3Dで学ぶ電磁気学

C-8 立体角

この回で身につける

到達目標

  • 面素が張る有向立体角を距離・法線・面積から計算できる。
  • 面の位置や傾きによる立体角の変化を説明できる。
  • 磁気双極子と仮想磁気単極の閉曲面磁束を区別できる。

前提知識

  • 面積ベクトル $d\vec S=\vec n,dS$
  • 内積と射影面積
  • 電荷に対するGaussの法則

学習の順序

  1. 面を遠ざけたり傾けたりした結果を確かめる。
  2. C-8-1、C-8-2で面と場の源を動かす。
  3. $d\Omega$ と閉曲面積分で説明する。

電磁気学の理解実験

面の大きさが同じなら、立体角も同じか

観察ポイント: 面を遠ざける、傾ける、法線を反転するという三操作で、有向立体角の大きさと符号がどう変わるか。

操作: 観測点を固定したまま面を動かし、実面積ではなく単位球面上の像の面積を読む。面の表裏も意識する。

観察した後に、射影面積で説明する

$d\Omega=(\vec n\cdot\vec R)dS/R^3$ なので、遠ざけると減少し、斜めにすると射影因子で減少し、法線反転で符号が変わる。閉曲面全体では観測点が内部なら $4\pi$、外部なら0となる。

別問題へ: 立体角を単なる幾何量で終わらせず、第13回で電流ループの磁気スカラーポテンシャルへ接続する。

可視化 C-8-1

立体角は、2次元の角度を3次元に拡張した量である。観測点から見た面が、観測点を中心とする単位球面上にどれだけの面積を切り取るかで表される。

\[ \Omega=\dfrac{A_{\mathrm{sphere}}}{R^2} \]
\[ d\Omega = \dfrac{\vec{n}\cdot\vec{R}}{|\vec{R}|^3}\,dS \]

ここで面上の点を $Q$、観測点を $P$ とし、$\vec{R}=\vec{r}_Q-\vec{r}_P$ は観測点から面素へ向かうベクトル、$\vec n$ は面素の向きを定める単位法線である。この式が与えるのは法線の向きを含む有向立体角であり、見込む大きさだけを知りたい場合は $|d\Omega|$ を用いる。$A_{\mathrm{sphere}}$ は半径 $R$ の球面上に投影された面積である。半径を $R=1$ とすれば、立体角の大きさは球面上の面積そのものになる。

下の3D図では、観測点 $P$ を固定し、正方形の小面素 $dS$ の中心を距離 $R$ に置く。$\alpha$ は面法線 $\vec n$ と観測方向 $\vec R$ のなす角、$\sigma=+1$ は法線が観測点から遠ざかる向き、$\sigma=-1$ はその反転を表す。基準距離を $R_0$、$\rho=R/R_0$ とすれば、

\[ \dfrac{d\Omega}{d\Omega_0} = \sigma\,\cos\alpha\,\dfrac{1}{\rho^2}, \qquad d\Omega_0=\dfrac{dS}{R_0^2} \]

となる。3D図の黄色は $dS$ を観測方向へ射影した面積、単位球上の青または赤のパッチは有限正方形が張る立体角である。有限面は見やすさのため大きく描いているので、数値欄では微小面近似 $d\Omega$ と有限面を三角形分割して得た厳密値 $\Omega_{\mathrm{finite}}$ を区別する。

● 観測点 $P$■ 小面素 $dS$■ 射影面積 $dS_\perp$■ 正の球面パッチ■ 負の球面パッチ→ 面法線 $\vec n$
対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

距離・射影・向きの三因子を同じ式で照合する

青い距離曲線は $1/\rho^2$、橙の傾き曲線は $\cos\alpha$、中央の積は符号 $\sigma$ を含む $d\Omega/d\Omega_0$ である。「閉曲面を全部足す」では、球冠の累積立体角 $\Omega_{\mathrm{cap}}(\theta)=2\pi(1-\cos\theta)$ が $\theta=\pi$ で $4\pi$ に達することを確認する。

━ 距離因子 $1/\rho^2$━ 射影因子 $\cos\alpha$● 符号付き積━ 球冠の累積 $\Omega_{\mathrm{cap}}/(4\pi)$
対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

可視化 C-8-2 講義演習:磁気双極子と仮想磁気単極

着眼点

場の源を閉曲面の外へ移したとき、双極子と仮想単極の正味磁束はどうなるか。

操作

場の源、位置、閉曲面の傾きを変え、正負の流出入を比較する。

説明

磁束線が閉じることと $\nabla\cdot\vec B=0$ を同じ事実として説明する。

実在する磁気双極子と、比較のために置いた仮想的な磁気単極を切り替えます。磁気双極子の磁束線は必ず閉じるため、どの閉曲面でも正味の磁束は0です。仮想磁気単極を閉曲面の外へ動かすと、電荷に対するガウスの法則との違いが見えます。

\[ \oint_{\partial V}\vec B\cdot d\vec S=0 \]
\[ \nabla\cdot\vec B=0 \]
\[ \oint_{\partial V}\vec D\cdot d\vec S=Q_{\mathrm{enc}}, \qquad \oint_{\partial V}\vec B\cdot d\vec S=0 \]

磁気単極 $q_m$ が存在すると仮定した比較モデルだけは、右辺が $q_{m,\mathrm{enc}}$ になります。これは磁気単極が実在するという主張ではありません。

対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

例題と理解確認

数値例題

面積 $dS=0.010\,\mathrm{m^2}$ の小さな面を距離 $R=0.20\,\mathrm{m}$ から正面に見る。面法線と $\vec R$ が平行なら、微小面近似で

\[ d\Omega=\dfrac{\vec n\cdot\vec R}{R^3}dS =\dfrac{dS}{R^2} =\dfrac{0.010}{(0.20)^2}=0.25\,\mathrm{sr} \]

同じ距離で面を60度傾けると射影面積が $\cos60^\circ$ 倍になり、$d\Omega=0.125\,\mathrm{sr}$ となる。

よくある誤解

確認問題

  1. 面法線と観測方向が90度になると、微小面の有向立体角はどうなるか。
  2. 観測点を中心とする球面全体の立体角はいくらか。
  3. 磁気双極子を囲む閉曲面を大きくしても、正味磁束が0のままなのはなぜか。
問1のヒントを見る

ヒント: $\vec n\cdot\vec R=R\cos\theta$。

解答: $\cos90^\circ=0$ なので0になる。

問2のヒントを見る

ヒント: 半径1の球面積を思い出す。

解答: $4\pi\,\mathrm{sr}$ である。

問3のヒントを見る

ヒント: 磁束線は途中で始まったり終わったりしない。

解答: $\nabla\cdot\vec B=0$ なので、閉曲面へ入る磁束と出る磁束が必ず相殺する。

今回のまとめ