3Dで学ぶ電磁気学
F-4 曲面上の流れ関数
流れ関数 $T$ は、まず 「線と線の間を何 A 流れているか」を記録する目盛り だと思ってください。$T=0.4\ \mathrm{A}$ の線と $T=0.9\ \mathrm{A}$ の線の間を流れる全電流は、値の差 $0.5\ \mathrm{A}$ です。電流はこの線を横切るのではなく、線に沿って流れます。この二つだけを先につかめば、後の式はその幾何学的な書き方です。
まず30秒でつかむ
- 地形図の等高線を思い浮かべます。ただし $T$ は本当の高さでも電位でもなく、電流を数えるための「仮想の高さ」です。
- $\nabla_sT$ は一番急な上り坂なので等高線を横切り、表面電流 $\vec K$ はそれを面内で90度回すので等高線に沿います。
- したがって $\vec K\cdot\nabla_sT=0$ です。電流は $T$ の等値線に沿い、閉曲面では途中で始まったり終わったりしません。
- 色が $T$、等値線が巻線候補、矢印が電流方向です。色・線・矢印を同じものとして読まないことが、この回の最初のポイントです。
式を読む順番
1. 二本の等値線へ付いた値 $T_1,T_2$ を読み、その差 $|T_1-T_2|$ を求めます。
2. 二本を近づけ、重ね、入れ替えて、差が線間を横切る電流と一緒にどう変わるかを見ます。
3. スカラー $T$ の値を曲面上の連続色と等値線の両方で読みます。
4. $\nabla_sT$ は等値線を横切り、$\vec K=\vec n\times\nabla_sT$ は90度回って等値線に沿うことを確かめます。
この回の到達点
1. $\vec{K}=\vec{n}\times\nabla_sT$ が等値線に接し、曲面上で電流保存を満たすことを説明できる。
2. 二本の等値線間の横断電流が、経路の長さではなく $|T_1-T_2|$ で決まることを説明できる。
3. 曲面Hodge starを接平面内の90度回転として読み、連続な流れ関数から離散巻線へ進める。
可視化 F-4-1 二つの目盛りで電流を数える
最初に表示するのは、球を滑らかに変形した非軸対称のコイル支持面です。「形状」を100%から0%まで動かすと、同じ流れ関数を保ったまま比較用の球へ戻ります。形が変わる途中で、等値線と表面電流密度 $\vec K$ は曲面に沿って曲がりますが、$\vec K$ が等値線に沿うことと、二本の間の電流が $|T_1-T_2|$ で決まることは変わりません。その後、$T_1,T_2$ を重ねる、入れ替える、離す、さらに端点を固定した水色の経路 $C$ を迂回させる、という順に試してください。
形が変わっても保たれる流れ関数目盛りと横断電流
橙と紫は独立に動く二本の等値線です。形状だけを変えると、二本の線、曲面の法線、曲面勾配、緑の $\vec K$ はすべて変形後の曲面上で再計算されます。それでも、二本を重ねると $|T_1-T_2|$ と横断電流はともに0になり、入れ替えても大きさは連続的に変わります。水色破線 $C$ は二本を横切って電流を数える積分経路であり、導線ではありません。$C$ を曲げて表示長を変えても、端点の $T_1,T_2$ が同じなら
は変わりません。これは表示中の曲面上で $\vec K=\vec n\times\nabla_sT$ を数値積分して確かめています。水色の経路は面に隠れないよう、局所法線方向へごくわずかに浮かせています。緑の48本は閉曲面全体に分布する $\vec K$ の位置標本で、本数が全電流を表すのではありません。矢印長は $|\nabla_sT|=|\vec K|$ に比例させていますが、画面上で読めるよう表示倍率を掛けています。
ここで形状変更に対して保存されるのは、同じ二目盛り間の横断電流です。局所的な $|\vec K|$、経路の表示長、さらにこの電流が空間に作る磁場 $\vec B$ まで同じになる、という意味ではありません。形状スライダーは動く導体の時間発展でもないため、この操作自体に電磁誘導は含めていません。
次に、矢印の向きを式へ戻す
図では、基準球上の単位方向 $\vec u$ を、比較用の形状パラメータ $q$ によって閉曲面上の点 $\vec p=\vec X_q(\vec u)$ へ滑らかに移し、
としています。$q=0$ が比較用の球、$q=0.5$ が軸対称楕円体、$q=1$ が開口のないヘルメット状の非軸対称閉曲面です。$q$ は形を比較するための操作量であり、物理的な時間ではありません。$T$ は同じ物質点 $\vec u$ に付いた目盛りで、変形後の幾何学的な高さ $z$ でも電位でもありません。曲面上の任意の接ベクトル $\vec v$ に対して $dT(\vec v)=\nabla_sT\cdot\vec v$ となる $\nabla_sT$ を求め、単位法線 $\vec n$ を用いて表面電流密度を
と作ります。法線との外積が接平面内で向きを90度回すため
となり、形が球でなくても $\vec K$ は $T=\mathrm{const.}$ の等値線に接します。向きを固定した曲面では、対応する1-formを $\kappa=\star_s dT$ と書けます。
ここで言葉を取り違えないようにします。電流 $\vec K$ は等値線に沿う一方、二本の間の電流を数える測定経路 $C$ は等値線を横切る、という役割分担です。
修士課程の電磁気学演習
流れ関数の等値線を、保存則を壊さず巻線へできるか
電磁気の問い: 曲面上の流れ関数 $T$ から $\vec K=\vec n\times\nabla_sT$ を作ると、なぜ表面電流保存が自動的に満たされ、二つの等値線間の電流が $T$ の差で数えられるのか。
観察ポイント: 巻線本数を2倍にしたとき、一本当たりの電流差、線間隔、連続表面電流への近似誤差がどう変わるかを確かめる。
操作と観測: 可視化F-4-1で $T_1,T_2$ と経路 $C$ を動かして線間電流を読み、可視化F-4-4で点Pの $\nabla_sT$、$\vec K$、$\vec n$ を確認し、可視化F-4-6で巻線本数と $\Delta T$ を追う。
判定基準と微分幾何による説明
曲面Hodgeを使えば表面電流1-formは $K^{\flat}=\star_s dT$ と書け、$d\star_sK^{\flat}=d^2T=0$ に対応する保存構造を持つ。横断曲線 $\gamma:A\to B$ の接線を $\vec t$、面内横断方向を $\vec m=\vec n\times\vec t$ とすれば、横断電流は $I_{\gamma}=\int_\gamma\vec K\cdot\vec m\,d\ell=T(B)-T(A)$ である。
診断: $\vec K$ が等値線を横切るなら外積順序か面法線が誤っている。巻線化後のBiot--Savart再計算で目標場が悪化するなら、等値線抽出、有限導体幅、端部接続を見直す。
研究へ: 連続最適化、等値線量子化、実導体配置、3D場再評価を分け、どの段階で保存則と製造制約が入るかを設計記録に残す。
なぜ $\star_s$ なのか:90度回転と複素構造
曲面上の1-formに対する $\star_s$ は、計量と向きで定まる90度回転です。ただし厳密には、$\star_s$ は余接空間の1-formへ作用し、接ベクトル上の複素構造は musical isomorphism を介して
と定義します。向き付けられた2次元Riemann計量のもとで、この $J$ は計量と両立する複素構造です。ベクトルの言葉では $J\vec{v}=\vec{n}\times\vec{v}$ なので、法線との外積が接平面内の90度回転になることと一致します。
$\star_s\star_s=-1$、すなわち90度回転を2回すると反転することは、複素数の $i^2=-1$ に対応します。ただし、この代数的性質だけで任意の場が正則関数になるわけではありません。1-form $\alpha$ が無源領域で閉かつ余閉、すなわち
を満たすとき、単連結な局所領域では $\alpha=dA$ と $\star_s\alpha=d\Phi$ を選べます。この2式がCauchy--Riemann関係になり、次回(F-5)の複素ポテンシャルへつながります。したがって、正確には「Hodge starが複素構造を余接空間側に表し、場の方程式が調和共役の条件を与える」と理解します。
電流保存は作り方に内蔵されている
流れ関数で作った $\vec{K}$ の面内発散を、$d$ の言葉で計算してみます。$\star_sK^{\flat}=\star_s\star_s\,dT=-dT$ なので
となり、曲面内部の電流保存 $\mathrm{div}_s\vec{K}=0$ は、$ddT=0$(F-3)による恒等式です。ただし境界 $\partial S$ のある曲面では、これは「端から電流が出ない」ことまで自動では保証しません。境界の面内外向き単位法線を $\vec m$ とすると、絶縁境界には $\vec K\cdot\vec m=0$、同値に $T$ を各境界成分上で一定にする条件が必要です。閉曲面ならこの追加条件はありません。
$\vec{K}=\vec{n}\times\nabla_s T$ は $\vec{J}=\mathrm{rot}\,\vec{T}$ の曲面版
流れ関数 $T$ の正体は、電磁界解析で使う電流ベクトルポテンシャル(Bossavitの $T$、$T$-$\Omega$ 法の $T$)です。3次元では電流密度をあるベクトル場の回転として
と表します。すると $\mathrm{div}\,\vec{J}=\mathrm{div}(\mathrm{rot}\,\vec{T})=0$ が自動で成り立ち、電流保存が構造的に保証されます(F-3の $\mathrm{div}\,\mathrm{rot}=0$、これは $dd=0$ の一例)。この $\vec{T}$ は磁位 $\Omega$ と組んで渦電流FEMの $T$-$\Omega$ 定式化をつくる量で、研究室でも radia.cohomology が多重連結領域での $T$ の切断(カット)を担っています。
面電流はこの $\vec{T}$ を曲面に垂直に取り、その大きさを流れ関数 $T$ とした極限です。$\vec{T}=T\,\vec{n}$ と置いて回転を計算すると(平坦な面で $\nabla\times\vec{n}=0$)、
となり、符号の約束を除いて $\vec{K}=\vec{n}\times\nabla_s T$ そのものです。つまり $\vec{K}=\vec{n}\times\nabla_s T$ は $\vec{J}=\mathrm{rot}\,\vec{T}$ を薄いシートへ落とした姿であり、「法線との外積」は「面に垂直なベクトルポテンシャルの回転」に他なりません。
微分形式で見ると、この対応は次元が1つ下がった同じ文だと分かります。
| ポテンシャル | 電流 | 関係 | 保存則 | |
|---|---|---|---|---|
| 3次元 | $\mathcal{T}$(1-form) | $\mathcal{J}$(2-form) | $\mathcal{J}=d\mathcal{T}$ | $d\mathcal{J}=dd\mathcal{T}=0$ |
| 曲面 | $T$(0-form) | $K^{\flat}$(1-form) | $K^{\flat}=\star_s\,dT$ | $d(\star_s K^{\flat})=-ddT=0$ |
どちらも「電流=ポテンシャルの(回した)微分」で、$dd=0$ が保存則を与えます。曲面の流れ関数は、そのシートの電流ベクトルポテンシャルそのもの——1次元下がったので1-formが0-formになり、3次元の回転 $\mathrm{rot}$ が曲面の $\star_s d$(90度回転つき微分)に変わっただけです。$T$-$\Omega$ 法を知っている人にとって、ストリーム関数コイル設計は「面に閉じ込めた $T$-法」だと読めます。
等値線の間隔が電流を数える
曲面上の曲線 $C:A\to B$ を横切って流れる電流を数えます。$C$ の単位接ベクトルを $\vec{t}$、面内の横断方向を $\vec m=\vec n\times\vec t$ とすると
どんな経路で横切っても、流れる電流は $T$ の差だけで決まります。つまり2本の等値線 $T=T_1$ と $T=T_2$ の間には常に電流 $T_1-T_2$ が流れており、等値線を等間隔 $\Delta T$ で描けば「1本あたり等しい電流 $\Delta T$ を担ぐ電流線」の束になります。等値線が密なところは電流密度が高い——等高線地図の読み方がそのまま電流地図になります。
研究:ストリーム関数コイル設計
この見方を逆向きに使うと、そのままコイル設計法になります。曲面上に「欲しい磁場を作る表面電流」を、巻線の形ではなく連続なスカラー場 $T$ として最適化し、最後に $T$ の等値線を $\Delta T$ 間隔で切り出して巻線パターンに離散化します。等値線がそのまま導体パターン、$\Delta T$ が1ターンの電流です。MRIの勾配コイル・シムコイルの設計で使われる標準手法で、研究室でもこの原理でストリーム関数コイル設計(設計・Pareto・製造の一貫パイプライン)を開発しています。面内の発散ゼロを点ごとの制約として課さずに済むことが強みですが、開いた曲面では境界値、総電流、配線可能性などの設計条件は別に課します。
球面座標の $z$ は長さ、流れ関数 $T$ は電流の単位 A を持つため、両者をそのまま等号で結んではいけません。半径 $R$ の球で、北端と南端の流れ関数差を $I_{\mathrm{span}}$ と決めるなら、物理量としては
です。$T\propto z$ の等値線は $z$ 方向に等間隔な緯線となり、連続表面電流は $|\vec{K}|=(I_{\mathrm{span}}/2R)\sin\theta$ の帯になります。この連続分布の極限が球の内部に完全に一様な磁場を作ることは古典的な結果(一様帯電球の回転と同じ電流分布)で、理想的な一様磁場コイルとして知られています。有限本の巻線はその近似なので、磁場は最後に再評価します。
可視化 F-4-2 等値線を巻線に離散化する
銅色の緯線は $T\propto z$ を等間隔 $\Delta T$ で切った巻線で、各ターンが同じ電流 $\Delta T=I_{\mathrm{span}}/N$ を運びます。この例では $R=0.20\ \mathrm{m}$、$I_{\mathrm{span}}=2.40\ \mathrm{A}$ を固定しているため、$N$ を増やすと線間隔 $\Delta z=2R/N$ と1ターン電流 $\Delta T$ は同じ比率で減り、$N\Delta T=I_{\mathrm{span}}$ と $\Delta T/\Delta z=6.00\ \mathrm{A/m}$ は変わりません。青緑の矢印は連続極限の一様な目標磁場です。有限本の巻線による中心磁場は $B_z(0)/B_{\mathrm{ideal}}=1+1/(2N^2)$ なので、$N=6$ の1.0139から $N=12$ の1.0035へ近づきます。ターン数を増やすだけで磁場が自動的に完全一様になるわけではなく、最後はBiot–Savart則で評価領域全体を再計算します。
可視化 F-4-3 平面コイルが作る勾配磁場
$T\propto z$(一様磁場)は流れ関数設計の最も簡単な例でした。$T$ の選び方を変えれば、狙った空間分布の磁場を作れます。MRIの傾斜磁場コイルは、平らな板の上の流れ関数を $B_z$ が位置に比例する勾配磁場 $B_z=G\,x$ になるよう設計したものです。この $B_z$ の傾き $G$(傾斜磁場)が、MRIで位置を周波数へ符号化する心臓部です。
平面上で $x$ 方向に反対称な流れ関数を設計すると、$B_z$ は $x$ について奇関数になり、中心付近で $B_z\simeq G\,x$ と線形に変化します。有限なコイル面では、評価領域の外側に誤差を押し出す補正ループも必要になるため、巻線は単純な左右の同心円ではなく、複数の閉曲線からなる蝶形(fingerprint)になります。
この可視化では、評価面上の目標磁場 $B_z^{\mathrm{target}}=Gx$ に対し、平面電流から評価面への作用素を $\mathcal{G}_h$ として
という正則化逆問題を解いています。Fourier空間では、平面流れ関数と高さ $h$ の磁場の関係は
です。得られた連続な $T(x,y)$ を等間隔の値で切り、閉じた等値線を実際の巻線候補にします。下のスライダーでは、同じ巻線から観測距離だけを変えるのではなく、選んだ $h$ ごとに逆問題を解き直した設計へ切り替えます。
$h$ ごとに逆設計した流れ関数の等値線
評価面上の $B_z(x)$
左は逆問題から得た連続流れ関数の等値線、右はその等値線を離散巻線としてBiot–Savart則で再評価した $B_z(x)$ です。まず $P$ を右から左へ動かしたときの符号を確認し、次に左図で巻線面から $P$ までの位置 $(x_P,0,h)$、右図で同じ $P$ の $B_z(P)$ を追ってください。緑の評価領域では青線が破線 $Gx$ にほぼ重なります。$h$ を変えるたびに、その距離で目標勾配を作る流れ関数を選び直すため、巻線の広がり、外側の補正巻線、勾配と直線性が一緒に変化します。「目標磁場 → 連続な $T$ の逆設計 → 等値線を巻線化 → 離散巻線で磁場を再評価」という一連の手順が、流れ関数法の実際の設計ループです。
保存則・検算と次への接続
流れ関数から作った電流は、曲面内で端点を持ちません。任意の横断曲線 $C$ に対して
です。等値線を $\Delta T_k$ ごとに巻線へ離散化したときは
が巻線本数を変えても保存されるかを確認します。さらに、離散巻線のBiot–Savart再計算で目標磁場誤差が収束するかを調べれば、保存則と設計精度を分けて評価できます。F-3の曲面Hodge starを設計へ使った結果を、次のF-5ではポテンシャル自体を座標にするHodographへ発展させます。
可視化 F-4-4 曲面勾配から表面電流を作る
この図で物理的な電流を表すベクトルは、緑の表面電流密度 $\vec{K}$ だけです。青の $\nabla_sT$ は流れ関数 $T$ が曲面内で最も速く増える向きを示す補助ベクトル、赤の $\vec{n}$ は曲面の表裏を決める単位法線です。赤の法線を軸として青を曲面内で90度回すと、緑の表面電流密度になります。
| 図の量 | 意味 | 単位 | 曲面との関係 |
|---|---|---|---|
| 表面色 $T$ | 電流の流れ関数。二つの等値線の差が、その間を流れる全電流になる | A | スカラー |
| 青 $\nabla_sT$ | $T$ が最も増える向き。電流そのものではない | A/m | 接ベクトル |
| 赤 $\vec{n}$ | 曲面の向きと90度回転の正方向を決める単位法線 | 1 | 曲面に垂直 |
| 緑 $\vec{K}$ | 単位幅を横切る物理的な表面電流 | A/m | 接ベクトル・$T$ の等値線に接する |
穴のある曲面でも、表面流れ関数 $T$ の局所関係
は同じです。また滑らかな領域では
となり、等値線は閉じた表面電流路になります。この図で使うトーラスの主半径を $R$、管半径を $a$、主円周方向を $\phi$、管断面方向を $\theta$ とすると、位置と尺度因子は
です。可視化では
を使います。曲面勾配と表面電流は
三つのベクトルは点 $P$ で互いに直交し、緑と青の長さは一致します。
また、曲面上の経路 $C:A\to B$ の接線を $\vec{t}$、曲面内の横断方向を $\vec{m}=\vec{n}\times\vec{t}$ とすれば、経路を横切る全電流は流れ関数の差になります。
Canvasでは、表面色が $T$、細い緑線が複数の $T=\mathrm{const.}$ を描いた表面電流の流線、黒線が選択点を通る流線 $T=T(P)$ です。緑矢印は流線上の局所的な $\vec{K}$ の向きを補います。半透明の四角は点 $P$ の接平面で、青と緑はこの面内、赤だけが面外を向きます。$\phi_P,\theta_P$ を動かし、黒い流線に緑の $\vec{K}$ が接し、青の $\nabla_sT$ が横切ることを確認してください。流線で大域的な電流路を読み、点 $P$ の三ベクトルで局所的な外積関係を読む構成です。
矢印は各評価点を中央にして描いています。矢印の始点を評価点と誤読せず、点 $P$ におけるベクトルの向きとして読んでください。$\nabla_sT=\vec{0}$ となる停留点では、$\vec{K}=\vec{0}$ となり、青と緑の向きは定まりません。
可視化 F-4-5 等値線の間隔と表面電流密度
平面上の流れ関数を
とすると、表面電流は等値線に接する方向へ流れます。
色は $T$、赤・青線は等値線、緑矢印は $\vec K$ を表します。方位角モード $m$ を増やすと等値線が詰まり、電流密度が増えることを確認してください。
可視化 F-4-6 連続な流れ関数を巻線へ量子化する
最初のイメージ。 地形図の等高線を銅線へ置き換えると考えてください。流れ関数 $T$ は高さ、隣り合う等値線の差 $\Delta T$ は一本の巻線が運ぶ電流に相当します。等値線が詰まる場所ほど、多くの巻線が同じ幅を通るので表面電流密度が大きくなります。連続な色分布から有限本の線を切り出す操作が、実際に巻けるコイルへ移る第一歩です。
流れ関数の等値線を有限本の巻線へ置き換え、巻線数と電流刻みの関係を見ます。
動かして確かめる順序。 まず巻線本数 $N=3$ で、連続な $T$ のどの等値線が実際の導体として選ばれるかを見ます。次に $N$ を増やす前に、線間隔と一本当たりの $\Delta T$ がどう変わるかを確かめます。$N=16$ まで増やし、離散巻線が連続な表面電流へ近づく一方、一本ごとの電流差は小さくなることを確認します。最後に、等値線が得られただけでは磁場精度は保証されず、有限断面の導体を置いてBiot--Savart則で再評価する必要がある理由を説明してください。
理解の確認
1. $\nabla_sT$ ではなく $\vec{n}\times\nabla_sT$ を表面電流に使うのはなぜでしょうか。
2. 2本の等値線 $T=T_1,T_2$ の間を横切る全電流は、$T_1-T_2$ とどう関係するでしょうか。
3. 連続流れ関数の設計後に、離散巻線でBiot–Savart再評価が必要なのはなぜでしょうか。
参考資料
- Rostislav A. Lemdiasov and Reinhold Ludwig, “A Stream Function Method for Gradient Coil Design”, *Concepts in Magnetic Resonance Part B*, 26B, 67–80 (2005).
- Sebastian Littin et al., “Methods: Of Stream Functions and Thin Wires: An Intuitive Approach to Gradient Coil Design”, *Frontiers in Physics*, 9 (2021).