3Dで学ぶ電磁気学

B-7 Joule損と電力収支

この回で身につける

到達目標

  • 局所的な発熱密度 $p=\vec i\cdot\vec E$ を説明できる。
  • 体積積分したJoule損と回路の $VI=I^2R$ を結び付けられる。
  • 同じ電流でも細い部分へ発熱が集中する理由を説明できる。

前提知識

  • 局所オーム則 $\vec i=\chi\vec E$
  • 電気抵抗 $R=V/I$
  • 体積積分

学習の順序

  1. 単位体積・単位時間の仕事を書く。
  2. 材料則で三つの等価な発熱式へ変形する。
  3. 導体全体で積分し回路電力と照合する。

電磁気学の理解実験

細い導線は、なぜ同じ電流でも熱くなりやすいか

観察ポイント: 電流 $I$ を一定に保って半径を半分にしたとき、電流密度 $i$ と体積発熱密度 $p$ の倍率を確かめる。

操作: 電流、抵抗率、導体半径を動かし、3D導体の色、電流密度矢印、全損失を同時に見る。

観察した後に、局所仕事率で説明する

$i=I/S$ なので半径を半分にすると断面積は $1/4$、$i$ は4倍になる。電流一定では $p=\eta i^2$ なので体積発熱密度は16倍になる。

別問題へ: 電圧一定では電流自体も抵抗とともに変わるため、何を一定にした比較かを必ず明記する。

単位体積にある電荷へ電界がする仕事率は

\[ p=\vec i\cdot\vec E =\chi|\vec E|^2 =\eta|\vec i|^2, \qquad \eta=\dfrac1\chi \]

です。等方性の受動導体では $p\ge0$ となり、電気エネルギーが熱へ変わります。導体全体では

\[ P_{\mathrm J}=\int_v\vec i\cdot\vec E\,dv =VI=I^2R=\dfrac{V^2}{R} \]

です。温度場まで求めるには、この $p$ を熱伝導方程式の熱源へ渡します。

\[ \rho_mc_p\dfrac{\partial T}{\partial t} -\nabla\cdot(k_T\nabla T)=p \]

可視化 B-7-1 電流密度と発熱の集中

\[ i=\dfrac{I}{S}=\dfrac{I}{\pi a^2} \]
\[ p=\vec i\cdot\vec E=\eta i^2, \qquad P_{\mathrm J}=\int_vp\,dv=I^2R \]

図では基準状態を $I_0=8\,\mathrm A$、$a_0=1.5\,\mathrm{mm}$、$\eta_0=1.68\times10^{-8}\,\Omega\mathrm m$ とし、

\[ \dfrac{i}{i_0}=\dfrac{I}{I_0}\left(\dfrac{a_0}{a}\right)^2, \qquad \dfrac{p}{p_0}=\dfrac{\eta}{\eta_0}\left(\dfrac{i}{i_0}\right)^2 \]

を同時に表示します。緑の矢印は導体内の 同じ20個の測定点 に置き、本数や位置を物理量の代用にしません。半径を半分にすると $i/i_0=4$、$p/p_0=16$ ですが、長さ一定の導体全体では体積も $1/4$ になるため $P_{\mathrm J}/P_{\mathrm J0}=4$ です。

着眼点

電流を2倍、半径を半分、抵抗率を2倍にしたとき、$p$ がそれぞれ何倍になるかを分けて確かめる。

操作

三つの量を動かし、20本を保ったまま変わる電流密度矢印の長さと、発熱密度を表す導体色・橙点を分けて見る。

説明

$i=I/(\pi a^2)$ と $p=\eta i^2$ を順に代入し、倍率を検算する。

緑矢印:20個の固定測定点における $\vec i(\vec r)$。矢印長は $i/i_0$ に比例橙点・導体色:体積発熱密度 $p/p_0$ の対数色目盛(温度ではない)
対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

矢印長は $i/i_0\le 6$ では同じ倍率で比例表示し、それを超える極端な条件だけ画面外への突出を防いで上限表示します。定量値は上の数値出力で読みます。橙色は熱源 $p$ であり、熱伝導を解いた温度 $T$ ではありません。

例題と理解確認

数値例題

長さ $\ell=1.0\,\mathrm m$、半径 $a=1.0\,\mathrm{mm}$、抵抗率 $\eta=1.68\times10^{-8}\,\Omega\mathrm m$ の銅線へ $I=10\,\mathrm A$ を流す。

\[ R=\dfrac{\eta\ell}{\pi a^2}=5.35\times10^{-3}\,\Omega, \qquad P=I^2R=0.535\,\mathrm W \]

よくある誤解

確認問題

  1. 電流密度を2倍にすると $p$ は何倍になるか。
  2. 同じ電流で導体半径を2倍にすると $p$ は何倍になるか。
  3. $\int_v\vec i\cdot\vec E\,dv=VI$ が成り立つ物理的意味を説明せよ。
問1のヒントを見る

ヒント: $p=\eta i^2$。

解答: 4倍になる。

問2のヒントを見る

ヒント: 断面積は半径の2乗、$p$ は電流密度の2乗に比例する。

解答: 断面積が4倍、電流密度が $1/4$ なので、$p$ は $1/16$ になる。

問3のヒントを見る

ヒント: 局所的な単位体積当たりの仕事率を全体で足す。

解答: 導体内の全電気的仕事率と、端子から入る回路電力が等しいことを表す。

今回のまとめ