3Dで学ぶ電磁気学

A-2 ベクトル場と点電荷

この回で身につける

到達目標

  • スカラー場とベクトル場の違いを、電位と電界を例に説明できる。
  • 位置ベクトル $\vec r$ と、その点での場の値 $\vec E(\vec r)$ を区別できる。
  • 点電荷の電位と電界について、向きと距離依存性を求められる。

前提知識

  • ベクトルの成分表示と大きさ
  • 距離 $r=|\vec r|$
  • 第1回の関係 $\vec E=-\nabla V$

学習の順序

  1. 場所と、その場所に割り当てられた矢印を見分ける。
  2. 等電位面と電界ベクトルを同時に観察する。
  3. $V\propto1/r$ と $|\vec E|\propto1/r^2$ を比較する。

電磁気学の理解実験

距離を2倍にしたとき、電位と電界は同じ割合で弱くなるか

観察ポイント: 点電荷からの距離を $r$ から $2r$ にすると、$V$、$|\vec E|$、半径 $r$ の球面を通る電束はそれぞれ何倍になるか。

操作: A-2-1で矢印の向き、A-2-2で球面上の矢印と球面積を一緒に見る。局所的な場の弱まりと、球面全体を通る量を分けて考える。

観察した後に、Gaussの法則で説明する

$V\propto1/r$、$|\vec E|\propto1/r^2$ なので距離2倍でそれぞれ $1/2$、$1/4$ になる。一方、球面積は4倍になるため、$\oint_S\vec D\cdot\vec n\,dS=q$ は半径によらない。

別問題へ: 「矢印が短くなること」と「源から出た総電束が減ること」を混同せず、逆二乗則を面積の増加から説明する。

着眼点

原点の正電荷から距離を2倍にしたとき、電位と電界の大きさがそれぞれ何倍になるか確かめる。

操作

A-2-1で観測点を並べた球面を広げ、すべての電界ベクトルが一斉にどう変わるかを見る。A-2-2では球面積も加え、局所的な電界と球面全体の電束を別々に確かめる。

説明

電位はスカラー、電界は方向を持つベクトルであることを $\vec E=-\nabla V$ と距離依存性から説明する。

可視化 A-2-1 — 空間の複数点に電界ベクトルを置く

ベクトル場は、位置ベクトル $\vec r_k$ を入力すると、その場所でのベクトル $\vec E(\vec r_k)$ を返す関数である。図では、原点から同じ距離にある26個の観測点を球面上に分布させ、各点を始点とする電界ベクトルを同時に置く。球の半径 $r$ をゆっくり動かし、26本が一斉に短くなることと、どの場所でも矢印が球面の外向き法線方向を保つことを観察しよう。

橙色の点 $P$ だけは、原点から点までの位置ベクトル $\vec r_P$ と、その点を始点とする場ベクトル $\vec E(\vec r_P)$ の対応を強調している。これは二つの場所を比べる図ではなく、空間の各場所に値が割り当てられることを見る図である。

数値表示は $Q=+1.0\,\mathrm{nC}$ とし、半径をメートル、電界を $\mathrm{V/m}$ で示す。

\[ \vec{r}=x\vec{e}_x+y\vec{e}_y+z\vec{e}_z \]
\[ \vec E(P_k)=\vec E(\vec r_k) =\dfrac{Q}{4\pi\epsilon_0r_k^2}\widehat{\vec r}_k, \qquad \vec E(\vec r_k)\parallel\vec n_k \]
球の半径を動かすと、すべての電界ベクトルが連動して変化します。
灰色球:原点から同じ距離にある観測点の集合 青:各点を始点とする局所電界 $\vec E(\vec r_k)$(濃い1本が $\vec E(\vec r_P)$) 橙:代表点 $P$ と位置ベクトル $\vec r_P$ 黄:$P$ での接平面(青い矢印は法線方向)
対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

読み方: 半径を変えても、26本の矢印はそれぞれの観測点を始点とし、球面の外向き法線と平行です。同じ球面上では全点の大きさが等しく、半径を広げると $1/r^2$ に従って一斉に短くなります。この球面は局所的なベクトル場を並べるための観測面です。面積と全電束はA-2-2で扱います。


可視化 A-2-2 — 球面を広げて全電束を測る

A-2-1では1点ごとの電界を見た。次は点電荷を包む仮想的なGauss球面を広げ、球面上50点の局所的な電界、球面積、球面全体を通る電束を同時に比べる。青い矢印はどの点でも外向き法線と平行で、代表点では黄色い小面積 $dS$ を垂直に貫く。半径が増すと50本が一斉に短くなるが、電束の出口となる面積は増える。

\[ V(\vec{r}) = \dfrac{Q}{4\pi\epsilon_0|\vec{r}|} \]
\[ \vec{E}(\vec{r}) = -\nabla V = \dfrac{Q}{4\pi\epsilon_0|\vec{r}|^3}\vec{r} \]
\[ \dfrac{V(R)}{V(r_0)}=\dfrac{r_0}{R},\qquad \dfrac{|\vec E(R)|}{|\vec E(r_0)|}=\left(\dfrac{r_0}{R}\right)^2,\qquad \dfrac{A(R)}{A(r_0)}=\left(\dfrac{R}{r_0}\right)^2 \]
操作すると電位・電界・面積・全電束の比を表示します。
紫:観測球面 $R$ 青:球面上50点の局所電界 $\vec E(R)$(本数は電束ではなく空間標本) 黄:小面積 $dS$ 灰:基準球面 $r_0$ と基準電界 $\vec E(r_0)$
対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

読み方: 50本は、球面の各場所に定義された局所電界を見えるように標本化したもので、矢印の本数が全電束を表すわけではありません。$R=r_0$ では観測電界と基準電界が一致するため、同じ青い矢印を $\vec E(R)=\vec E(r_0)$ と表示します。$R$ 倍で各 $|\vec E|$ は $1/R^2$、面積は $R^2$ になるため積は一定です。したがって $\Phi_D=\oint_S\vec D\cdot\vec n\,dS=Q$ は球面半径によらず保存されます。


例題と理解確認

数値例題

真空中の原点に $Q=1.0\,\mathrm{nC}$ の点電荷がある。距離 $r=0.20\,\mathrm{m}$ における電位と電界の大きさを求める。

\[ V=\dfrac{1}{4\pi\epsilon_0}\dfrac{Q}{r} =44.9\ \mathrm{V} \]
\[ |\vec E|=\dfrac{1}{4\pi\epsilon_0}\dfrac{|Q|}{r^2} =2.25\times10^2\ \mathrm{V/m} \]

$Q>0$ なので、電界は原点から観測点へ向かう放射方向である。

よくある誤解

確認問題

  1. 点電荷からの距離を3倍にすると、電位と電界の大きさはそれぞれ何倍になるか。
  2. 原点に $Q=-2.0\,\mathrm{nC}$ を置いたとき、$x=0.10\,\mathrm{m}$ の点における電界の向きと大きさを求めよ。
  3. 点電荷の等電位面が球面になり、電界がその法線方向になる理由を説明せよ。
問1のヒントを見る

ヒント: $V\propto1/r$ と $|\vec E|\propto1/r^2$ を使う。

解答: 電位は $1/3$、電界の大きさは $1/9$ になる。

問2のヒントを見る

ヒント: 大きさを計算した後、負電荷へ向かう方向を付ける。

解答: $|\vec E|=1.80\times10^3\,\mathrm{V/m}$、向きは $-x$ 方向である。

問3のヒントを見る

ヒント: 電位は距離 $r$ だけの関数である。

解答: $r$ が一定の点は球面を作り、$\nabla V$ は $r$ が最も速く変わる半径方向を向くためである。

今回のまとめ