3Dで学ぶ電磁気学
A-5 Gaussの法則と導体
この回で身につける
到達目標
- 閉曲面を貫く電束と内部自由電荷を結び付けられる。
- 導体内部の電界が0でも電位が0とは限らないと説明できる。
- 球対称性を使い、帯電導体球の $\vec D$、$\vec E$、$V$ を求められる。
前提知識
- 点電荷の電界
- 面の単位法線 $\vec n$
- 球面積 $4\pi r^2$
学習の順序
- 閉曲面で数える量を決める。
- 対称性から面上の電束密度を一定にする。
- 材料則と線積分から電界・電位へ進む。
電磁気学の理解実験
Gauss面を大きくすると、電束も増えるのか
観察ポイント: 球形Gauss面の半径を2倍にしたとき、面上の $|\vec D|$、面積、全電束を別々に確かめる。
操作: 導体半径と観測半径を動かし、観測点が導体内外をまたぐときの $Q_{\mathrm{enc}}$、$D_r$、$E_r$、$V$ を読む。
観察した後に、Gaussの法則で説明する
導体外では $D_r\propto r^{-2}$、球面積は $4\pi r^2$ なので積は $Q$ のままである。導体内では静電平衡により $\vec E=\vec0$ だが、電位は表面電位で一定になる。
別問題へ: 対称性のない電荷分布ではGaussの法則は成立しても、$|\vec D|$ を面積分の外へ出せない。
自由電荷に対するGaussの法則は、任意の閉曲面 $S$ について
です。半径 $a$ の導体球へ自由電荷 $Q$ を与え、外部を一様な誘電率 $\varepsilon=\varepsilon_0\varepsilon_r$ で満たすと、球対称性から
となります。基準を $V(\infty)=0$ とすれば、導体内外の電位は
です。電位は表面で連続し、導体内では一定です。
可視化 A-5-1 導体球・Gauss面・観測点
$Q$、$a$、$r$、$\varepsilon_r$ のうち、$\vec D$ と $\vec E$ を別々に変える量を選ぶ。
観測半径を導体の内外へ動かし、球面上の局所量と閉曲面全体の電束を比較する。
まず自由電荷から $\vec D$ を求め、その後で $\vec E=\vec D/\varepsilon$ を適用する。
例題と理解確認
数値例題
$a=2.0\,\mathrm{cm}$、$Q=4.0\,\mathrm{nC}$、$\varepsilon_r=2.0$ の導体球について、$r=5.0\,\mathrm{cm}$ の電界を求める。
よくある誤解
- Gauss面は実在する膜ではなく、流束を数えるための仮想的な閉曲面である。
- 導体内で $\vec E=\vec0$ でも、基準を無限遠に取った電位は一般に0ではない。
- $\oint_S\vec D\cdot\vec n\,dS=Q$ から直ちに $D=Q/S$ とできるのは、対称性で面上の法線成分が一定の場合だけである。
確認問題
- Gauss面の半径を3倍にすると、面上の $D_r$ と全電束は何倍になるか。
- $Q$ を固定して $\varepsilon_r$ を2倍にすると、$\vec D$ と $\vec E$ はどう変わるか。
- 導体内部で電位が一定になる理由を $\vec E=-\nabla V$ から説明せよ。
問1のヒントを見る
ヒント: $D_r\propto r^{-2}$ と面積 $4\pi r^2$ を分ける。
解答: $D_r$ は $1/9$、全電束は1倍のままである。
問2のヒントを見る
ヒント: 自由電荷と材料則の役割を分ける。
解答: $\vec D$ は不変、$\vec E$ は半分になる。
問3のヒントを見る
ヒント: 静電平衡では導体内の電界が0である。
解答: $\nabla V=\vec0$ なので、連結な導体内部で $V$ は位置によらず一定である。
今回のまとめ
- Gaussの法則は閉曲面を貫く電束と内部自由電荷を結ぶ。
- 対称性があれば面積分から局所場を取り出せる。
- 静電平衡の導体内部は等電位で、余剰電荷は表面に分布する。