます。弱形式、離散Hodge、有限要素行列、DtN行列など、メッシュへ離散化して計算する内容はG編へ分けています。
F編の重要応用:電磁力
削除済みの旧資料名とは切り離し、電磁力の教材本体を公開文献に基づく独立したページとして維持します。前半のローレンツ力、Maxwell応力、磁気コエネルギーは連続な電磁場から合力を得るF編の応用です。同じページの後半で、仮想変位と形状関数による節点力へ進むところからG-4へ接続します。
全39章を一周する:微分幾何・微分形式の学習ガイド
Needham『ビジュアル微分幾何・微分形式』の章順を道しるべに、既存のF編教材へつなぐ独自の一周版です。第1~17章の詳細解説に加え、第18~39章にも要点・中心式・確認課題を用意しました。原典全節の解説、全演習の解答、全図の再現を完了したという意味ではありません。問題と解答は本サイト独自のもので、原典の演習の転載ではありません。
まず各章の要点を読み、式の入力と出力を確認し、問題を解いてから解答を開いてください。「既存教材へ」は関連する図・説明への入口であり、その章全体をそのCanvasが計算するという意味ではありません。第30章は独立補講です。F編の連続理論と、G編の離散化・有限要素実装は分けています。
第III幕:8章 · 9章 · 10章 · 11章 · 12章 · 13章 · 14章 · 15章 · 16章 · 17章 · 18章 · 19章 · 20章
第IV幕:21章 · 22章 · 23章 · 24章 · 25章 · 26章 · 27章 · 28章 · 29章 · 30章 · 31章
第V幕:32章 · 33章 · 34章 · 35章 · 36章 · 37章 · 38章 · 39章
第1章 ユークリッド幾何学と非ユークリッド幾何学
曲面上の「直線」は測地線です。三角形の角度和は空間への見え方ではなく曲面の計量で決まります。単位球面の三つの直角をもつ三角形を出発点にします。
確認課題: 単位球面上の三直角三角形の面積は?
手がかり
角度はラジアンへ直します。
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角超過はπ/2、K=1なので面積はπ/2です。
第2章 ガウス曲率
小さな測地円の周長を平面の円と比較します。正曲率では周長が小さく、負曲率では大きくなります。これは小半径の漸近式であり、大きな円への厳密式ではありません。
確認課題: 正曲率の点で、2πr−C(r)の最初の次数は?
手がかり
括弧の外にrがあります。
解答を開く
r³です。半径を半分にすると先頭項は1/8になります。
第3章 第I幕の練習問題:内在と外在
独自の確認課題です。紙を伸ばさず円筒へ曲げると法線は変わりますが、紙の上の計量は変わりません。境界や継ぎ目をまたがない局所領域で比較します。
確認課題: 円筒の周方向は曲がっているのに、なぜK=0?
手がかり
二つの主方向を調べます。
解答を開く
軸方向の主曲率が0で、二主曲率の積が0だからです。
第4章 計量:曲面の写像
座標の数値差と実際の距離は同じではありません。計量は接ベクトル二つを入力して内積を返し、長さ・角度・面積を定めます。平面極座標は曲がった座標でも平坦です。
確認課題: r=2でdθ=0.1、dr=0の微小長さは?
手がかり
角度に半径を掛けます。
解答を開く
0.2です。座標成分だけのEuclidノルム0.1ではありません。
第5章 擬球面と双曲平面
負の一定曲率をもつ局所幾何を扱います。上半平面モデルではy>0で計量を定義し、境界y=0を内部点として扱いません。擬球面の一枚の図が完全な双曲平面全体を覆うわけではありません。
確認課題: 同じ微小dxをy=1とy=2で比較すると長さは?
手がかり
dy=0として計量を読みます。
解答を開く
y=2で半分です。座標図上の長さと内在的な長さを区別します。
第6章 等長変換と複素数
等角写像は角度を保ちますが、長さまで保つとは限りません。Möbius写像は分母が零でない領域で扱い、球面へ拡張するなら無限遠点も明示します。
確認課題: w=2zは等角か、Euclid等長か?
手がかり
長さ倍率と角度を別々に見ます。
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等角ですが長さが2倍になるため等長ではありません。
第7章 第II幕の練習問題:写像を検査する
独自課題として、一つの写像に対して長さ保存と角度保存を別々に判定します。計量を引き戻して比較することが、画像の見た目より強い検査になります。
確認課題: 等長写像なら面積要素の大きさも保つ?
手がかり
計量の行列式を考えます。
解答を開く
保ちます。ただし向きを逆転する写像では向き付き面積形式の符号は反転します。
第8章 平面曲線の曲率
接線角の変化を弧長で割るのが符号付き曲率です。右折を負として数える規約と、常に非負の曲率の大きさを区別します。
確認課題: 半径2の円を正向きに一周した全曲率は?
手がかり
曲率1/2と長さ4πを掛けます。
解答を開く
2πです。半径を変えても同じです。
第9章 3次元空間の曲線
接線T、主法線N、従法線Bを動かして曲率と捩率を分けます。通常のFrenet標構は曲率が零でない区間で定義します。平面の左法線とは定義が異なります。
確認課題: 平面円の捩率は?
手がかり
従法線が変わるかを考えます。
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0です。円の曲率自体は正です。
第10章 曲面の主曲率
主方向は形作用素の固有方向です。単位接方向の法曲率は二主曲率の重み付き平均になり、任意方向の曲がり方を二つの値から復元できます。
確認課題: k1=2、k2=−1のとき、45度方向の法曲率は?
手がかり
二つの重みが1/2です。
解答を開く
1/2です。Gauss曲率は−2なので、法曲率とは異なります。
第11章 測地線と測地的曲率
曲線の加速度を曲面内と法線方向へ分けます。測地線は曲面内の曲がりが零であって、外から見た曲率が零とは限りません。
確認課題: 球面の大円は空間内で直線か?
手がかり
内在的条件と外在的条件を区別します。
解答を開く
直線ではありませんが、単位速度での加速度は曲面法線方向なので測地線です。
第12章 曲面の外在的曲率
Gauss写像は曲面の法線方向を単位球面へ移します。像の面積倍率には向きが含まれ、鞍点での負号を単なる負の面積と解釈しません。
確認課題: 鞍面では球面像の向きはどうなる?
手がかり
Kの符号を見ます。
解答を開く
K<0なので局所的に反転します。
第13章 ガウスの驚異の定理
Gauss曲率は埋め込み方によらず計量から決まります。これは平均曲率や個々の主曲率まで内在的という意味ではありません。
確認課題: 紙を円筒へ等長に曲げると平均曲率も必ず同じ?
手がかり
保存されるのは主曲率の積です。
解答を開く
いいえ。平面と円筒では平均曲率は異なりますがKはともに0です。
第14章 鋭い突起の曲率
多面体の面内は平坦でも、頂点に曲率が集中します。頂点周囲の面角の合計と2πの差を測り、負の角度欠損も許します。
確認課題: 頂点を囲む角度和が5π/2なら欠損は?
手がかり
2πから引きます。
解答を開く
−π/2です。鞍型の集中曲率に対応します。
第15章 形作用素
本教材はS=−dnの規約を使います。自己随伴性は計量についての性質です。非直交基底の成分行列が通常の意味で対称でないことだけでは、矛盾になりません。
確認課題: 直交基底でのtraceとdeterminantは基底回転で変わる?
手がかり
同じ線形作用素の表示を変えています。
解答を開く
変わりません。平均曲率の2倍とGauss曲率です。
第16章 大域的Gauss–Bonnetの定理入門
滑らかで連結、コンパクト、境界なし、向き付け可能な曲面を対象とします。取っ手の数gは、表面に切り抜いた穴の数ではありません。
確認課題: 種数2の全曲率は?
手がかり
1−gに代入します。
解答を開く
−4πです。局所の曲率が全点で負であるという主張ではありません。
第17章 発見的証明:回転数から写像の次数へ
17.1~17.3の平面曲線から17.4の洋梨状閉曲面へ進みます。球面上の帯を正・負・正に覆う三領域の寄与は、一回分の帯の面積に戻ります。17.5では同じ位相の正則な曲面族に沿う法線写像の次数不変性を考えます。変形の存在まで絵だけで証明したとはしません。
確認課題: 三領域が同じ球面像をもてば、元の面積も等しい?
手がかり
写像の倍率がKです。
解答を開く
いいえ。等しくなるのは、この例の符号を考慮した曲率積分の大きさです。
第18章 余剰角度による証明
閉曲面を十分細かい測地三角形で分割します。全頂点の角の和は2πV、各三角形の角超過は内部の曲率積分です。境界なしでは3F=2Eなので、全曲率は2πV−πF=2π(V−E+F)になります。分割の辺は計算の都合であり、曲面の物理的な折れ目ではありません。
確認課題: 球面の四面体型分割でV=4、E=6、F=4なら?
手がかり
Euler標数を先に計算します。
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χ=2、全曲率4πです。滑らかな測地三角形の角超過と、平面三角形を貼った多面体の頂点欠損は別の局所量ですが、総和が対応します。
第19章 ベクトル場による証明
孤立零点の周囲の小円でベクトルの方向が何回転するかを指数として数えます。連続な接ベクトル場をもつコンパクトな境界なし曲面では、孤立零点の指数和がEuler標数です。曲面上の零点を除いて標構を作り、その境界の回転を曲率積分へ結ぶとGauss–Bonnetへ到達します。
確認課題: 球面上に指数+1の零点が二つある場合、指数和は?
手がかり
両方を足します。
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2でχ(S²)に一致します。平面の鞍点(x,−y)の指数は−1。線場の半整数指数と通常のベクトル場の整数指数は区別します。
第20章 第III幕の練習問題:三つの全曲率計算
独自課題として、Gauss写像の次数、Euler標数、零点の指数和を同じ閉曲面で照合します。各公式の仮定が共通かを先に確認してください。
確認課題: トーラスで全曲率0なのは、全点のKが0だから?
手がかり
内側と外側を分けます。
解答を開く
違います。通常の回転トーラスでは正の寄与4πと負の寄与−4πが相殺します。
第21章 歴史上の謎:ベクトルをどう比較するか
原典の歴史的導入を、学習上の問いに置き換えます。異なる点の接ベクトルは別の接空間に属します。両者を比較するには移動の規則が必要で、座標成分を同じにするだけでは座標に依存してしまいます。
確認課題: 曲線座標の成分が同じなら、平行移動したことになる?
手がかり
基底自身も位置で変化します。
解答を開く
一般にはなりません。接続が基底の変化を補正します。
第22章 外在的構成法:射影して運ぶ
曲面に沿ってベクトルを動かし、その変化の接平面成分を零にするのがLevi–Civita平行移動です。外在的な射影から構成できますが、結果は誘導計量に対応します。有限幅で一度だけ射影すると長さは減り得るので、微小ステップの極限と区別します。
確認課題: 平行移動でベクトルの長さは保たれる?
手がかり
長さの二乗を微分します。
解答を開く
はい。計量適合性より微分は2〈∇V,V〉=0です。
第23章 内在的構成法:共変微分
接続を使えば、周囲の三次元空間を参照せずに平行移動を定義できます。座標成分の通常微分へ、基底変化を補う項を加えます。Levi–Civita接続は計量適合かつ捩れなしです。
確認課題: 平面極座標でChristoffel記号が非零なら、平面は曲がっている?
手がかり
接続係数と曲率を区別します。
解答を開く
曲がっていません。座標基底の変化により係数は非零でも、Riemann曲率は零です。
第24章 ホロノミー
同じ出発点へ戻っても、平行移動したベクトルは元の向きに戻るとは限りません。向き付けた小領域での回転を曲率積分と対応させます。実数として追った回転角と、最終ベクトルから分かる2πを法とした角を区別します。
確認課題: 単位球面で面積π/2の領域を正向きに回る角は?
手がかり
K=1です。
解答を開く
規約をそろえるとπ/2です。向きを逆にすると符号も逆になります。
第25章 平行移動から驚異の定理へ
小閉路のホロノミーを面積で割る極限でKを測ります。長さ・角度・平行移動が計量で決まるため、この曲率は外への曲げ方に依存しません。極限には小さな領域と連続な角度の枝を選びます。
確認課題: 円筒の小閉路で、非零の主曲率だけからホロノミー非零と言える?
手がかり
Kは二主曲率の積です。
解答を開く
言えません。局所K=0なので、円板状の小領域を囲むホロノミーは0です。
第26章 ホロノミーによるGauss–Bonnet
領域ごとの回転を貼り合わせると内部境界の寄与が相殺されます。境界では接線の曲がりと角での跳びを忘れずに加えます。閉曲面全体に一枚の非特異な標構を仮定することはできません。
確認課題: 平面の正方形ではどの項が2πを担う?
手がかり
面内と直線辺上の曲率は0です。
解答を開く
四つの外角π/2の和です。
第27章 計量曲率公式
計量から接続を求め、接続から曲率を求めます。共形座標の計量e^(2u)(dx²+dy²)では、平面Laplacianで簡潔に表せます。ここでuは共形倍率の対数です。
確認課題: uが定数ならKは?
手がかり
二階微分を計算します。
解答を開く
0です。定数倍のEuclid計量は長さ尺度を変えますが曲率を生みません。
第28章 近接する測地線とJacobi方程式
測地線族の偏差を $\vec J$ とします。曲面内で測地線に直交する方向の微小偏差成分 $j$ は $j''+Kj=0$ を満たします。曲率は測地線の集束・発散に関係しますが、磁力線の方程式へそのまま代入はできません。
確認課題: K=1、j(0)=0、j′(0)=1ならj(s)は?
手がかり
正弦関数を代入します。
解答を開く
sin sです。K=0ならs、K=−1ならsinh sです。
第29章 リーマン曲率
共変微分を異なる順序で行った差が曲率作用素です。Lie括弧の補正により座標に依存しないテンソルになります。符号規約はここに示す定義に固定します。
確認課題: 接続係数が一点で零なら、その点の曲率も零?
手がかり
曲率には接続係数の微分も入ります。
解答を開く
一般には違います。正規座標で接続係数を一点で零にできても曲率は残ります。
第30章 補講:アインシュタインの曲がった時空
電磁気本編から独立した導入です。正定値の空間計量から、時間方向と空間方向で符号が異なるLorentz計量へ移ります。自由落下は時空の測地線、潮汐は測地線偏差で捉えます。真空でRicci曲率が零でもRiemann曲率全体は零とは限りません。
確認課題: 平坦時空の光線がx方向へ進むとき、ds²=0から何が分かる?
手がかり
dy=dz=0と置きます。
解答を開く
|dx/dt|=cです。この式は平坦時空のものです。ブラックホールや宇宙論の解まで計算した教材ではありません。
第31章 第IV幕の練習問題:運搬と曲率
独自課題です。ベクトルの長さが保存されることと、閉路後の方向が保存されることを分けます。次に、非零の接続係数・非零の曲率・非零のホロノミーを同じものと見なさないでください。
確認課題: 球面を一周して向きが変わったら、平行移動に失敗した?
手がかり
長さと閉路の回転を別々に確認します。
解答を開く
失敗とは限りません。長さを保ったまま曲率によるホロノミーが生じます。
第32章 1形式
1形式は各点の接ベクトルを入力として数を返す線形写像です。dfは方向微分をまとめた1形式で、勾配ベクトルに変換するには計量が必要です。電圧積分では電界1形式が経路の接ベクトルを測ります。
確認課題: α=2dx−dy、V=(3,4)ならα(V)は?
手がかり
成分を線形に評価します。
解答を開く
2です。1形式とベクトルの自然な評価には、別途内積を導入する必要はありません。
第33章 テンソル
型(r,s)は反変r個・共変s個の添字をもつ多重線形な量です。配列だけが定義ではなく、基底変換に対する変換則が重要です。縮約は上と下の添字を組にします。
確認課題: g=diag(1,4)、Vの反変成分が(1,1)なら共変成分は?
手がかり
計量行列を掛けます。
解答を開く
(1,4)です。成分を同じまま上下の添字だけ付け替えてはいけません。
第34章 2形式
二つの接ベクトルから向き付き面積に対応する数を得ます。交換すると符号が反転し、同じベクトルを二つ入れると0になります。流束2形式とベクトルの対応には向き・体積形式などの選択が入ります。
確認課題: dx∧dyをu=(1,2)、v=(3,4)に作用させると?
手がかり
2×2行列式です。
解答を開く
−2です。uとvを交換すると+2になります。
第35章 3形式
三つの独立な方向から向き付き体積を測ります。三次元では4形式は恒等的に零ですが、四次元では零とは限りません。微分形式の次数と空間の次元を常に区別します。
確認課題: 球座標でdr∧dθ∧dφだけを体積として積分してよい?
手がかり
Jacobianを考えます。
解答を開く
通常のEuclid体積にはr²sinθが必要です。座標の特異点と空間自体の特異点も区別します。
第36章 外微分
外微分dは形式の次数を一つ上げ、計量なしで定義できます。Hodge starは計量に依存する別の演算です。Maxwell方程式の保存則側と、材料・計量を含む構成則側を分けてください。
確認課題: α=x dyならdαとd²αは?
手がかり
dxとdyの反対称性を使います。
解答を開く
dα=dx∧dy、d²α=0です。pはαの形式次数です。
第37章 積分・一般化Stokes・cohomology
向き付けた領域と誘導された境界の向きをそろえて積分します。局所的な閉形式は星状領域で完全ですが、穴のある領域での周期は大域的なポテンシャルの障害になります。閉と完全を同一視しません。
確認課題: 原点を除く平面のdθは閉形式なのに、なぜ完全でない?
手がかり
単位円での積分を調べます。
解答を開く
周期が2πだからです。大域的な一価関数fのdfなら閉路積分は0になります。
第38章 微分形式による微分幾何学
動く直交標構と双対1形式θ、接続1形式ω、曲率2形式Ωを統合します。Levi–Civita接続での第一式は捩れなしを表し、第二式が曲率を定めます。Gauss・Codazziの適合条件、計量からの曲率計算へ進む入口です。
確認課題: 接続1形式が標構変更で変わったら、曲率の物理的内容も変わる?
手がかり
成分表示と幾何学的な量を区別します。
解答を開く
変わりません。曲率は適切な変換則で表されます。球面剛性や38.13のブラックホール曲率の詳細導出は、この一周版では未展開です。
第39章 第V幕の練習問題:型・向き・保存則の総合
独自の到達確認です。単位正方形Sをdx∧dyの向きに取り、α=x dyを考えます。形式の次数、外微分、境界の向き、積分値を一続きで説明してください。最後に、同じ手順をF-3の三角形・四面体の操作へ移します。
確認課題: Sの面積積分と反時計回りの境界積分はいくつ?向きを反転したら?
手がかり
境界では右辺だけが寄与します。
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両方1、向きを反転すると両方−1です。計算値だけでなく、1形式を境界線へ、2形式を面へ積分したことを説明できれば、この一周の到達点です。