3Dで学ぶ電磁気学
B-6 定常電流場と静電場
この回で身につける
到達目標
- 定常電流場と電荷のない静電場が同じ形の方程式を満たすことを説明できる。
- 抵抗問題と静電容量問題の対応関係を利用できる。
- 平行平板、同軸円筒、同心球の抵抗と静電容量を比較できる。
前提知識
- 定常電流の連続の式
- Gaussの法則
- 円筒座標・球座標での対称性
学習の順序
- 二つの場の支配方程式を並べる。
- 材料定数と源量の対応を作る。
- 同じ形状で $R$ と $C$ を計算する。
電磁気学の理解実験
電流線と電束線が同じ形になるのは、いつまでか
観察ポイント: 同じ形状・同じ境界電位で $\chi$ と $\varepsilon$ を置き換えたとき、線の形、流束の大きさ、時定数 $RC$ のどれが幾何形状に依存するか。
操作: 平行平板、同軸円筒、同心球を切り替え、$R$ と $C$ は変わっても積 $RC$ がどうなるかを見る。
観察した後に、支配方程式で説明する
受動領域で $\nabla\times\vec E=0$、$\nabla\cdot(\chi\vec E)=0$ または $\nabla\cdot(\varepsilon\vec E)=0$ を同じ境界条件で解くため、係数が一様なら線の形は一致する。均質材料では $RC=\varepsilon/\chi$ となり幾何因子が消える。
別問題へ: 時間変化磁界がある場合や、$\chi(\vec r)$ と $\varepsilon(\vec r)$ の空間分布が対応しない場合には、この類推を使わない。
電荷がない領域の静電場と、電荷が時間変化しない定常電流場を並べる。どちらも電界は保存場であり、流束を表す量の発散がゼロになる。
この対応は、比較する受動領域内で $\partial\vec B/\partial t=\vec0$ かつ電源の非静電的な力がない場合に限る。時間変化磁界がある渦電流場では
となるため、$\vec E=-\nabla V$ だけでは表せず、以下の静電場との対応をそのまま使うことはできない。
したがって、同じ形状・同じ境界電位で、導電率 $\chi$ を誘電率 $\varepsilon$ に置き換えると、電流線と電束線は同じ形になる。
可視化 B-6-1 共通形状因子が抵抗と静電容量で打ち消し合う
電位差を $V_0$ とすると $R=V_0/I$、$C=Q/V_0$ である。平行平板では面積 $S$ と間隔 $d$、同軸円筒では単位長さ当たりの内半径 $a$ と外半径 $b$、同心球では半径 $a,b$ を用いる。
どの形状でも幾何学因子が打ち消し合い、同一領域を同じ電極で挟んだ理想問題では次の関係が成り立つ。
これは場が緩和する代表時間である。導体中に残った自由電荷が消える速さと、抵抗と静電容量の積が同じ物理を表している。
ここで、三つの形状に対する抵抗側の幾何因子を
と書く。同じ形状内の基準値 $g_0$ に対し $\widehat g=g/g_0$、$\widehat\chi=\chi/\chi_0$、$\widehat\varepsilon=\varepsilon/\varepsilon_0$ とおけば、単位の異なる三形状を無理に直接比較せず、各形状での変化率を同じ式で読める。
材料を固定して $\widehat g$ を1から1.5へ増やしたとき、$\widehat R$、$\widehat C$、$\widehat\tau$ を同時に確かめる。
三形状、$\widehat g$、$\widehat\chi$、$\widehat\varepsilon$ を変え、共通形状3Dと固定軸グラフを同期する。
$R$ と $C$ に逆向きに入る幾何因子と、$RC$ に残る材料比 $\varepsilon/\chi$ を分けて読む。
任意の確認:材料を固定して $\widehat g$ を1から1.5へ増やすと?
確認は任意です。先に考えても、すぐ下の操作から確かめても構いません。すぐ表示すると結果を隠さずに診断だけを返します。
確認しなくても全操作を使えます。$R=g/\chi$ と $C=\varepsilon/g$ を動かしながら確かめてください。
同じ $\widehat g$ で $\widehat R$、$\widehat C$、$\widehat\tau$ を追う
例題と理解確認
数値例題
面積 $S=0.020\,\mathrm{m^2}$、間隔 $d=1.0\,\mathrm{mm}$ の平行平板間を、$\chi=2.0\times10^{-10}\,\mathrm{S/m}$、$\varepsilon=4\varepsilon_0$ の物質で満たす。
積は $RC=0.177\,\mathrm s=\varepsilon/\chi$ となる。
よくある誤解
- 二つの問題で同じなのは場の形であり、電流密度と電束密度の単位や物理的意味は異なる。
- 周期定常な渦電流場は、ここでいう直流の定常電流場ではない。時間変化磁束があれば電界は非保存である。
- $RC=\varepsilon/\chi$ は、同じ形状・電極・一様材料という対応条件を外すとそのまま使えない。
- 静電場に自由電荷が全くないのではなく、ここでは電極間の体積領域に自由電荷がないと仮定している。
確認問題
- 同じ形状で導電率を2倍にすると $R$、$C$、$RC$ はどう変わるか。
- 同軸円筒の外半径 $b$ を大きくすると、$R$ と $C$ はそれぞれどう変わるか。
- 電流線と電束線が同じ形になるための仮定を二つ挙げよ。
問1のヒントを見る
ヒント: $R\propto1/\chi$、$C$ は $\chi$ を含まない。
解答: $R$ と $RC$ は半分になり、$C$ は変わらない。
問2のヒントを見る
ヒント: $\log(b/a)$ の位置を見る。
解答: $R$ は増え、$C$ は減る。
問3のヒントを見る
ヒント: 支配方程式と境界条件を比べる。
解答: 例として、一様・等方性材料であること、同じ電極形状と境界電位を使うこと、領域内に電荷源・電流源がないこと。
今回のまとめ
- 定常電流場と電荷のない静電場は同型の境界値問題になる。
- $\vec i\leftrightarrow\vec D$、$\chi\leftrightarrow\varepsilon$ の対応が使える。
- 同じ形状では $RC=\varepsilon/\chi$ となり、幾何学因子が消える。