3Dで学ぶ電磁気学
C-2 ローレンツ力と粒子ビーム
この回で身につける
到達目標
- $q$、$\vec v$、$\vec B$ から力の向きを判定できる。
- 磁場中の円運動半径とサイクロトロン角周波数を導ける。
- 電荷の符号、速さ、磁場の強さが軌道へ与える影響を説明できる。
前提知識
- 外積と右手系
- 等速円運動と向心力
- 磁束密度 $\vec B$ の向き
学習の順序
- 正負の電荷が曲がる向きを確かめる。
- C-2-1、C-2-2で時刻・符号・速さを変える。
- $R=mv_\perp/(|q|B)$ で軌道を説明する。
電磁気学の理解実験
磁場は粒子の速さを変えるのか、向きだけを変えるのか
観察ポイント: $\vec v\perp\vec B$ で電荷の符号、質量、速さ、磁束密度を一つずつ変え、軌道半径と回転方向がどう変わるかを確かめる。
操作: 時刻までの軌跡を追い、速度ベクトルと力ベクトルが常に直交するかを見る。$\vec v$ に $\vec B$ と平行な成分がある場合も考える。
観察した後に、仕事と運動方程式で説明する
$\vec F=q\vec v\times\vec B$ なので $\vec F\cdot\vec v=0$ となり、磁場だけでは運動エネルギーを変えない。垂直成分は半径 $r=p_\perp/(|q|B)$ の円運動、平行成分は等速運動となり、両方あればらせんになる。
別問題へ: 質量分析器や偏向電磁石では、軌道の曲率から運動量を測るのであって、磁場が粒子を加速してエネルギーを与えるのではない。
第5回では平行電流の間に働く力を現象から先に見ました。この回で学ぶ $d\vec F=I\,d\vec\ell\times\vec B$ が、その力を計算する二つの柱の一つです。次の第7回で「相手の電流が作る $\vec B$」を求めれば、第5回の式を最初から導けます。
可視化 C-2-1
一様な磁場の中を電荷を持つ粒子が進むと、速度 $\vec{v}$ と磁束密度 $\vec{B}$ の両方に垂直な向きにローレンツ力が働く。
速度が磁束密度に垂直な場合、ローレンツ力は速さを変えずに進行方向だけを曲げる。円運動の半径は $R=\dfrac{mv}{|q|B}$ で決まり、質量が大きい粒子や速い粒子ほど曲がりにくく、磁場が強いほど小さく曲がる。
磁気ローレンツ力が速度と常に直交することは、運動エネルギーの時間変化からも確認できる。
$\vec v=\vec v_{\perp}+\vec v_{\parallel}$ と分けると、$\vec v_{\perp}$ は円運動、$\vec v_{\parallel}$ は磁場方向の等速運動を作る。したがって垂直入射は円、斜め入射はらせん、平行入射は直線になる。まず磁場中を進んだ後の速さを確認し、操作後に時刻 $t$ までの軌跡、$\vec v$ と $\vec F$ の直交、仕事率 $\vec F\cdot\vec v$ を同時に照合しよう。
力はあるが仕事は0: $\vec v\perp\vec B$ では $|\vec F|=|q|vB$ ですが、$\vec F\perp\vec v$ なので $\vec F\cdot\vec v=0$ です。力は速度ベクトルの向きだけを変え、$|\vec v|$ と $K=mv^2/2$ を変えません。
平行成分を加える: $\vec v_{\parallel}$ には磁気力が働かず一定のままです。$\vec v_{\perp}$ の円運動と重なると、磁場方向へ進むらせんになります。完全に平行なら $\vec v\times\vec B=\vec0$ で、力そのものが0の直線運動です。
モデルの範囲: 一様で時間に依存しない磁場、相対論効果を無視できる正電荷、電場・重力・衝突・放射損失を無視した運動です。電荷の符号と速さによる曲率の比較は次のC-2-2で扱います。
可視化 C-2-2 講義演習:荷電粒子の符号・入射角と空間軌道
速度を磁場に垂直な $\vec v_\perp$ と平行な $\vec v_\parallel$ に分ける。
電荷の符号、速さ $v$、入射角 $\alpha$ を直接変え、空間軌道を回転して観察する。
$\vec v_\perp$ は半径 $R$ を、$\vec v_\parallel$ は1回転のピッチ $p$ を決める。符号は回転方向だけを反転する。
C-2-1は「磁場は仕事をせず速さを変えない」ことを時間に沿って確かめる図でした。C-2-2では役割を分け、同じ一様磁場の中で、速度の二成分が「円、らせん、直線」をどう作るかを3Dで読みます。固定した一方向からはらせんが円に見えることがあるため、視点変更も観察の一部です。
視点も実験条件: 斜視でらせんの奥行きを確かめた後、$\vec B$ 軸方向から見てください。同じらせんが円に重なって見えます。図が変わったのではなく、投影方向が変わっただけです。
操作後に言葉にする: $\alpha=90^\circ$、$0^\circ<\alpha<90^\circ$、$\alpha=0^\circ$ の順に動かし、どの速度成分が残ると円・らせん・直線になるかを説明しましょう。
モデルの範囲: 一様で時間不変な $\vec B$、一定の $m$と $|q|=e$、非相対論的な一個の点粒子を仮定し、電場、衝突、放射損失を含めません。青い18本の矢印は連続な一様磁場の代表標本であり、「磁場が18本だけ存在する」ことを意味しません。
例題と理解確認
数値例題
速さ $v=2.0\times10^5\,\mathrm{m/s}$ の陽子が、進行方向に垂直な $B=0.50\,\mathrm{T}$ の一様磁場へ入る。$m_p=1.67\times10^{-27}\,\mathrm{kg}$、$e=1.60\times10^{-19}\,\mathrm{C}$ とする。
軌道半径は約 $4.2\,\mathrm{mm}$ である。磁場は粒子の速さを変えず、進行方向だけを連続的に変える。
よくある誤解
- 磁気ローレンツ力は速度に垂直なので、磁場だけでは粒子の運動エネルギーを変えない。
- 負電荷では力の向きが反転するが、半径の式には $|q|$ を使う。
- $\vec v$ が $\vec B$ と平行なら、磁場が強くても磁気力は0である。
確認問題
- 初速度と磁場を保ったまま正電荷を負電荷へ替えると、軌道はどう変わるか。
- $\vec v\parallel\vec B$ の粒子にはどのような運動が生じるか。
- 速さを保って磁束密度を2倍にすると、半径 $R$ と角周波数 $\omega_c$ は何倍になるか。
問1のヒントを見る
ヒント: $q$ の符号は力の向きだけを反転する。
解答: 曲がる向きは反転し、$|q|$ が同じなら半径は変わらない。
問2のヒントを見る
ヒント: 平行な2ベクトルの外積を考える。
解答: $\vec v\times\vec B=\vec0$ なので磁気力は働かず、他の力がなければ等速直線運動を続ける。
問3のヒントを見る
ヒント: $R\propto1/B$、$\omega_c\propto B$。
解答: 半径は2分の1、角周波数は2倍になる。
今回のまとめ
- 力の向きは $q\vec v\times\vec B$ で決まる。
- 垂直入射では速さ一定の円運動となり、$R=mv/(|q|B)$ である。
- 電荷の符号は曲がる向き、質量・速さ・磁場は曲率を決める。