3Dで学ぶ電磁気学

B-8 Laplace方程式と電極設計

この回で身につける

到達目標

  • 一様導体の受動領域で電位がLaplace方程式を満たすと説明できる。
  • 有限円形電極の近傍で電流密度が集中する理由を電位面と電流線から読める。
  • 固定電流では、導電率が電流密度でなく必要電界・電圧・発熱を変えると説明できる。

前提知識

  • 電荷保存 $\nabla\cdot\vec i=0$
  • 局所オーム則
  • 2次元の対数ポテンシャル

学習の順序

  1. 支配方程式と有限電極の境界条件を分ける。
  2. 電流の入口・有限電極・薄板内の分布を3Dで追う。
  3. 形状、注入電流、導電率が何を変えるかを分ける。

電磁気学の理解実験

電極を小さくすると、電流は板全体へ均等に広がるのか

観察ポイント: 同じ電流を狭い電極から注入すると、電極近傍と中央部の電流密度がどう変わるかを確かめる。

操作: 電極間隔、有限電極半径、注入電流、導電率を一つずつ動かし、3Dの電流ベクトルと固定尺度の電位色で「変わる量」と「変わらない量」を追う。

観察した後に、Laplace方程式で説明する

電極を除く領域では $\nabla\cdot\vec i=0$ と $\vec i=-\chi\nabla V$ から $\nabla^2V=0$ である。有限円形電極は等電位境界であり、その近傍では $|\nabla V|$ と $|\vec i|$ が大きくなる。

注入電流 $I$ を固定すると $\vec i$ は形状と $I$ で決まり、$\chi$ を変えても電流ベクトルは変わらない。一方、$\vec E=\vec i/\chi$、$\Delta V$、$p=|\vec i|^2/\chi$ は変わる。

別問題へ: 有限板、複雑な電極、空間的に変化する導電率では、同じ支配方程式をFEMなどで解く。

一様な薄板の受動領域では

\[ \nabla\cdot\vec i=0, \qquad \vec i=-\chi\nabla V \quad\Longrightarrow\quad \nabla^2V=0 \]

です。厚さ $t$ の無限薄板に、中心間隔 $d$、半径 $a<d/2$ の二つの等電位円形電極を置きます。左電極から $+I$ を注入し、右電極で $-I$ を回収するとき、

\[ b=\sqrt{\left(\dfrac d2\right)^2-a^2}, \qquad \tau_0=\operatorname{arcosh}\dfrac{d}{2a}, \qquad \tau(x,y)=\dfrac12\ln\dfrac{(x+b)^2+y^2}{(x-b)^2+y^2} \]

とおくと、双極座標による有限電極の厳密解は

\[ V(x,y)=-\dfrac{I}{2\pi\chi t}\tau(x,y), \qquad \vec i(x,y)=\dfrac{I}{2\pi t}\nabla\tau(x,y), \qquad R=\dfrac{\tau_0}{\pi\chi t} \]

です。したがって、固定した形状と注入電流では $\vec i$ は $\chi$ に依存しません。電界と体積発熱密度は

\[ \vec E=\dfrac{\vec i}{\chi}, \qquad p=\vec i\cdot\vec E=\dfrac{|\vec i|^2}{\chi} \]

です。$d/a\gg1$ の極限では $\tau_0\simeq\ln(d/a)$ となり、点電極近似 $R\simeq\ln(d/a)/(\pi\chi t)$ へ移ります。

可視化 B-8-1 薄板上の二電極と電流集中

\[ \nabla\cdot\vec i=0, \qquad \vec i=-\chi\nabla V, \qquad R=\dfrac{1}{\pi\chi t}\operatorname{arcosh}\dfrac{d}{2a} \]
着眼点

$a$ と $d$ は分布の形、$I$ は矢印長、$\chi$ は固定電流に必要な電位色をどう変えるか確かめる。

操作

斜視で端子電流が有限電極から薄板へ広がる様子を見て、上面図で同じ状態の電位色と70本の電流ベクトルを読む。

説明

橙の入力 $\vec r_P$ と水色の出力 $\vec i(\vec r_P)$、周囲の分布を対応させ、電流線を電子一個の軌跡と区別する。

斜視:端子電流、有限電極、薄板内の広がりを読む
緑:18本の電流線(粒子軌跡ではない)と70点の $\vec i(\vec r)$。矢印長は全状態で共通尺度、上限超過時だけ頭打ち面の色:電位 $V$ の固定尺度 $-1$~$+1\,\mathrm{mV}$。範囲外は飽和橙 $\vec r_P$:位置入力 水色 $\vec i(\vec r_P)$:その点での出力
対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

例題と理解確認

数値例題

$t=1.0\,\mathrm{mm}$、$\chi=2.0\times10^6\,\mathrm{S/m}$、$d=6.0\,\mathrm{cm}$、$a=1.5\,\mathrm{mm}$ とする。

\[ R=\dfrac{1}{\pi\chi t}\operatorname{arcosh}\dfrac{d}{2a} =5.87\times10^{-4}\,\Omega \]

$I=3.0\,\mathrm A$ なら $\Delta V\simeq1.76\,\mathrm{mV}$ です。

よくある誤解

確認問題

  1. 電極を除く領域で $\nabla^2V=0$ となる導出を書け。
  2. 電極半径 $a$ を大きくすると厳密抵抗はどう変わるか。
  3. 固定 $I$ で $\chi$ を2倍にしたとき、$\vec i$、$\vec E$、$\Delta V$、$p$ はどう変わるか。
問1のヒントを見る

ヒント: 電荷保存と局所オーム則へ $\vec E=-\nabla V$ を代入する。

解答: $0=\nabla\cdot\vec i=-\chi\nabla^2V$ なので、一様で $\chi\ne0$ なら $\nabla^2V=0$。

問2のヒントを見る

ヒント: $\operatorname{arcosh}(d/(2a))$ を見る。

解答: $a$ を大きくすると $d/(2a)$ と $\tau_0$ が小さくなり、抵抗は減少する。

問3のヒントを見る

ヒント: 固定電流では $\vec i=I\nabla\tau/(2\pi t)$ である。

解答: $\vec i$ は不変、$\vec E$、$\Delta V$、$p$ はすべて $1/2$ になる。

今回のまとめ