3Dで学ぶ電磁気学

A-1 等電位面と電界のイメージ

この回で身につける

到達目標

  • 等電位面を電位の等しい点の集合として説明できる。
  • 電位の空間変化から $\vec E=-\nabla V$ を用いて電界の向きと大きさを求められる。
  • 平行平板コンデンサの電気容量を、極板面積・間隔・誘電率から計算できる。

前提知識

  • 直交座標 $(x,y,z)$ と単位ベクトル
  • 偏微分と勾配 $\nabla V$
  • 仕事と線積分 $\int\vec E\cdot d\vec\ell$

学習の順序

  1. 可視化A-1-1で、同じ距離を面に沿って進む場合と面を横切る場合の電位差を確かめる。
  2. 可視化A-1-2で一様電界の空間分布を見て、A-1-3で傾いた等電位面へ一般化する。
  3. 可視化A-1-4で極板の形状と誘電体を動かし、$C=Q/\Delta V$ へ結び付ける。

電磁気学の理解実験

等電位面だけから電界を復元できるか

観察ポイント: A-1-1の点 $P$ から同じ距離だけ進むとき、等電位面に沿う移動と面を横切る移動のどちらで電位が変わるかを図を動かして確かめる。

操作: A-1-1で接線・法線方向の $\Delta V$ を比較し、A-1-2で一様電界の分布、A-1-3で傾いた等電位面の法線を確かめる。

観察した後に、場の式で説明する

等電位面に接する変位では $dV=\nabla V\cdot d\vec\ell=0$ である。したがって $\vec E=-\nabla V$ は面に垂直で低電位側を向き、同じ電位差を短い距離で変化する場所ほど $|\vec E|$ が大きい。

別問題へ: 地形図の等高線から最急降下方向を読むのと同じ手順で、任意の等電位線図から電界を描く。

静電場の見取り図

静電場は、時間に依存しない電荷が作る電界である。電荷 $q$ を点 $A$ から点 $B$ へ動かすとき、電界がする仕事は経路ではなく両端の電位差だけで決まる。この「経路によらない」という性質が保存場の意味である。

\[ V(B)-V(A) =-\int_A^B\vec E\cdot d\vec\ell, \qquad \oint_C\vec E\cdot d\vec\ell=0 \]

単連結な領域では、閉路積分がゼロであることと回転がゼロであることが対応し、電界を一つのスカラー電位から作れる。

\[ \nabla\times\vec E=\vec0, \qquad \vec E=-\nabla V \]

電荷が場の源になることはGaussの法則で表す。線形・一様な誘電体ではPoisson方程式となり、体積電荷のない領域ではLaplace方程式になる。

\[ \nabla\cdot\vec D=\rho, \qquad \vec D=\varepsilon\vec E, \qquad \nabla^2V=-\dfrac{\rho}{\varepsilon} \]
\[ \rho=0 \quad\Longrightarrow\quad \nabla^2V=0 \]

静電平衡に達した完全導体では、導体内部の電界はゼロで導体全体が等電位になる。以後の可視化では、まず等電位面の形を見て、その面に直交して低電位側へ向かう $\vec E$ を図を動かして確かめよう。

着眼点

等電位面の色だけを見て、電界がどちらを向くかを矢印で描いてからCanvasを開く。

操作

可視化A-1-1〜A-1-3を回転し、等電位面に沿う方向と面を横切る方向を見分ける。

説明

面の法線が $\nabla V$、電界がその逆向き $-\nabla V$ になることを式で確かめる。

可視化 A-1-1 操作実験:等電位面に沿う移動と横切る移動

まずは等電位面の概念を理解しよう。

例えば,電位が$V(x,y,z)=z$で与えられるとしよう。

電位がある一定の値を取る面のことを等電位面と呼ぶ。赤は高電位、青は低電位である。点 $P$ から同じ長さ $s$ だけ、面に沿う接線方向と面を横切る法線方向へ進む。どちらで電位が変わるかを、矢印を開く前に図を動かして確かめよう。

\[ V(x,y,z)=z \]
\[ S_c=\{(x,y,z)\mid V(x,y,z)=c\} =\{(x,y,z)\mid z=c\} \]
\[ \dfrac{V}{V_0}=\dfrac{z}{L}, \qquad \nabla V=\dfrac{V_0}{L}\vec e_z, \qquad \vec E=-\nabla V \]
操作すると接線・法線方向の $\Delta V$ と電界の仕事を表示します。
橙:接線変位 $d\vec\ell_t$ 紫:法線変位 $d\vec\ell_n$ 緑:勾配 $\nabla V$ 青:電界 $\vec E=-\nabla V$
対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

可視化 A-1-2

次に電界をイメージしよう。電界は,電位の勾配に-1倍したもの$\vec{E}=-\nabla V$である。電位が急に変化する方向ほど電界は強くなり、符号のマイナスは「電位が下がる向き」に電界が向くことを表す。

可視化A-1-1の電位に対して計算してみよう。$\vec{E}=-( \displaystyle \dfrac{{\partial V }}{{\partial x}}, \displaystyle \dfrac{{\partial V }}{{\partial y}}, \displaystyle \dfrac{{\partial V }}{{\partial z}})=(0,0,-1)$となる。

下図はA-1-1と同じ3枚の等電位面、同じ色、同じ視点を保ち、接線・法線の比較を一様電界の分布へ置き換えたものである。電界はどの点でも同じなので、代表する3×3点の9本だけを描く。矢印の本数は電界の強さではなく、空間を見やすくするための表示標本数である。

\[ \vec{E} = -\nabla V = -\left( \dfrac{\partial V}{\partial x}, \dfrac{\partial V}{\partial y}, \dfrac{\partial V}{\partial z} \right) \]
\[ V=z \quad\Rightarrow\quad \vec{E}=-(0,0,1)=-\vec{e}_z \]
対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

赤・灰・青の面はA-1-1と同じ $V/V_0=+1,0,-1$ です。9本の青矢印はすべて同じ長さ・同じ $-z$ 向きで、$\vec E=-\nabla V$ と一様性を示します。


可視化 A-1-3

最後に、等電位面が座標面と平行でない場合へ一般化しよう。A-1-1、A-1-2と比較できるよう、向きだけを取り出した規格化電位を

\[ \dfrac{V}{V_0}=\dfrac{x+y+z}{\sqrt{3}L} \]

とする。勾配は3軸の正方向成分を等しく持つので、電界は3軸の負方向成分を等しく持つ。

\[ \vec{E} = -\nabla V = -\dfrac{V_0}{\sqrt{3}L} (\vec{e}_x+\vec{e}_y+\vec{e}_z), \qquad \dfrac{\vec E}{|\vec E|} =-\dfrac{\vec e_x+\vec e_y+\vec e_z}{\sqrt{3}}. \]

電界ベクトルは負の $x$、$y$、$z$ 成分を持つ斜め方向であり、どの座標軸とも一致しない。各正軸との角度は同じで、例えば $x$ 軸とは

\[ \cos\theta_x =\dfrac{\vec E\cdot\vec e_x}{|\vec E|} =-\dfrac{1}{\sqrt{3}}, \qquad \theta_x=125.3^\circ \quad(\theta_y=\theta_z=125.3^\circ) \]

である。図の中央では太い黒紺の $\vec E$ と、同じ始点から出る赤・緑・青の正軸を直接比較する。黒紺の矢印がどの軸にも重ならないことを、回転して確かめよう。シアンの8本と中央の黒紺1本は、同じ斜め方向を向く一様電界の代表9本である。

黒紺:比較する電界 $\vec E$ シアン:同じ向きの代表電界 赤:正の $x$ 軸 緑:正の $y$ 軸 青:正の $z$ 軸
対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

赤・灰・青の面はA-1-1、A-1-2と同じ $V/V_0=+1,0,-1$ です。面の法線 $\nabla V$ は斜めを向き、$\vec E=-\nabla V$ はその反対方向です。画面の上下ではなく、色分けした右手系の $x,y,z$ 軸を基準に方向を読みます。


可視化 A-1-4 平行平板コンデンサの電気容量

面積 $S$ の2枚の導体板を間隔 $d$ で平行に置き、その間を誘電率 $\varepsilon=\varepsilon_0\varepsilon_r$ の一様な誘電体で満たします。端部からの電界の回り込みを無視できるなら、板間の電界と電位差は

\[ |\vec E|=\dfrac{\Delta V}{d}, \qquad Q=\int_S\vec D\cdot\vec n\,dS =\varepsilon|\vec E|S \]

となり、電気容量は電圧そのものではなく、形状と材料で決まります。

\[ C=\dfrac{Q}{\Delta V} =\dfrac{\varepsilon_0\varepsilon_rS}{d}, \qquad W=\dfrac{1}{2}C(\Delta V)^2 \]

極板面積、間隔、比誘電率、電圧を一つずつ変えてください。$C$ が電圧には依存せず、同じ電圧でも $C$ が大きいほど多くの電荷 $Q$ を蓄えることを、極板上の電荷表示と数値で確認します。板間の矢印は電界の向きを示し、定量値は数値表示を基準にします。

操作: 「理想一様場」と「有限極板のフリンジ場」を直接切り替え、極板面積・間隔・比誘電率・電位差を一つずつ動かしてください。容量の数値は端効果を無視した理想式 $C_0=\varepsilon S/d$、端で外側へ回り込む青線はフリンジ場の形を理解するための模式表示です。

対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

青い矢印は正極板から負極板へ向く電界です。フリンジ場へ切り替えると端の青線が外側へ回り込みますが、表示する $C_0,Q_0,W_0$ は上の理想式から求めます。


例題と理解確認

数値例題

座標をメートルで表し、電位が $V(x,y,z)=50x-20z\,\mathrm{V}$ のときの電界を求める。

\[ \vec E=-\nabla V =-50\vec e_x+20\vec e_z\ \mathrm{V/m} \]
\[ |\vec E|=\sqrt{(-50)^2+20^2} =53.9\ \mathrm{V/m} \]

電界は $+x$ 方向へ進むと電位が上がるため $-x$ 成分を持ち、$+z$ 方向へ進むと電位が下がるため $+z$ 成分を持つ。

よくある誤解

確認問題

  1. $V=3x-4z\,\mathrm{V}$ のとき、$\vec E$ とその大きさを求めよ。
  2. 同じ等電位面上の2点を結ぶ経路に沿って電荷を動かすと、電界がする仕事はいくらか。
  3. $S=0.10\,\mathrm{m^2}$、$d=5.0\,\mathrm{mm}$、$\varepsilon_r=2.5$ の平行平板コンデンサの電気容量を求めよ。
問1のヒントを見る

ヒント: $x,y,z$ で偏微分してから負号を付ける。

解答: $\vec E=-3\vec e_x+4\vec e_z\,\mathrm{V/m}$、$|\vec E|=5\,\mathrm{V/m}$。

問2のヒントを見る

ヒント: 仕事は始点と終点の電位差だけで決まる。

解答: 電位差がゼロなので仕事もゼロである。

問3のヒントを見る

ヒント: $d$ をメートルへ直して $C=\varepsilon_0\varepsilon_rS/d$ を使う。

解答: $C=4.43\times10^{-10}\,\mathrm{F}=443\,\mathrm{pF}$。

今回のまとめ