3Dで学ぶ電磁気学

F-2 曲線への引き戻し

線積分では、空間に定義された1-formを、積分経路を表す1変数の区間へ移します。この操作が引き戻しです。曲線上を動く点、接ベクトル、1-formが接ベクトルを測る値を同時に表示します。

まず30秒でつかむ

式を読む順番

1. 経路 $\vec\gamma(t)$ を決めると、その微分 $\vec\gamma'(t)$ が進行方向を与えます。

2. 1-form $\omega$ は、その進行方向を入れた値 $\omega(\vec\gamma'(t))$ だけを読みます。

3. Pullback $\vec\gamma^{\,*}\omega$ は、この値に $dt$ を付け、曲線上の問題を媒介変数軸上の積分へ移します。

4. 可視化では、空間の矢印全部ではなく、接線方向へ射影された成分が仕事へ寄与することを確認します。

この回の到達点

1. 写像 $\vec{\gamma}:I\to\mathbb{R}^3$ による1-formの引き戻しを計算できる。

2. 線積分が曲線の接方向成分だけを読むことを説明できる。

3. フレネ標構 $(\vec{T},\vec{N},\vec{B})$ と曲率・捩率を粒子軌道へ結び付けられる。

4. 円筒の外在的曲率が非零でも、内在的なGauss曲率が零になる理由を計量から説明できる。

5. 曲面の計量が、曲面FEMの局所剛性行列へどう入るかを説明できる。

6. 滑らかな境界と角をもつ境界で、Gauss--Bonnetの面・辺・頂点項がどう分担するか説明できる。

7. 球面上の平行移動を追い、一周後のホロノミーを曲率2-formの面積分として読める。

8. 接続1形式のゲージ依存性と、曲率2形式・閉路ホロノミーのゲージ不変性を区別できる。

9. Jacobi方程式を正・零・負曲率で解き、Riemann曲率、測地線偏差、磁力線、波動伝搬の役割を区別できる。

修士課程の電磁気学演習

局所係数が変わっても、起電力は同じと言えるか

電磁気の問い: 同じ閉曲線 $C$ を異なる速さでたどると、引き戻した電界1-formの係数は変わる。それでも $\oint_C\mathcal E$ が同じ測定値になる理由を説明できるか。

観察ポイント: 再媒介化指数 $p$ を大きくして標本点を片側へ集めたとき、局所被積分関数、区間ごとの寄与、終点の線積分のうち何が変わるかを分けて答える。

操作と観測: 可視化F-2-5で $p$ と分割数 $N$ を変え、空間上の標本点、引き戻し係数、累積積分、終点誤差を対応させる。

判定基準と微分幾何による説明

向きを保つ再媒介化 $\varphi$ に対して $\int_I(\gamma\circ\varphi)^*\mathcal E=\int_I\varphi^*(\gamma^*\mathcal E)=\int_C\mathcal E$ である。係数と標本密度は変わるが、1-formと微小区間を合わせた積分は変わらない。

診断: $p$ を変えて極限積分値まで変わるなら、$d\varphi/dt$ を落としているか、経路の向きを誤っている。$N$ を増やしても収束しない場合は、端点近傍の非滑らかさと求積則を確認する。

研究へ: 電圧、起磁力、磁気ベクトルポテンシャルの辺自由度を、座標成分ではなく経路上の積分値として扱う理由を第7・8回の辺要素へ接続する。

可視化 F-2-1 1-formを曲線へ移す

曲線 $\vec{\gamma}:I\to\mathbb{R}^3$ と1-form $\omega$ に対して、引き戻しは

\[ (\vec{\gamma}^{\,*}\omega)_t(\partial_t) =\omega_{\vec{\gamma}(t)}\!\left(\dfrac{d\vec{\gamma}}{dt}\right) \]

で定義されます。今回のらせんを

\[ \vec{\gamma}(t) =(a\cos t,a\sin t,h(t-\pi)),\qquad 0\le t\le2\pi \]

とし、

\[ \omega=\dfrac{-y\,dx+x\,dy}{a^2} \]

を選ぶと、

\[ \vec{\gamma}^{\,*}\omega=dt,\qquad \int_{\vec{\gamma}}\omega=\int_0^{2\pi}dt=2\pi \]

となる理由を成分で書くと、

\[ \dfrac{d\vec\gamma}{dt} =(-a\sin t,\,a\cos t,\,h), \qquad \omega\!\left(\dfrac{d\vec\gamma}{dt}\right) =\sin^2t+\cos^2t+0\cdot h=1 \]

である。$h$ はらせんの高さ方向と接ベクトルの $z$ 成分を変えるが、今回の $\omega$ には $dz$ 成分がないため、その変化を測らない。

となります。

らせん上で1-formを評価する

まず、$dz$ 成分を持たない1-formが高さ方向の変化を測るか図を動かして確かめてください。 操作すると、$x,y,z$ の三成分と1-formの測定値を比較します。

初期状態では $h=0.25$ のらせんだけを見る。操作後は灰色の基準を残して $h=0.65$ を青で重ね、青い全接ベクトル、水色の $xy$ 成分、紫の高さ成分、金色の $\omega^{\sharp}$ を読む。$t$ を動かすと $\sin^2t$ と $\cos^2t$ の分担は変わるが、和は1のままである。

曲線が運ぶ座標系:フレネ・セレ標構

引き戻しをもう一歩深く読むために、曲線自身が運ぶ正規直交座標系を用意します。弧長 $s$($|d\vec{\gamma}/ds|=1$ となる測り方)で曲線をパラメータ表示し直すと、曲率 $\kappa\ne0$ の区間にフレネ・セレ標構 $(\vec{T},\vec{N},\vec{B})$ を定義できます。直線部や変曲点では $\vec N$ がこの定義からは定まらないため、必要ならBishop標構などを使います。

\[ \vec{T}=\dfrac{d\vec{\gamma}}{ds},\qquad \vec{N}=\dfrac{1}{\kappa}\dfrac{d\vec{T}}{ds},\qquad \vec{B}=\vec{T}\times\vec{N} \]

$\vec{T}$ は単位接ベクトル、$\vec{N}$ は曲がる向き(主法線)、$\vec{B}$ は両者に垂直な従法線です。標構の変化はフレネ・セレの公式にまとまります。

\[ \dfrac{d}{ds} \begin{pmatrix}\vec{T}\\[2pt]\vec{N}\\[2pt]\vec{B}\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}0&\kappa&0\\[2pt]-\kappa&0&\tau\\[2pt]0&-\tau&0\end{pmatrix} \begin{pmatrix}\vec{T}\\[2pt]\vec{N}\\[2pt]\vec{B}\end{pmatrix} \]

$\kappa$ が曲率(曲がりの強さ。接触円の半径 $\rho$ の逆数 $\kappa=1/\rho$)、$\tau$ が捩率(曲線が平面から浮き上がる速さ)です。係数行列が歪対称であることは、標構が伸び縮みせず回転だけすることを意味します。その回転の角速度ベクトルがDarbouxベクトル $\vec{\omega}_D$ です。

\[ \dfrac{d\vec{T}}{ds}=\vec{\omega}_D\times\vec{T},\qquad \dfrac{d\vec{N}}{ds}=\vec{\omega}_D\times\vec{N},\qquad \dfrac{d\vec{B}}{ds}=\vec{\omega}_D\times\vec{B},\qquad \vec{\omega}_D=\tau\vec{T}+\kappa\vec{B} \]

上で使ったらせん $\vec{\gamma}(t)=(a\cos t,\,a\sin t,\,h(t-\pi))$ は、$\kappa$ と $\tau$ が一定の曲線です。

\[ \kappa=\dfrac{a}{a^2+h^2},\qquad \tau=\dfrac{h}{a^2+h^2} \]

$h=0$ とすれば円($\kappa=1/a$、$\tau=0$、$\vec{B}$ は一定方向)に戻ります。逆に「$\kappa,\tau$ が一定の曲線はらせんに限る」ことも知られており、$\kappa,\tau$ は曲線を剛体運動を除いて決める形状不変量です。「材料定数」ではなく、曲線そのものの曲がり方と捩れ方を表す量です。

このページでは、フレネ標構の副法線と電磁気の磁束密度がどちらも慣習的に $\vec B$ と書かれます。混同を避けるため、可視化F-2-2では副法線を $\vec B_{\mathrm F}$ と表示します。後の磁気剛性の節で使う $\vec B$ は磁束密度です。

引き戻しはフレネ標構のT成分だけを読む

計量でベクトル $\vec{F}$ を1-formに対応させる操作を $\flat$(フラット)、その逆を $\sharp$(シャープ)と書きます。フレネ標構の3本を1-formにした $\vec{T}^{\flat},\vec{N}^{\flat},\vec{B}^{\flat}$ を曲線に引き戻すと、きれいに役割が分かれます。

\[ \vec{\gamma}^{\,*}(\vec{T}^{\flat})=ds,\qquad \vec{\gamma}^{\,*}(\vec{N}^{\flat})=0,\qquad \vec{\gamma}^{\,*}(\vec{B}^{\flat})=0 \]

接ベクトルは $\vec{T}$ 方向なので、$\vec{N}^{\flat}$ と $\vec{B}^{\flat}$ は接ベクトルを測るとゼロになるからです。したがって任意の1-form $\omega$ を、対応するベクトル $\vec{F}=\omega^{\sharp}$ のフレネ分解 $\vec{F}=F_T\vec{T}+F_N\vec{N}+F_B\vec{B}$ で書くと、引き戻しに生き残るのは1成分だけです。

\[ \vec{\gamma}^{\,*}\omega=(\vec{F}\cdot\vec{T})\,ds=F_T\,ds \]

引き戻しとは「フレネ標構のT成分だけを読み出すフィルタ」です。電界の仕事 $\int_{\vec{\gamma}}\mathcal{E}=\int E_T\,ds$ では、$\vec{N},\vec{B}$ 成分の電界は線積分に一切寄与しません。F-1の言葉と合わせると、「長さ $ds$ をどう測るか」は計量が、「どの成分を読むか」はフレネ標構が担当している、と整理できます。

電磁気に現れるフレネ標構:粒子ビームとBρ

フレネ標構が電磁気で最も活躍するのは、磁場中の荷電粒子の軌道です。磁気力は速度に垂直なので、速さ(運動量の大きさ $p$)を変えずに向きだけを変えます。運動量 $\vec{p}=p\vec{T}$ を運動方程式に入れ、$d\vec{T}/dt=v\,d\vec{T}/ds=v\kappa\vec{N}$ を使うと

\[ \dfrac{d\vec{p}}{dt}=q\vec{v}\times\vec{B} \qquad\Longrightarrow\qquad p\,v\,\kappa\,\vec{N}=q\,v\,\vec{T}\times\vec{B} \]

となります。左辺は $\vec{N}$ 方向です。磁気力だけで運動する区間では、主法線の向きは $q\vec T\times\vec B$ の向きとして決まります。磁場の軌道に垂直な成分の大きさを $B_\perp$ とすれば、大きさの関係は

\[ \kappa=\dfrac{1}{\rho}=\dfrac{|q|B_\perp}{p} \qquad\Longleftrightarrow\qquad B_\perp\rho=\dfrac{p}{|q|} \]

これが加速器設計の第一式、磁気剛性の大きさ $B\rho=p/|q|$ です(学部編第6回の円運動の別の顔)。符号付きの曲率や偏向方向は電荷 $q$ の符号と磁場の向きで別に管理します。偏向電磁石の設計とは「望む曲率を作る垂直磁場成分 $B_\perp$ を用意する」ことにほかなりません。一様磁場中で磁場に平行な速度成分が残っていれば軌道はらせんになり、捩率 $\tau$ が現れます。さらに「磁気力が仕事をしない」という事実も、引き戻しの言葉で1行になります。力のT成分がゼロなので、仕事の1-formを軌道へ引き戻した値もゼロです。

\[ \vec{\gamma}^{\,*}\!\left((q\vec{v}\times\vec{B})^{\flat}\right) =q\,(\vec{v}\times\vec{B})\cdot\vec{T}\,ds=0 \]

もうひとつの登場場面はビオ・サバールの法則(学部編第7回)です。電流経路の線素 $d\vec{\ell}'=\vec{T}\,ds$ は単位接ベクトルそのもので、G-3で扱うリッツ線の素線方向の場 $\vec{t}(\vec{x})$ は、らせん(一定の $\kappa,\tau$)の族が作るフレネの $\vec{T}$ の場です。

可視化 F-2-2 フレネ標構と接触円

$a=1$ の円 $h=0$ から、ピッチ $h=0.60$ のらせんへ変えます。ピッチが高くなることと、局所的に強く曲がることは同じではありません。$\kappa$、$\tau$、$\rho=1/\kappa$、引き戻し係数 $\vec F\cdot\vec T\,|\vec\gamma'|$ の変化をまず図を動かして確かめてください。

h=0.00, κ=1.00, τ=0.00, ρ=1.00, F・T|γ′|=1.00

青が $\vec{T}$、赤が $\vec{N}$、緑の $\vec B_{\mathrm F}$ がフレネ副法線、橙の円が接触円(半径 $\rho=1/\kappa$)です。緑はこの図では磁束密度ではありません。位置 $t$ を動かすと標構が曲線に乗って回転します。この図の範囲 $0\le h<a=1$ では、$h$ とともに $\kappa=1/(1+h^2)$ は減少し、$\tau=h/(1+h^2)$ は増加します。一般には $\tau$ は $h=a$ で最大となり、それより大きい $h$ では減少します。$h=0$ の円では $\vec B_{\mathrm F}$ は固定です。金色の矢印は可視化2-1と同じ $\omega^{\sharp}$ で、その $\vec{T}$ への射影(灰色の線)だけが引き戻しに寄与します。読み出し値 $F\cdot T\,|\gamma'|$ が $h$ によらず常に $1.00$ のままであることが、$\int_{\vec{\gamma}}\omega=2\pi$ が円でもらせんでも変わらない理由です。

保存則・検算と次への接続

向きを保つ媒介変数変換 $t=\varphi(s)$ に対して $\widetilde\gamma=\gamma\circ\varphi$ とすると、引き戻しの合成則から

\[ \widetilde\gamma^{*}\omega =\varphi^{*}(\gamma^{*}\omega), \qquad \int_{\widetilde\gamma}\omega =\int_{\gamma}\omega \]

です。電位 $V$ から作る完全1-form $dV$ なら、経路の形にも依存せず

\[ \int_{\gamma}dV =V\!\left(\gamma(1)\right)-V\!\left(\gamma(0)\right), \qquad \oint_C dV=0 \]

となります。数値積分では、同じ曲線を異なる分割・速度でたどって同じ値になるかを確認すると、接線と区間長の扱いを検算できます。F-1の尺度因子はこの接線長へ入り、次のF-3では1-formを面に対応する2-formへ写すHodge starへ進みます。

可視化 F-2-3 曲面への2-formの引き戻し

曲面写像

\[ \vec g(u,v)=\left(u,\ v,\ a\sin u\cos v\right) \]

へ磁束2-formを引き戻すと、曲面上の積分は媒介変数平面上の積分へ変わります。

\[ g^*(\vec B\cdot d\vec S) = \vec B(\vec g(u,v))\cdot \left(\vec g_u\times\vec g_v\right)\,du\wedge dv \]

振幅 $a$ を動かすと曲面の面積は増えますが、向き付き面要素は常に二本の接ベクトルの外積で決まります。

可視化 F-2-4 半径を変えても残る線積分

原点を除く平面で1-form

\[ \omega=\dfrac{-y\,dx+x\,dy}{x^2+y^2} \]

を考えます。原点を $n$ 回まわる曲線 $\gamma(t)=R(\cos 2\pi nt,\sin 2\pi nt)$ へ引き戻すと

\[ \gamma^*\omega=2\pi n\,dt, \qquad \oint_\gamma\omega=2\pi n \]

となり、積分値は半径 $R$ ではなく巻き数 $n$ で決まります。半径と巻き数を別々に動かし、左の曲線の大きさと右の累積積分を見比べてください。

可視化 F-2-5 修士演習:再媒介化と数値積分を同時に検算する

最初のイメージ。 同じ円形トラックを、前半はゆっくり、後半は速く歩く場面を考えます。一定時間ごとに写真を撮れば、写真の点は遅い場所へ密集します。しかし一周の道筋も、道に沿って測った総量も変わりません。再媒介化では、この「点の並び方」と「その点での被積分関数」は変わりますが、両者を掛け合わせて足した線積分は同じになります。

同じ円周を $t^p$ の速さでたどると、空間内の経路は同じでも、媒介変数区間上の被積分関数は変わります。

\[ \vec\gamma_p(t)=R\{\cos(2\pi t^p),\sin(2\pi t^p)\} \]
\[ \gamma_p^*\omega =2\pi p\,t^{p-1}dt, \qquad \int_{\gamma_p}\omega =\int_0^1 2\pi p\,t^{p-1}dt =2\pi \]

指数 $p$ を変えると $2\pi p t^{p-1}$ の形と、円周上の標本点の密度は大きく変わります。これを $N$ 分割の合成中点則で積分すると、

\[ I_N(p) =\dfrac1N\sum_{j=0}^{N-1} 2\pi p\left(\dfrac{j+1/2}{N}\right)^{p-1} \longrightarrow2\pi \qquad(N\to\infty) \]

です。$p\lt1$ では $t=0$ 近傍へ、$p\gt1$ では $t=1$ 近傍へ被積分関数が偏るため、同じ $N$ でも誤差が変わります。Canvasは厳密値を表示するだけではなく、この和を毎回計算します。

動かして確かめる順序。 まず $p=1$ にして、標本点が円周上へ等間隔に並ぶことを確認します。次に $N$ を固定したまま $p=3$ を図を動かして選び、点が片側へ寄ることと、引き戻した係数が反対側で大きくなることを対応させます。そのまま $N$ を増やし、局所分布を変えずに積分誤差だけが減るかを見ます。最後に $p<1$ を試し、局所量が大きく変わっても極限値が $2\pi$ に戻る理由を、$\gamma_p^*\omega$ の式で説明してください。

左の緑点は等間隔の $t_j$ を空間へ写した点です。右上は引き戻した1-formの係数、右下は厳密な累積積分と中点則の階段です。$p$ を動かすと局所量は変わり、$N$ を増やすと終点の誤差が減ります。再媒介化不変性は、被積分関数が不変という意味ではなく、微分 $dt$ まで含めた積分が不変という意味です。

橋渡し可視化 F-2-B1 見た目が曲がっても、内在的には平らなのか

平面上の座標を $(u,v)$ とし、紙を伸び縮みさせず曲率 $\kappa$ の円筒へ曲げる写像を

\[ \vec X_\kappa(u,v) =\left( \dfrac{\sin(\kappa u)}{\kappa},\, \dfrac{1-\cos(\kappa u)}{\kappa},\, v \right), \qquad \vec X_0(u,v)=(u,0,v) \]

とします。$\kappa\to0$ で平面へ連続的に戻ります。この写像の接ベクトルは

\[ \vec X_u=(\cos\kappa u,\sin\kappa u,0), \qquad \vec X_v=(0,0,1) \]

です。したがって、計量と線素は曲げても

\[ [g_{ij}] =\begin{pmatrix} \vec X_u\!\cdot\!\vec X_u & \vec X_u\!\cdot\!\vec X_v\\ \vec X_v\!\cdot\!\vec X_u & \vec X_v\!\cdot\!\vec X_v \end{pmatrix} =\begin{pmatrix}1&0\\0&1\end{pmatrix}, \qquad d\ell^2=du^2+dv^2 \]

のままです。したがって、平面上で測った辺長と角度は、円筒へ曲げても変わりません。円筒では法線 $\vec n$ が場所ごとに回るので、3次元空間から見ると確かに曲がっています。それでもGauss曲率は計量だけで決まる内在量であり、平面と同じ

\[ K=0 \]

です。三角形 $ABC$ と格子を見ながら紙を曲げ、橙色の法線は回るのに、辺長・内角和・Gauss曲率は変わらないことを確かめてください。

動かして確かめる順序。 まず平面で三角形と法線を確認し、曲げ量を100%まで増やします。法線の間の角は増えますが、三角形の内角和は $180^\circ$、$K=0$ のままです。次に図を回し、斜辺が3次元空間ではらせん状に見えても、展開図では直線であることを読み取ります。

外在的曲率でも確かめる

法線の向きを選ぶと主曲率の符号は変わり得るため、ここでは符号によらない大きさで書きます。円筒の周方向は $|k_1|=\kappa$、軸方向は $k_2=0$ です。したがって $K=k_1k_2=0$ となり、「外在的には曲がるが内在的には平ら」という結論と一致します。主方向と形作用素は後続の曲率単元で詳しく扱います。

電磁気への橋:保たれる積分と変わる3D場

平面から円筒への等長写像を $f$ とし、平面の1-form $\omega_0$ と円筒の1-form $\omega_\kappa$ が $f^*\omega_\kappa=\omega_0$ を満たすなら、対応する曲線について $\int_{f(C)}\omega_\kappa=\int_C\omega_0$ です。一方、電流路を空間内で曲げると、源点・接線・観測点の相対配置が変わるため、Biot--Savart積分で得る3次元空間の場は一般に変わります。内在的に運ばれる量と、埋込みに依存する量を分けて読むための橋渡しです。

橋渡し可視化 F-2-C1 曲率はFEMの要素行列をどう変えるか

ここで、微分幾何とFEMの間に一本の橋を架けます。曲面 $\Gamma$ 上のもっとも単純なモデルとして、曲面Poisson方程式

\[ -\Delta_\Gamma \phi=f, \qquad \int_\Gamma \nabla_\Gamma\phi\cdot\nabla_\Gamma w\,dA =\int_\Gamma fw\,dA \]

を考えます。曲面要素を局所座標 $\boldsymbol\xi=(u,v)$ から写すJacobianを $J$、計量を $G=J^{\mathsf T}J$ とすると、局所剛性行列は

\[ \boldsymbol K_e =\int_{\hat T} (\nabla_{\!\xi}\boldsymbol N)^{\mathsf T} G^{-1} (\nabla_{\!\xi}\boldsymbol N) \sqrt{\det G}\,du\,dv \]

となります。つまりFEMが使う曲面勾配、面積、内積は、すべて計量 $G$ を通して要素行列へ入ります。ここではMaxwell方程式そのものを解かず、幾何だけが要素行列へ入る部分を切り出して観察します。

同じ $(u,v)$ メッシュを平面、円筒、球面、負曲率面へ写します。円筒は前節の等長写像なので $G=I$ のままです。一方、半径 $R$ の球面を赤道上の点の近くで

\[ \vec X_{\mathrm{sph}}(u,v) =R\left( \cos\dfrac vR\sin\dfrac uR,\, 1-\cos\dfrac vR\cos\dfrac uR,\, \sin\dfrac vR \right) \]

と表すと、

\[ G_{\mathrm{sph}} =\begin{pmatrix} \cos^2(v/R)&0\\ 0&1 \end{pmatrix}, \qquad K=\dfrac1{R^2} \]

となり、要素の中で計量が変化します。負曲率の比較には、一定曲率 $K=-1/R^2$ をもつ擬球面(tractricoid)の局所片

\[ \vec P(U,V)=R\left( \operatorname{sech}U\cos V,\, \operatorname{sech}U\sin V,\, U-\tanh U \right), \qquad U>0 \]

を使います。中心 $U_0=1.35,\ V_0=0$ で長さをそろえた局所座標

\[ U=U_0+\frac{u}{R\tanh U_0}, \qquad V=\frac{v}{R\operatorname{sech}U_0} \]

では、中心で $G=I$ ですが、要素内では

\[ G_{\mathrm{neg}}(u) =\begin{pmatrix} \dfrac{\tanh^2 U}{\tanh^2 U_0}&0\\[4pt] 0&\dfrac{\operatorname{sech}^2 U}{\operatorname{sech}^2 U_0} \end{pmatrix}, \qquad K=-\dfrac1{R^2} \]

となります。同じ $G(0)=I$ から出発しても、正曲率と負曲率では要素内の計量変化が逆向きになります。

動かして確かめる順序。 まず平面を選び、桃色の測地円の周長が $2\pi r$、中心頂点 $p$ の角度欠損が0、橙色要素の $\boldsymbol K_e$ が基準行列と一致することを確認します。次に円筒へ切り替えます。法線と3次元形状は変わりますが、計量が $I$ なので局所剛性行列は変わりません。球面では $R$ を小さくすると $2\pi r-C>0$、$\delta_p>0$ となり、正曲率が強くなるほど要素行列との差も大きくなります。最後に「負曲率」を選び、$2\pi r-C<0$、$\delta_p<0$ と符号が反転する一方、$h$ を小さくすると $\delta_p-KA$ が0へ近づくことを確かめてください。

測地半径 $r$ の円について、平面と円筒では $C(r)=2\pi r$、球面では

\[ C(r)=2\pi R\sin\dfrac rR, \qquad A(r)=2\pi R^2\left(1-\cos\dfrac rR\right) \]

です。一定負曲率 $K=-1/R^2$ の局所幾何では

\[ C(r)=2\pi R\sinh\dfrac rR>2\pi r, \qquad A(r)=2\pi R^2\left(\cosh\dfrac rR-1\right)>\pi r^2 \]

となるので、可視化が表示する円周欠損 $2\pi r-C$ と面積欠損 $\pi r^2-A$ はともに負になります。また、表示している区分線形メッシュでは、中心頂点の角度欠損

\[ \delta_p =2\pi-\sum_{T\ni p}\theta_{T,p} \approx\int_{\operatorname{star}(p)}K\,dA \]

が、頂点周辺に集まった曲率を近似します。$h$ を小さくすると、この離散近似の残差が減ります。円筒では曲面が曲がって見えても、対称な要素対の角度変化が相殺されて $\delta_p=0$ です。

擬球面は双曲平面全体なのか

いいえ。ここに表示するのは一定負曲率をもつ擬球面の局所片です。完全な双曲平面全体を、特異点なしで3次元Euclid空間へ等長埋込みしたものではありません。擬球面には境界側の限界があり、この可視化も $U>0$ の安全な局所範囲だけを使います。したがって、ここで主張しているのは局所計量、局所曲率、短い測地円、局所FEM要素の対応です。

なぜ円筒の区分線形表示には幾何近似誤差があり得るのか

Canvasの三角形は曲面を平らな面で近似して描いています。一方、読み出しの局所剛性行列は解析的な曲面写像の計量から積分しています。円筒の厳密な曲面要素では平面と同じ行列になりますが、円筒を弦で近似した一次メッシュでは小さな幾何近似誤差が入り得ます。高次曲面要素や細分化は、この差を小さくするためにも使われます。

電磁界FEMではどこへつながるか

曲面電流、薄膜、表面インピーダンス、曲面境界上のtraceを離散化するときも、接ベクトル、面積要素、Piola写像、Hodge型の質量行列に同じ $J$ と $G$ が現れます。このF-2では連続幾何と局所行列への入口だけを扱い、trial/test関数、自由度、組立て、境界条件はG-1 有限要素法の基礎で扱います。

橋渡し可視化 F-2-C2 形作用素は曲面の「曲がり方」を方向ごとに分解する

Gauss曲率 $K$ は曲面の内在的な曲がりを一つの数で表します。しかし、FEMで曲面形状や法線を扱うときには、どの接方向へ進むと法線がどれだけ回るかも必要です。その線形写像が形作用素です。

局所座標表示 $\vec X(u,v)$、単位法線 $\vec n$ に対し、第1基本形式と第2基本形式を

\[ G_{ij}=\partial_i\vec X\cdot\partial_j\vec X, \qquad b_{ij}=\vec n\cdot\partial_i\partial_j\vec X \]

とすると、ここで採用する符号規約 $S(\vec t)=-D_{\vec t}\vec n$ では

\[ S=G^{-1}b, \qquad K=\det S=k_1k_2, \qquad H=\frac12\operatorname{tr}S=\frac{k_1+k_2}{2} \]

です。$S$ の固有ベクトルが主方向、固有値 $k_1,k_2$ が主曲率です。主方向 $\vec e_1$ から角度 $\theta$ の単位接ベクトル

\[ \vec t(\theta)=\cos\theta\,\vec e_1+\sin\theta\,\vec e_2 \]

を含む法平面で曲面を切ると、その法曲率はEulerの公式

\[ k_n(\theta) =\vec t\cdot S\vec t =k_1\cos^2\theta+k_2\sin^2\theta \]

に従います。

動かして確かめる順序。 平面ではすべての方向で $k_n=0$ です。円筒では $\theta=0^\circ$ で $k_n=k_1=1/R$、$90^\circ$ で $k_n=k_2=0$ となります。球面では $k_1=k_2$ なので、切断方向を回しても赤い法切断の曲率は変わりません。鞍面では $k_1=-k_2$ となり、$\theta=45^\circ$ で $k_n=0$、その前後で符号が反転します。半透明の紫面が法切断面、赤線が切断曲線、桃色の破線が中心で同じ曲率をもつ接触円、橙矢印が $S\vec t$ です。

平面と円筒はどちらも $K=0$ ですが、円筒では $(k_1,k_2)=(1/R,0)$、$H=1/(2R)$ です。したがって、Gauss曲率が同じでも外在的な曲がり方は同じとは限りません。一方、前のF-2-C1で円筒の曲面Poisson局所行列が平面と一致したのは、その行列が第1基本形式 $G$ によって決まり、円筒と平面が局所等長だからです。

形作用素は通常の曲面Poisson要素行列へ直接入るのか

第1基本形式だけで定まる通常の曲面Poissonエネルギーには、$S$ を独立に代入しません。形作用素が明示的に現れるのは、シェル・膜の曲げ、曲率依存の表面物理、法線を含む境界条件、形状微分、曲面の高次幾何近似などです。したがってF-2-C1の $G$ とF-2-C2の $S$ は、同じ幾何を表す別の役割として区別します。

鞍面は前の擬球面と同じなのか

いいえ。このCanvasの鞍面は中心点で $(k_1,k_2)=(1/R,-1/R)$ となる双曲放物面の局所モデルです。方向別の形作用素を最も明瞭に示すためのモデルであり、曲面全体が一定負曲率だとは主張しません。一定負曲率と測地円を扱う正典は直前の擬球面局所片です。

離散FEMでは法線の微分をどう扱うか

一次の平面三角形だけでは各要素内の法線は一定なので、曲率は要素境界の法線ジャンプや頂点周りの離散量として現れます。高次曲面要素では写像の微分から法線と曲率を評価できます。要素写像、自由度、数値積分、組立ての実装はG-1 有限要素法の基礎へ引き渡します。

橋渡し可視化 F-2-C3 球面冠でGauss--Bonnetの収支を閉じる

局所曲率 $K$ を面上で積み上げると、境界を一周したときの回転と曲面領域の位相が結び付きます。向き付けられた曲面領域 $D$ に区分的に滑らかな境界 $\partial D$ があるとき、Gauss--Bonnetの定理は

\[ \iint_D K\,dA +\oint_{\partial D}k_g\,ds +\sum_i\Theta_i =2\pi\chi(D) \]

と書けます。$k_g$ は正向きの境界を曲面内で見た符号付き測地曲率、$\Theta_i$ は角での外角、$\chi(D)$ はEuler標数です。まず一つ目の例として、半径 $R$ の球面の北極から余緯度 $\alpha$ までを切り取った滑らかな球面冠を考えます。この領域は円板と同じ位相なので $\chi(D)=1$、境界に角はないので $\sum_i\Theta_i=0$ です。

球面冠では

\[ K=\dfrac1{R^2}, \qquad A(D)=2\pi R^2(1-\cos\alpha), \qquad \iint_DK\,dA=2\pi(1-\cos\alpha) \]

です。一方、境界の緯線を、球面の外向き法線に対して領域が左側に来る向きへ一周すると、

\[ k_g=\dfrac{\cot\alpha}{R}, \qquad L(\partial D)=2\pi R\sin\alpha, \qquad \oint_{\partial D}k_g\,ds=2\pi\cos\alpha \]

となります。したがって

\[ \underbrace{2\pi(1-\cos\alpha)}_{\text{面の曲率}} +\underbrace{2\pi\cos\alpha}_{\text{境界の曲がり}} =2\pi =2\pi\chi(D) \]

と、面と境界の収支がちょうど閉じます。

動かして確かめる順序。 まず $\alpha=65^\circ$ で、橙色の面積分と青緑色の境界積分の合計が $2\pi$ になることを確認します。次に $\alpha=90^\circ$ へ動かします。赤道は測地線なので $k_g=0$、境界項は消え、半球の面積分だけで $2\pi$ になります。さらに $90^\circ$ を越えると、領域は半球より大きくなって面積分は $2\pi$ より大きくなりますが、境界の向きに対する $k_g$ が負へ反転し、超過分を差し引きます。最後に $R$ を変えます。$K$、面積、$k_g$、境界長は個別には変わりますが、それぞれの積は $R$ に依存せず、合計は $2\pi$ のままです。

薄い格子は、球面を局所要素へ分けて数値積分する入口です。表示値 $Q_h(K\,dA)$ は各緯度帯の中点で $K\,dA$ を評価した曲面求積で、

\[ Q_h(K\,dA) =2\pi\,\Delta\theta \sum_{j=0}^{m-1}\sin\!\left(\left(j+\dfrac12\right)\Delta\theta\right), \qquad \Delta\theta=\dfrac{\alpha}{m} \]

です。$m$ を2倍にすると、滑らかな被積分関数に対する中点則の誤差はおよそ $1/4$ になります。ここでは連続な定理と曲面求積への入口だけを扱います。辺の向き、頂点の角度欠損、Euler標数をメッシュ接続から計算する離散版は、後続の角をもつ境界の例とG-6 位相・切断面とゲージへ引き渡します。

なぜ境界項には符号があるのか

境界の正向きは、球面の外向き法線に対して領域が左側に来る向きです。同じ緯線でも、北側の球面冠を領域にするか南側を領域にするかで符号が反転します。このCanvasでは北極を含む領域を採用しています。$\alpha<90^\circ$ では $k_g>0$、赤道で0、$\alpha>90^\circ$ では $k_g<0$ です。

半径を変えても合計が変わらないのはなぜか

$R$ を大きくすると $K$ は $1/R^2$ で小さくなりますが面積は $R^2$ で増えます。また $k_g$ は $1/R$ で小さくなりますが境界長は $R$ で増えます。積では尺度が相殺し、角度と位相だけが残ります。これは材料値や未知場の値ではなく、幾何と位相の収支です。

これはFEM方程式そのものなのか

Gauss--BonnetはFEMの支配方程式ではありません。しかし曲面FEMで使う要素写像、曲面求積、境界の向き、内部辺の相殺、メッシュ位相を独立に検査する強い整合条件になります。通常の電磁界解析ではMaxwell弱形式を解き、その幾何・位相実装をこの種の恒等式で検算します。

橋渡し可視化 F-2-C4 測地三角形では境界の曲がりが頂点へ集まる

次は境界に角がある場合です。単位球面の北極を $A$、赤道上の2点を $B,C$ とし、$A\to B\to C\to A$ を短い大円弧で結びます。$A$ の内角を $\alpha$ とすると、三角形の内角は

\[ \mathcal A=\alpha, \qquad \mathcal B=\mathcal C=\dfrac{\pi}{2} \]

です。Girardの公式より、囲まれた領域 $D$ の面積と面曲率項は

\[ \operatorname{Area}(D) =\mathcal A+\mathcal B+\mathcal C-\pi =\alpha, \qquad \iint_DK\,dA=\alpha \]

となります。三辺はすべて測地線なので、辺の途中では $k_g=0$、したがって $\oint_{\partial D}k_g\,ds=0$ です。それでも境界全体は曲がっています。曲がりは各頂点で接線が跳ぶ量、すなわち外角

\[ \Theta_A=\pi-\alpha, \qquad \Theta_B=\Theta_C=\dfrac{\pi}{2}, \qquad \sum_i\Theta_i=2\pi-\alpha \]

へ集中しています。よって、円板位相 $\chi(D)=1$ に対して

\[ \underbrace{\alpha}_{\text{面の曲率}} +\underbrace{0}_{\text{測地線の辺}} +\underbrace{(2\pi-\alpha)}_{\text{頂点の外角}} =2\pi\chi(D) \]

と収支が閉じます。

動かして確かめる順序。 まず $\alpha=90^\circ$ で、面項が $\pi/2$、三つの外角がすべて $\pi/2$ となることを確認します。次に $\alpha=45^\circ$ へ狭めます。面項は $\pi/4$ へ減りますが、$A$ の外角が $3\pi/4$ へ増え、総和は変わりません。反対に $\alpha=135^\circ$ へ広げると、面項は $3\pi/4$、$A$ の外角は $\pi/4$ となります。頂点を $A,B,C$ で切り替えると、灰色の入射接線 $\vec t_-$ から赤色の出射接線 $\vec t_+$ への正の回転を拡大して比較できます。青緑の矢印は、球面の外向き法線に対して領域が左側に来る境界の正向きです。

角を小さな滑らかな曲線で丸めると、その短い曲線上の $\int k_g\,ds$ は、丸め半径を0へ近づけた極限で $\Theta_i$ へ近づきます。したがって角項は別の規則を突然付け足したものではなく、滑らかな境界の曲率が頂点へ集中した極限です。

辺で $k_g=0$ なのに、なぜ境界は一周して回るのか

各辺の途中では接線が測地線に沿って進むため、曲面内での連続的な曲がりはありません。しかし頂点では入射接線から出射接線へ有限角だけ不連続に変わります。滑らかな部分の積分だけを足すとこの跳びを落とすため、区分的に滑らかな境界では外角和が必要です。

外角と内角の関係はいつも $\Theta=\pi-\mathcal A$ か

この式は、領域を左に見る正向きでたどる凸頂点に対する符号規約です。凹頂点では符号付き外角が負になることがあります。Canvasは $30^\circ\le\alpha\le150^\circ$ の凸な球面三角形だけを扱います。

これがFEMの角度欠損そのものなのか

ここで描くのは連続な球面領域の境界外角です。三角形メッシュの内部頂点に現れる $2\pi$ からの角度欠損とは配置が異なりますが、曲率を面・辺・頂点へ分配して総和を保つ考え方は共通です。離散曲面では要素の向き、内部辺の相殺、頂点周りの角度欠損、接続数から求める $\chi$ を同時に扱います。その実装はG-6 位相・切断面とゲージへ引き渡します。

次のホロノミー可視化と何が違うのか

同じ三角形を意図的に再利用します。この節は境界接線そのものの回転を面項・辺項・角項へ分けます。次のF-2-6は、接ベクトルをLevi-Civita接続で平行移動したときの一周後のずれを見ます。どちらも面積 $\alpha$ と結び付きますが、追跡しているベクトルと収支の読み方は同じではありません。

可視化 F-2-6 球面を一周すると、ベクトルはなぜ回るのか

紙の上では、矢印を平行なまま一周させれば向きは元へ戻ります。球面では事情が違います。ここでは、単位球面上の北極 $A$ から赤道上の $B$ へ進み、赤道を $B$ から $C$ へ進み、子午線を $C$ から $A$ へ戻ります。紫の矢印は、球面の接平面から離れないようにしながら、経路に沿って平行移動した接ベクトルです。

三角形の頂点角は $\alpha,\pi/2,\pi/2$ です。単位球面ではGirardの公式から、橙色の領域の面積は球面過剰そのものになります。

\[ \operatorname{Area}(S) =\alpha+\dfrac{\pi}{2}+\dfrac{\pi}{2}-\pi =\alpha \]

球面のGauss曲率は $K=1$ なので、閉曲線を一周したベクトルの回転角 $\Delta\psi$ は

\[ \Delta\psi =\iint_S K\,dA =\alpha \]

になります。灰色が出発時の $\vec v(0)$、紫色が途中の $\vec v(s)$、赤色が一周後の $\vec v(1)$ です。角度 $\alpha$ と経路の進行を直接動かし、紫の矢印が常に球面へ接していること、一周後の赤い矢印との間の角が面積と一致することを見てください。

回答は任意です。まず出発・途中・一周後を自由に動かし、面積、$K$、$\Delta\psi$のどれが変わるかを観察してください。 $\alpha_0=90^\circ$ の基準と現在値の比を表示します。
灰:出発ベクトル $\vec v(0)$ 紫:平行移動中の $\vec v(s)$ 赤:一周後の $\vec v(1)$ と $\Delta\psi$ 橙面:囲まれた領域 $S$

出発: 北極 $A$ で灰色の $\vec v(0)$ を選びます。経路は三本とも大円弧なので、辺そのものは測地線です。

途中: $s/L$ を動かすと紫色の $\vec v(s)$ が $A\to B\to C\to A$ を進みます。表示する $|\vec p\cdot\vec v|$ がほぼ0なら、矢印は球面の接平面から離れていません。

一周後: 赤色の $\vec v(1)$ は灰色の $\vec v(0)$ から $\Delta\psi=\alpha$ だけ回ります。$K=1$ は変わらず、$\alpha$ を半分にすると領域面積と $\iint_S K\,dA$ が半分になるため、ホロノミー角も半分になります。

自分の言葉で説明: 「辺がすべて測地線なのに、なぜ一周後の矢印は戻らないのか」を、局所量 $K$、積分領域 $S$、ループ量 $\Delta\psi$ の順で説明してください。

動かして確かめる順序。 最初は $\alpha=90^\circ$、$s/L=0$ の出発状態です。まず一周後へ進め、紫の途中ベクトルが赤の $\vec v(1)$ へ着くことを確認します。次に $s/L$ を25%、55%、85%へ動かし、三つの辺で接性残差が小さいまま保たれることを見ます。最後に $\alpha=45^\circ$ と $120^\circ$ を比べます。$K=1$ は固定のまま、橙色の面積と赤い $\Delta\psi$ が同じ比で変わることを数値欄で照合してください。

接続1形式から曲率2形式へ

動く接標構 $\{\vec e_1,\vec e_2\}$ の回り方は接続1形式 $\omega^i{}_j$ で記述できます。ねじれのないLevi-Civita接続と、その曲率2形式はCartanの構造方程式

\[ d\vartheta^i+\omega^i{}_j\wedge\vartheta^j=0, \qquad \Omega^i{}_j=d\omega^i{}_j+\omega^i{}_k\wedge\omega^k{}_j \]

で結ばれます。2次元の曲面では

\[ \Omega^1{}_2=K\,dA, \qquad \Delta\psi=\iint_S\Omega^1{}_2 \]

となり、局所的な標構の回り方を面全体で積み上げた結果が、境界を一周した回転として現れます。これは電磁気における「2-formの面積分が境界上のループ量を支配する」という見方へ進むための幾何学的な原型です。ただし、ここで積分しているのはGauss曲率であり、磁束そのものではありません。

橋渡し可視化 F-2-K1 接続1形式は局所で変わるのに、なぜホロノミーは変わらないのか

前のF-2-6は、一周後の平行移動ベクトルが曲率積分だけ回るという結果を見ました。ここでは、その途中を作る局所量へ踏み込みます。半径 $R$ の球面上で、余緯度 $\theta_1=\theta_c-h$ と $\theta_2=\theta_c+h$、経度 $0$ と $\beta$ に囲まれた曲面領域 $D$ を考えます。固定値は $h=18^\circ$ です。

南向き・東向きの正規直交接標構を $\{\vec e_\theta,\vec e_\phi\}$、その双対共標構を $\{\vartheta^1,\vartheta^2\}$ とすると、

\[ \vartheta^1=R\,d\theta, \qquad \vartheta^2=R\sin\theta\,d\phi, \qquad \omega^2{}_1=\cos\theta\,d\phi \]

です。Cartanの第1構造方程式は、共標構の変化と接続1形式の回転が打ち消し合い、ねじれがないことを表します。

\[ d\vartheta^i+\omega^i{}_j\wedge\vartheta^j=0 \]

平行移動ベクトルの標構内角度を $\psi$ とし、向きの約束を $d\psi=A$ と置くと、ここで使うスカラー接続は $A=-\omega^2{}_1=-\cos\theta\,d\phi$ です。2次元の $SO(2)$ 接続では行列の二次項が可換成分へ縮約され、曲率2形式は

\[ F=dA =\sin\theta\,d\theta\wedge d\phi =K\,\vartheta^1\wedge\vartheta^2, \qquad K=\dfrac{1}{R^2} \]

となります。橙色の正向き境界 $C=\partial D$ を一周すると、Stokesの定理により

\[ \Delta\psi =\oint_C A =\iint_D F =\beta\bigl(\cos\theta_1-\cos\theta_2\bigr) \]

です。$R$ を変えると $K$ は $R^{-2}$、面積は $R^2$ に比例して変わりますが、その積である曲率流束とホロノミー角は変わりません。

標構を位置依存角 $\gamma(\phi)$ だけ回すと、同じ物理ベクトルを測る接続は

\[ A'=A-d\gamma, \qquad F'=dA'=dA, \qquad \oint_C A'=\oint_C A \]

へ変わります。Canvasでは $\gamma(\phi)=\lambda\sin(2\pi\phi/\beta)$ とし、ゲージねじり $\lambda$ を切り替えます。青緑と金色の局所標構、現在点での $A'(\dot C)$ は変わりますが、紫の平行移動ベクトル、桃色の曲率2形式、赤色の一周後ベクトル、最終角 $\Delta\psi$ は変わりません。

ゲージ変更で何が変わり、何が変わらないのか

標構は曲面上の物差しなので、同じ接平面内で位置ごとに回しても構いません。そのときベクトルの標構成分と接続係数は変わります。しかし物理ベクトルそのもの、$F=dA$、閉路積分、ホロノミーは変わりません。Canvasはゲージ変更の前後で紫のベクトルの3次元成分まで比較しています。

なぜ球の半径を変えても最終角が変わらないのか

同じ角度範囲で球を拡大すると、Gauss曲率は $1/R^2$ に減り、曲面領域の面積は $R^2$ に増えます。したがって $\iint_DK\,dA$ では両者が相殺します。これは曲率そのものと積分曲率を区別する操作です。

接続1形式は電磁気のベクトルポテンシャルと同じなのか

数学的な構造には類似があります。どちらも局所ポテンシャルがゲージで変わり、外微分で得る2形式と閉路量が不変になります。しかし、ここでの $A$ は接標構を運ぶLevi-Civita接続で、$F$ は曲面のGauss曲率です。電磁ベクトルポテンシャルや磁束そのものではありません。

FEMではどこに現れるのか

通常のMaxwell剛性行列へこの球面ホロノミー角を直接足すわけではありません。曲面要素の局所基底、接ベクトル成分、共変微分、シェル・ベクトル・テンソル場の要素間輸送を扱うとき、接続が必要になります。スカラー曲面Poisson問題は計量だけで書けますが、接ベクトル場を隣接要素間で比較する問題では「同じ方向」の定義に接続が入ります。

橋渡し可視化 F-2-R1 曲率は近接する測地線をどう近づけ、離すのか

前節までは曲率を「小さな閉路を一周した回転」として読みました。もう一つの読み方は、同じ点からほぼ同じ向きに出た測地線どうしの相対加速度です。測地線族 $\gamma_\varepsilon(s)$ を弧長 $s$ でそろえ、族の方向微分

\[ \vec J(s)=\left.\dfrac{\partial\gamma_\varepsilon(s)}{\partial\varepsilon}\right|_{\varepsilon=0} \]

をJacobi場と呼びます。接ベクトルを $\vec T=d\gamma/ds$ とすると、ここで採用するRiemann曲率の符号規約では

\[ \dfrac{D^2\vec J}{ds^2} +R(\vec J,\vec T)\vec T=0 \]

です。2次元の一定Gauss曲率面で $\vec J=j\vec N$、$\vec N\perp\vec T$ とすれば、断面曲率は

\[ K=\left\langle R(\vec N,\vec T)\vec T,\vec N\right\rangle, \qquad j''+Kj=0 \]

へ縮約されます。同一点から単位だけ向きを変えて出発する初期条件 $j(0)=0,j'(0)=1$ では

\[ j_K(s)= \begin{cases} R\sin(s/R),&K=+1/R^2,\\ s,&K=0,\\ R\sinh(s/R),&K=-1/R^2. \end{cases} \]

Canvasでは、初期方向を有限角 $\delta$ だけ変えた二本の測地線も同時に描きます。その横方向間隔を $\delta$ で割った有限差分は

\[ j_\delta(s)=\dfrac{2S_K(s)\sin(\delta/2)}{\delta}, \qquad S_K(s)=j_K(s), \qquad \lim_{\delta\to0}j_\delta(s)=j_K(s) \]

です。$\delta$ を小さくすると有限差分残差が二次で減ることまで確認できます。

青の $\gamma_-$ と橙の $\gamma_+$ が有限角 $\delta$ だけ初期方向を変えた測地線、紫の線分が同じ $s$ での横方向間隔です。赤の $-K\vec J$ はJacobi場の相対加速度を表し、正曲率では間隔を閉じる向き、負曲率では広げる向きになります。零曲率ではこの赤矢印が消えます。

観察の順序。 まず同じ $R,s/R,\delta$ で曲率符号だけを切り替えます。球面では二本が北極から離れた後に南極へ再収束し、$s=\pi R$ が最初の共役点です。平面では $j=s$、負曲率では $j=R\sinh(s/R)$ となり、同じ初期方向差が急速に増幅されます。次に $\delta:18^\circ\to3^\circ$ と小さくし、描いた二本から求める $j_\delta$ が解析Jacobi場へ近づくことを見ます。$R$ を大きくすると $|K|$ は小さくなりますが、$s/R$ を固定した表示では規格化された形を保ったまま全体寸法が拡大します。

負曲率の図には二葉双曲面の上半分

\[ X^2+Y^2-Z^2=-R^2, \qquad Z\gt0 \]

を使います。これはMinkowski計量 $dX^2+dY^2-dZ^2$ で曲率 $-1/R^2$ をもつ双曲平面モデルです。画面のEuclid的な高さを普通の曲面距離と読んではいけません。青と橙の曲線はこの内在計量の測地線です。

磁力線の開きと同じなのか

同じではありません。 磁力線は $d\vec x/d\lambda=\vec B(\vec x)$ を満たすベクトル場の積分曲線です。Jacobi方程式は、計量から定まるLevi--Civita接続について $D_s\vec T=0$ を満たす測地線族の変分です。磁力線が測地線になる特別な計量を別途定義しない限り、$R(\vec J,\vec T)\vec T$ を磁気力や磁束密度と読んではいけません。

電磁波の伝搬と同じなのか

一般のMaxwell場そのものはJacobi方程式では伝搬しません。波長が媒質変化の尺度より十分短い幾何光学近似では、光線を光学計量の測地線として扱え、その近接光線の集束にJacobi場を使える場合があります。これは明示した近似と計量の下での橋であり、電場・磁場の波動方程式との同一視ではありません。

Riemann曲率はGauss曲率より別のものか

2次元ではRiemann曲率テンソルの独立情報はGauss曲率 $K$ 一つへ縮約されます。このCanvasの三つの式はその2次元版です。高次元では、同じ点でも $\vec T$ と $\vec J$ が張る2平面ごとに断面曲率が異なり、曲率テンソルが方向依存性をまとめます。

FEMではどこに現れるのか

通常の平坦な3次元領域のMaxwell行列へJacobi場を新しい項として足すわけではありません。曲面上のベクトル・テンソル問題、シェル、曲がった多様体上の共変微分、幾何光学的なレイ集束では曲率が作用します。一般の曲線要素FEMでは、まず要素写像のJacobianと計量を正しく評価し、近接測地線を数値追跡するなら離散化誤差と幾何近似誤差を別々に調べます。

この節は Tristan Needham, *Visual Differential Geometry and Forms* (Princeton University Press, 2021), Act IV の測地線偏差とRiemann曲率の見方を参考に、一定曲率三モデル、有限差分検算、電磁気との目的差を独自に再構成したものです。前のCartan節は同書Acts IV--Vの幾何学的な見方を参考に、説明・数式・3D図を独自に再構成しています。

理解の確認

1. 1-formの引き戻しが、ベクトル場の接線成分だけを取り出すのはなぜでしょうか。

2. 曲線の媒介変数を取り替えても線積分が変わらない条件を説明してください。

3. 曲率 $\kappa$ と磁気剛性 $B\rho$ は、荷電粒子の曲がりやすさをどう表すでしょうか。

4. 平面を円筒へ曲げると法線は回るのに、三角形の内角和とGauss曲率が変わらないのはなぜでしょうか。

5. 平面から円筒へ写したとき局所剛性行列が変わらず、球面へ写すと変わる理由を、計量 $G$ の違いから説明してください。

6. 球面冠を半球まで広げたとき、Gauss--Bonnetの面積項と境界項はそれぞれどうなるでしょうか。

7. 測地三角形の $\alpha$ を狭めたとき、面曲率項の減少をどの頂点外角が補うでしょうか。

8. 単位球面上で頂点角 $\alpha$ を2倍にすると、囲む面積と一周後のホロノミー角はどう変わるでしょうか。

9. F-2-K1で標構のゲージねじりを変えたとき、局所標構と接続係数は変わるのに、紫の平行移動ベクトルと最終ホロノミーが変わらないのはなぜでしょうか。

10. 球の半径 $R$ を2倍にしたとき、$K$、領域面積、$\iint_DK\,dA$ はそれぞれ何倍になるでしょうか。

11. 同じ $R$ と $s/R$ で $K=+1/R^2,0,-1/R^2$ を切り替えると、$j_K(s)$ の大小関係はどうなるでしょうか。

12. 球面で $s=\pi R$ のとき $j=0$ へ戻ることは、二本の測地線のどの幾何学的事実を表すでしょうか。

13. 磁力線の分離を、そのままRiemann曲率による測地線偏差と呼べない理由を、両者の微分方程式から説明してください。