3Dで学ぶ電磁気学

C-1 2本の直線導体の間に働く力

この回で身につける

到達目標

  • 電流の向きから引力・斥力を判定できる。
  • 直線電流の磁界とローレンツ力から単位長さ当たりの力を導ける。
  • 電流値と導体間距離への依存性を式と図で説明できる。

前提知識

  • 第4回の右手系と外積 $\vec a\times\vec b$
  • 電流 $I$ の向き
  • 磁束密度 $\vec B$ を、電流に力を及ぼす場として受け入れること

学習の順序

  1. 同方向・逆方向で力を確かめる。
  2. C-1-1~C-1-4で距離と向きを変える。
  3. $F/L\propto I_1I_2/d$ へ戻って説明する。

電磁気学の理解実験

磁場を作る電流と、力を受ける電流を分けて追えるか

観察ポイント: 導体1が導体2の位置に作る $\vec B_1$ を右手則で描き、その後に $I_2d\vec\ell\times\vec B_1$ から力を決める。電流反転と距離2倍の効果も確かめる。

操作: C-1-1では同じ3D図のまま $I_2$ だけを反転し、青い局所磁場と橙の相互力を分けて追う。C-1-2では固定軸の $1/d$ 曲線、C-1-3では選んだ1本に働く二力と合力を見る。

観察した後に、二段階の因果で説明する

無限直線電流の場は $B_1=\mu_0I_1/(2\pi d)$、導体2の単位長さ当たりの力は $\vec F_2/L=I_2\vec e_\ell\times\vec B_1$ である。同方向なら引力、逆方向なら斥力となり、大きさは $I_1I_2/d$ に比例する。

別問題へ: 自分自身が作る特異な場による自己力をこの式へ入れず、「他方が作る場」と「受ける電流」を明示して多導体系へ拡張する。

この回は、静磁場編の入口として「同方向なら引力、逆方向なら斥力」という現象を先に観察する回です。力の式を完全に導くには、第6回のローレンツ力と第7回のビオ・サバールの法則が必要です。ここでは結果を図を動かして使い、第7回まで終えたらこのページへ戻り、二つの法則から導き直してください。

平行な2本の直線導体に電流が流れると、それぞれの導体が作る磁界によって相手側の導体に力が働く。同じ向きの電流では引力、反対向きの電流では斥力になる。

\[ \dfrac{F}{L}=\dfrac{\mu_0 I_1 I_2}{2\pi d} \]

上式は電流の符号を含む関係である。力の大きさは $F/L=\mu_0|I_1I_2|/(2\pi d)$ とし、向きは「導体1が導体2へ作る磁場」から $I_2\vec e_z\times\vec B_1(\vec r_2)$ を順に追って決める。以下の3図は役割を分ける。C-1-1は電流反転と作用反作用、C-1-2は距離の反比例、C-1-3は二つの力のベクトル和だけを扱う。

可視化 C-1-1:電流反転で引力と斥力を切り替える

まず同方向の2本を見て、距離スライダーをゆっくり動かす。導体間隔が広がるのと同時に、相手位置の青い局所磁場と橙の相互力が一緒に弱くなることを観察する。その後に導体2の電流だけを反転し、磁場を作る側と力を受ける側を分けて追う。

\[ \dfrac{F}{L} = \dfrac{\mu_0 I_1I_2}{2\pi d} \]
\[ I_1I_2>0 \quad\Rightarrow\quad \vec{F}_1=+\dfrac{F}{L}\vec{e}_x,\qquad \vec{F}_2=-\dfrac{F}{L}\vec{e}_x \]
$d/d_0=1.00 \rightarrow B_1(\vec r_2)/B_0=1.000 \rightarrow F/F_0=1.000$
緑:電流 $I_1,I_2$ 青:各導線が単独に作る代表磁場と、相手位置での局所磁場 橙:単位長さ当たりの相互力 灰:$d=d_0$ での $B_0,F_0$ の長さ
対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

場を作る側と力を受ける側: 導体1が導体2の位置へ作る $\vec B_1(\vec r_2)$ を先に決め、次に $\vec F_2/L=I_2\vec e_z\times\vec B_1(\vec r_2)$ を求めます。自分自身が作る特異な磁場は入れません。

距離を一度だけ動かす: $B_1/B_0=d_0/d$ であり、$I_2$ を固定すれば $F/F_0=B_1/B_0$ です。3D図とC-1-2の固定軸グラフは同じ距離へ連動します。

矢印の長さを比べる: 灰色は $d=d_0$ の基準長です。青と橙は同じ尺度で $d_0/d$ 倍になるため、距離2倍では両方とも灰色の半分まで届きます。

作用反作用: 2本の力は常に大きさが等しく反対向きで、$\vec F_1+\vec F_2=\vec0$ です。$I_2$ を反転すると局所磁場 $\vec B_1$ は変わりませんが、外積の電流側が反転して引力から斥力へ変わります。

磁場の円の意味: 青い18環は、各導線が単独に作る円形磁場の空間分布を高さ3層・半径3層で示す代表線です。2本を重ね合わせた合成磁場の磁力線ではありません。

モデルの範囲: 無限に長く細い平行導体、真空、定常電流、端効果と導体半径を無視した単位長さ当たりの力です。

可視化 C-1-2 操作実験:距離を2倍にすると力は何倍か

電流を固定すると、力は距離の二乗ではなく距離そのものに反比例する。この2Dグラフは単独の断面図ではなく、C-1-1の3D配置と同じ距離スライダーへ連動する定量表示である。どちらか一方を動かし、3Dで間隔とベクトルを、固定軸で正確な比を読む。

\[ \dfrac{F}{L} = \dfrac{\mu_0 |I_1I_2|}{2\pi d} \]
\[ \dfrac{F(d)}{F(d_0)}=\dfrac{d_0}{d}, \qquad \dfrac{F(2d_0)}{F(d_0)}=\dfrac12 \]
$d/d_0=1.00 / B/B_0=F/F_0=1.000$
青:$F/F_0=d_0/d$ 橙:選択中の距離と力 灰:$d=d_0$ の基準
対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

反比例: 直線電流の磁場が $B\propto1/d$ であり、受ける力は $I_2B$ に比例するため $F/L\propto1/d$ です。点電荷間力の $1/d^2$ と混同しません。

固定軸: 青い曲線は全操作で同じ軸を使います。橙点の移動は、距離を広げると力が単調に減ることを同一尺度で示します。

可視化 C-1-3 操作実験:3本のうち1本に注目して力を合成する

正三角形の3頂点へ同じ向きの平行電流を置く。3本すべての磁力線を重ねず、選んだ1本だけについて、残り2本から受ける二つの引力とその合力を表示する。

\[ \dfrac{\vec{F}_i}{L} =\sum_{j\ne i}\dfrac{\mu_0 I^2}{2\pi |\vec{r}_j-\vec{r}_i|} \dfrac{\vec{r}_j-\vec{r}_i}{|\vec{r}_j-\vec{r}_i|} \]

3本の間隔がすべて $d$ の正三角形では、各導体に働く合力の大きさは次のようになる。

\[ \dfrac{|\vec{F}_i|}{L}=\sqrt{3}\dfrac{\mu_0 I^2}{2\pi d} \]
操作すると二つの成分力、合力、$\sqrt3$ 倍を表示します。
緑:同方向電流 橙:残り2本から受ける二力 紫:選んだ導体の合力 灰:正三角形と中心
対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

1本だけに注目: 選んだ導体が他の2本から受ける引力は大きさが等しく、なす角は $60^\circ$ です。二力の横成分が打ち消し合い、中心向き成分が加わります。

$\sqrt3$ の由来: 一対から受ける力を $F_{\mathrm{pair}}/L$ とすると、合力は $2F_{\mathrm{pair}}\cos30^\circ/L=\sqrt3F_{\mathrm{pair}}/L$ です。3本分を一度に足すのではありません。

可視化 C-1-4 講義演習:内積・外積から電流間力まで

着眼点

電流を同方向から逆方向へ変えると、導体間の磁界と力はどちらへ反転するか。

操作

外積モードで角度を変えた後、電流方向と距離 $d$ を変える。

説明

$\sin\theta$ と $1/d$ のどちらが、向きと大きさを決めるか式で分ける。

2つのベクトルのなす角を動かして内積と外積を比較したあと、2本の電流方向と距離を変え、右ねじの法則と $\vec I\times\vec B$ を同時に確認します。外積の向きは右手系で定めます。

\[ \vec a\cdot\vec b=|\vec a|\,|\vec b|\cos\theta \]
\[ |\vec a\times\vec b|=|\vec a|\,|\vec b|\sin\theta, \qquad \vec e_x\times\vec e_y=\vec e_z \]
\[ \vec B_1=\dfrac{\mu_0 I_1}{2\pi d}\,\vec e_{\theta 1} \]
\[ \dfrac{\vec F_2}{L}=I_2\vec e_I\times\vec B_1 \]
対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

例題と理解確認

数値例題

同じ向きに $I_1=2.0\,\mathrm{A}$、$I_2=3.0\,\mathrm{A}$ が流れ、導体間距離が $d=0.040\,\mathrm{m}$ のとき、単位長さ当たりの力を求める。

\[ \dfrac{F}{L} =\dfrac{(4\pi\times10^{-7})(2.0)(3.0)}{2\pi(0.040)} =3.0\times10^{-5}\,\mathrm{N/m} \]

電流は同方向なので、2本の導体には大きさ $3.0\times10^{-5}\,\mathrm{N/m}$ の引力が働く。

よくある誤解

確認問題

  1. 平行な2本の電流が同じ向きなら、導体間の力は引力と斥力のどちらか。
  2. $I_1$ と距離 $d$ を同時に2倍にし、$I_2$ を変えないとき、$F/L$ は何倍になるか。
  3. $I_1=4.0\,\mathrm{A}$、$I_2=1.5\,\mathrm{A}$、$d=0.030\,\mathrm{m}$ で電流が逆向きの場合、力の大きさと向きを求めよ。
問1のヒントを見る

ヒント: 導体1の磁界中にある導体2へ $I_2\vec e_I\times\vec B_1$ を適用する。

解答: 引力である。各導体に働く力は相手側を向く。

問2のヒントを見る

ヒント: 比例関係 $F/L\propto I_1/d$ だけを見る。

解答: $2/2=1$ なので変わらない。

問3のヒントを見る

ヒント: まず大きさへ $|I_1I_2|$ を代入し、向きは別に判定する。

解答: $F/L=4.0\times10^{-5}\,\mathrm{N/m}$。電流が逆向きなので斥力である。

今回のまとめ