3Dで学ぶ電磁気学

C-6 アンペールの法則

この回で身につける

到達目標

  • 対称性から有効なアンペール経路を選べる。
  • 経路が囲む電流 $I_{\mathrm{enc}}$ を数えられる。
  • 多数の平行電流が作る合成磁界を積分形と結び付けられる。

前提知識

  • 線積分 $\oint_C\vec H\cdot d\vec\ell$
  • 第7回の無限長直線電流
  • 磁界の重ね合わせと対称性

学習の順序

  1. どの経路なら $\vec H$ が一定になるか確かめる。
  2. C-6-1~C-6-4で電流数と配置を変える。
  3. 包絡電流と経路長から磁界を計算する。

電磁気学の理解実験

アンペールの法則は、どんな形の経路でも $H=I/(2\pi r)$ を与えるか

観察ポイント: 円形経路をずらした場合でも $\oint_C\vec H\cdot d\vec\ell=I_{\mathrm{enc}}$ は成り立つか。また、積分から $H$ をそのまま外へ出せるかを分けて答える。

操作: C-6-1で円周方向と半径依存を確認し、C-6-2・C-6-3では電流本数を変えて、離散電流列が電流シートの場へ近づく様子を見る。

観察した後に、積分則と対称性を分けて説明する

アンペールの積分則は任意の閉路で成り立つが、$H$ を積分の外へ出せるのは、対称性から接線方向で大きさ一定と分かる経路だけである。公式 $H=I/(2\pi r)$ は法則そのものではなく、円筒対称性を併用した結果である。

別問題へ: まず包絡電流を数え、次に対称性を点検し、最後に経路を選ぶという順序をソレノイドとトロイドでも使う。

可視化 C-6-1

直線電流のまわりにできる磁界を考えよう。電流が $+z$ 方向に流れると、磁界は電流を中心に、$+z$ 軸側から見て反時計回りに発生する。アンペールの法則は、閉じた経路に沿った磁界の積分が、その経路を貫く電流で決まることを表している。

\[ \oint_C \vec{H}\cdot d\vec{\ell}=I_{\mathrm{enc}} \]
\[ \vec{H}(\rho) = \dfrac{I}{2\pi\rho}\vec{e}_{\theta}, \qquad \vec{B}(\rho)=\mu_0\vec{H}(\rho) \]

下の図では、中央を貫く緑の矢印が直線電流、電流のまわりを回る青い矢印群が磁界の向き、黒い円形の閉曲線がアンペール経路を表している。マウス操作で回転・拡大し、電流の向きと磁界の回り方の関係を確認しよう。

対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

可視化 C-6-2 一枚の電流面:両側の磁界跳躍

同じ向きに流れる多数の平行電流を考える。ここでは、緑の導体列に電流がすべて $+y$ 方向に流れている場合を描く。一本一本の電流は自分のまわりに回転する磁界を作るが、多数並べると、それらの磁界が重なって、電流列全体が作る合成磁界として見える。

アンペール経路が $N$ 本の電流をまとめて囲む場合、包絡電流は $I_{\mathrm{enc}}=NI$ となる。下の図では、青い磁束線と青い矢印は個別電流ではなく、すべての電流が作る磁界を合成した後の場から描いている。

この図でも導線間隔 $s$ と1本あたりの電流 $I$ を固定し、列の両端へ導線を足して長さ $L\simeq(N-1)s$ を延ばします。したがって面電流密度 $K=NI/L\simeq I/s$ はほぼ一定です。観察するのは電流を強くする操作ではなく、有限列の中央部が一枚の無限電流面へ近づく過程です。

\[ I_{\mathrm{enc}} = \sum_{k=1}^{N} I_k = NI \]
\[ \vec{B}(\vec{r}) = \mu_0 \sum_{k=1}^{N} \dfrac{I}{2\pi\rho_k}\vec{e}_{\theta k} \]

理想的な無限電流面を $z=0$、表面電流を $\vec K=K\vec e_y$ とすると、両側の磁界は逆向きで、大きさはそれぞれ $K/2$ になります。

\[ \vec H^{+}=\dfrac{K}{2}\vec e_x, \qquad \vec H^{-}=-\dfrac{K}{2}\vec e_x, \qquad \vec e_z\times\left(\vec H^{+}-\vec H^{-}\right)=\vec K \]
25本
同じ電流面の上側と下側で、右手則による向きをまず図を動かして確かめてください。 両側の平均磁界と境界跳躍は、結果を確かめた後に表示します。
対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

表示値は、すべての $N$ で同じ中央標本帯を使った平均です。上側は $H_x/(K/2)$、下側は同じ規格化で負の値を示します。跳躍は $(H_x^{+}-H_x^{-})/K$、むら $\sigma$ は標本帯内の一様性の指標です。有限列では理想値から外れますが、列を伸ばすと両側の大きさと跳躍は1へ、むらは0へ近づきます。

可視化 C-6-3

2枚の平行な電流列を考える。$z=-d$ の列では電流が $+y$ 方向、$z=+d$ の列では電流が $-y$ 方向に流れているとする。これは、長いソレノイドを断面で見たときの面電流モデルに近い。教科書で内部磁界を $x$ 方向にそろえて説明する形に合わせるため、電流方向と磁界方向の取り方を入れ替えている。

2枚の電流列の間では、それぞれの列が作る磁界が $+x$ 方向に重なり、外側では弱め合いやすくなる。青い磁束線は、$z=-d$ と $z=+d$ の両方の電流列を合成した後の場から描いている。ソレノイド内部に磁束がそろいやすい理由を、このモデルで確認しよう。

この図のスライダーは、導線間隔 $s$ と1本当たりの電流 $I$ を固定し、列の両端へ導線を足して長さ $L\simeq(N-1)s$ を延ばします。したがって $K=NI/L\simeq I/s$ はほぼ一定であり、観察するのは磁界の比例増加ではなく、有限長の端効果が減って無限電流シートの極限へ近づく過程です。

\[ \vec{B}(\vec{r}) = \mu_0 \sum_{k=1}^{N} \dfrac{I_k}{2\pi\rho_k}\vec{e}_{\theta k} \]
\[ \vec{B}_{\mathrm{inside}} \simeq \mu_0 K\,\vec{e}_x, \qquad K=\dfrac{NI}{L} \]
25本×2
導線本数ではなく、K≈I/sと有限長の端効果を分けて図を動かして確かめてください。 内外の平均磁界は、結果を確かめた後に表示します。
対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

表示値は、すべての $N$ で同じ中央標本帯を使って平均した $|\vec H|/K$ です。理想的な無限シート対では内部が1、外部が0です。有限列では端部から磁界が回り込むため、途中の外部平均が単調に減るとは限りませんが、十分に列を伸ばすと0へ近づきます。なお、$L$ を固定したまま $N$ を増やす別操作では $K=NI/L$ 自体が増えるため、この実験と区別してください。

可視化 C-6-4 講義演習:対称性からアンペール経路を選ぶ

着眼点

配置を変えたとき、どの経路なら $\vec H$ が接線方向で一定になるか。

操作

単一電流、同方向電流列、逆方向の二列を切り替え、経路を選ぶ。

説明

対称性、包絡電流 $I_{\mathrm{enc}}$、有効経路長の順に式を組み立てる。

電流配置と経路半径を変え、経路が包む電流と循環の関係を比較します。

\[ \oint_C\vec H\cdot d\vec\ell=I_{\mathrm{enc}} \]
\[ H\,\ell_C=I_{\mathrm{enc}} \quad\text{は経路上で }H\text{ が一定のときに使える} \]
対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

例題と理解確認

数値例題

矩形アンペール経路のうち、磁界と平行で寄与する長さを $\ell=0.20\,\mathrm{m}$ とする。経路が $N=20$ 本、各 $I=0.50\,\mathrm{A}$ の電流を囲み、他の辺の積分が対称性により0なら、

\[ H\ell=NI, \qquad H=\dfrac{(20)(0.50)}{0.20}=50\,\mathrm{A/m} \]

空気中なら $B=\mu_0H\simeq6.28\times10^{-5}\,\mathrm{T}$ である。

よくある誤解

確認問題

  1. アンペール経路が電流を1本も囲まない場合、循環積分と局所磁界について何が言えるか。
  2. 円筒対称な無限長直線電流では、なぜ半径 $r$ の円を経路に選ぶと計算しやすいか。
  3. 同じ経路長で、囲む同方向電流の本数を2倍にすると $H$ は何倍になるか。
問1のヒントを見る

ヒント: 法則が拘束するのは閉曲線全体の積分値である。

解答: $\oint_C\vec H\cdot d\vec\ell=0$。ただし正負の寄与が相殺することがあり、局所的な磁界が0とは限らない。

問2のヒントを見る

ヒント: 回転対称性から、同じ半径上の磁界の大きさと向きを考える。

解答: 円周上で $|\vec H|$ が一定かつ接線方向なので、積分が $H(2\pi r)$ になる。

問3のヒントを見る

ヒント: $H\ell=NI$。

解答: 包絡電流が2倍になるため、$H$ も2倍になる。

今回のまとめ