3Dで学ぶ電磁気学
C-7 トロイダルコイル
この回で身につける
到達目標
- トロイド内部の磁界が $1/r$ に比例することを導ける。
- アンペール経路の位置によって包絡電流が変わることを説明できる。
- ギャップ付き磁気回路と表面・体積電流分布を扱える。
前提知識
- アンペールの法則
- $\vec B=\mu\vec H$ と磁気抵抗
- 表面電流密度と体積電流密度
学習の順序
- 内周側と外周側の磁界を比較確かめる。
- C-7-1~C-7-3で経路・ギャップ・分布を変える。
- 包絡電流と磁気回路の式で説明する。
電磁気学の理解実験
アンペール経路を動かすと、包絡電流はなぜ $0\to NI\to0$ になるか
観察ポイント: 中心軸と同心の円形経路を内側空洞、コア内部、外側へ動かしたとき、経路が張る円板を貫く巻線電流と周方向磁界を確かめる。
操作: C-7-1で経路半径を三領域へ動かし、正向きと負向きの巻線交差、$I_{\mathrm{enc}}$、$2\pi rH$、$H/H_i$ を同じ条件で読む。
観察した後に、アンペールの法則で説明する
内側空洞では交差0、コア内部では片側の交差だけを含み $I_{\mathrm{enc}}=NI$、外側では反対向きの交差も含み正味0となる。コア内部では $H(2\pi r)=NI$ なので $H\propto1/r$ である。
別問題へ: C-7-2ではギャップへ起磁力降下が集中する磁気回路、C-7-3では表面・体積電流の連続分布を扱う。
可視化 C-7-1:経路の三領域と正味包絡電流
理想トロイダル巻線の内側半径を $r_i$、外側半径を $r_o$ とする。中心軸と同心な円形経路 $C$ が張る円板 $S(C)$ を選ぶと、巻線電流の正味交差数は経路の位置で変わる。
コア内部では包絡電流 $NI$ が一定でも経路長 $2\pi r$ が増えるため、内周直後の磁界 $H_i=NI/(2\pi r_i)$ で規格化すると
となる。アンペール経路は計算のために選ぶ閉曲線であり、磁力線そのものではない。下の3D図は一本の導線を8ターン巻いた一筆書きの代表コイルを描く。内側の緑の8交差を数えると図では $I_{\mathrm{enc}}=8I$、一般の $N$ ターンでは $I_{\mathrm{enc}}=NI$ となる。外側まで経路を広げると赤い戻り側8交差も入り、$8I-8I=0$ になる。
確認は任意です。選ばなくても経路をすぐ操作でき、確かめると診断だけを返します。
三領域を無次元グラフで照合する
青線は $I_{\mathrm{enc}}/(NI)=2\pi rH/(NI)$、橙線は $H/H_i$ を表す。緑と赤の縦線が $r_i$ と $r_o$、二つの現在点が3D図と同じ経路半径で動く。
可視化 C-7-2
鉄心に小さなギャップを入れると、磁気回路としては鉄心部と空隙部が直列につながったものとして考えられる。鉄心の透磁率が十分大きい場合、磁気抵抗はギャップに集中しやすく、磁束密度や磁界の考え方はギャップ設計に強く支配される。
下の図では、青灰色がギャップ付き鉄心、緑が励磁巻線、色付きの線が磁束線、橙が空隙を表している。極面の中央では磁束線がほぼまっすぐ空隙を横切り、端部では外側・内側の両方にふくらむ。ギャップ磁場は鉄心内の場そのものではなく、空隙で磁気抵抗が支配的になる問題として見る。
ギャップを含む磁気回路では、起磁力 $NI$ が鉄心部と空隙部に分かれて落ちる。
短い記法ではこの収支を $NI=H_c\ell_c+H_gg$ と表し、各項が鉄心とギャップの起磁力降下を表す。
鉄心の透磁率が十分大きいと、$H_{\mathrm{core}}$ は小さく、磁界の大きな部分はギャップに現れる。理想化すればギャップ中央では磁束密度 $\vec{B}$ はほぼ極面に垂直にそろうが、端部ではフリンジングにより内側・外側の両方へふくらむ。
可視化 C-7-3 講義演習:表面・体積・中空円柱電流の包絡量
経路が中空部、導体内部、導体外部にある場合、包絡電流はどう変わるか。
電流分布、内半径 $a/b$、経路半径 $r/b$ を変える。
囲んだ断面積の比から $I_{\mathrm{enc}}$ を求め、$H_\theta$ へつなぐ。
円柱電流の分布を切り替え、経路半径に応じて包絡電流と磁界がどう変わるかを確認します。中空円柱では内半径 $a$ と外半径 $b$ の間だけに一様な体積電流密度があるため、包絡電流は導体断面の面積比で増えます。
例題と理解確認
数値例題
空心トロイドで $N=200$、$I=0.30\,\mathrm{A}$、評価半径 $r=0.080\,\mathrm{m}$ とする。
空気中では $B=\mu_0H\simeq1.50\times10^{-4}\,\mathrm{T}$。同じトロイドでも内周側ほど $r$ が小さく、磁束密度が大きい。
よくある誤解
- トロイド内部の磁界は断面全体で一様ではなく、理想モデルでも $1/r$ で変化する。
- アンペール経路は計算のために選ぶ閉曲線であり、磁束線そのものではない。
- ギャップを入れても起磁力 $NI$ は同じだが、磁気抵抗が増えるため磁束は一般に減少する。
確認問題
- 同じ $NI$ で半径 $r$ を2倍にすると、理想トロイド内の $H$ は何倍になるか。
- 円形アンペール経路をトロイドの内径より内側、コア内部、外径より外側へ動かすと、包絡電流はどう変わるか。
- 同じ $NI$ の鉄心トロイドへ空隙を設けると、磁束と空隙付近の磁束線はどう変わるか。
問1のヒントを見る
ヒント: $H=NI/(2\pi r)$。
解答: 2分の1になる。
問2のヒントを見る
ヒント: 各経路が張る面を貫く巻線電流の正味量を数える。
解答: 理想化すると内径より内側では0、コア内部では $NI$、外径より外側では正負の貫通が相殺して0となる。
問3のヒントを見る
ヒント: 空隙の透磁率は鉄心より小さく、磁気抵抗が大きい。
解答: 同じ起磁力なら磁束は減少する。空隙では磁束線が外側にも広がるフリンジングが生じる。
今回のまとめ
- 理想トロイド内部では $H=NI/(2\pi r)$ で、内周側ほど強い。
- アンペール経路が囲む正味電流は、経路の位置と張る面で判定する。
- ギャップと電流分布は、磁気抵抗と包絡電流を通して場を変える。