3Dで学ぶ電磁気学

B-4 電源と起電力

この回で身につける

到達目標

  • 静電界だけでは閉回路に定常電流を流し続けられない理由を説明できる。
  • 電源内部の非静電的な力と、時間変化磁界が作る誘導電界を区別できる。
  • 起電力を単位電荷当たりの仕事として表し、電源特性と負荷線から動作点を求められる。

前提知識

  • 電位差と線積分
  • オームの法則
  • Faradayの電磁誘導則

学習の順序

  1. 保存的な静電界の性質を確認する。
  2. 電源内部の力と誘導電界を分ける。
  3. 電源と負荷の式を同時に満たす点を探す。

電磁気学の理解実験

電池は「電位が一周して増える」という矛盾を作るのか

観察ポイント: 負荷抵抗 $R$ を大きくしたとき、電流、端子電圧、負荷で消費する電力が単調にどう変わるかを確かめる。

操作: 電源特性と負荷線の交点を動かし、回路図では電源内部と受動導体を別の領域として追う。

観察した後に、仕事と電力収支で説明する

受動導体内の静電界は保存的で、電源内部だけが非静電的な作用で電荷を高電位側へ戻す。線形回路では $\mathcal E=I(R+r)$、電力は $\mathcal EI=I^2R+I^2r$ と収支する。

別問題へ: 誘導電界の $\oint\vec E\cdot d\vec\ell=-d\mathit{\Phi}_B/dt$ と、電池内の非静電力を同じ「非保存電界」と呼ばない。

静電界 $\vec E_{\mathrm e}$ は電位 $V$ の勾配で表される保存場である。このため、静電界だけを閉じた経路に沿って一周積分しても仕事は残らない。

\[ \vec E_{\mathrm e}=-\nabla V, \qquad \nabla\times\vec E_{\mathrm e}=\vec0, \qquad \oint_C \vec E_{\mathrm e}\cdot d\vec\ell=0 \]

それでも電池をつないだ回路に電流が流れ続けるのは、電源内部で化学作用などの非静電的な力 $\vec f_{\mathrm s}$ が電荷を低い電位から高い電位へ戻すからである。$\vec f_{\mathrm s}/q$ は電界ではなく、電源が電荷へ与える力を単位電荷当たりに直した量である。電源作用が存在する部分を $C_{\mathrm s}$ とすると、起電力 $\mathcal E$ は

\[ \mathcal E =\int_{C_{\mathrm s}}\dfrac{\vec f_{\mathrm s}}{q}\cdot d\vec\ell =\oint_C\left( \vec E_{\mathrm e}+\dfrac{\vec f_{\mathrm s}}{q} \right)\cdot d\vec\ell \]

と書ける。最後の等号では、静電界の閉路積分がゼロであることを使った。つまり「回路を一周して電位が増える」のではなく、電源内部で非静電的な作用がエネルギーを供給し、受動導体内の保存的な電界がそのエネルギーをJoule熱へ渡す。

一方、時間変化する磁束が作る誘導電界 $\vec E_{\mathrm{ind}}$ は、Maxwell方程式に現れる電界そのものが非保存場である。

\[ \nabla\times\vec E_{\mathrm{ind}} =-\dfrac{\partial\vec B}{\partial t}, \qquad \oint_C\vec E_{\mathrm{ind}}\cdot d\vec\ell =-\dfrac{d\mathit{\Phi}_B}{dt} \]

したがって、直流の定常電流場と渦電流場は同じではない。周期定常な渦電流解析は波形が繰り返す「定常状態」ではあっても、各時刻で $\partial\vec B/\partial t\ne\vec0$ なので、電界を単一の静電ポテンシャルだけでは表せない。

作用保存性閉路積分
静電界 $\vec E_{\mathrm e}$保存場$\oint_C\vec E_{\mathrm e}\cdot d\vec\ell=0$
電源内部の $\vec f_{\mathrm s}/q$非静電的な作用電源部分の積分が起電力 $\mathcal E$
誘導電界 $\vec E_{\mathrm{ind}}$非保存場$-d\mathit{\Phi}_B/dt$

起電力は「電流」でも機械的な「力」でもなく、電源が単位電荷へ供給できるエネルギーであり、単位は $\mathrm V$ である。内部抵抗 $r$ を持つ線形電源では端子電圧が $V=\mathcal E-rI$ となり、負荷抵抗 $R$ の式 $V=RI$ と同時に満たす点が実際の動作点になる。以下の可視化では、従来の記号 $U$ を起電力の数値として用いる。

可視化 B-4-1 電源特性と負荷線

実在の電源は大電流で端子電圧が直線から外れる場合がある。ここでは内部電圧降下を $rI+kI^2$ と近似し、電源特性と負荷線の交点を求める。

\[ V_{\mathrm s}(I)=U-rI-kI^2, \qquad V_{\mathrm L}(I)=RI \]
\[ kI^2+(r+R)I-U=0, \qquad I=\dfrac{-(r+R)+\sqrt{(r+R)^2+4kU}}{2k} \quad (k>0) \]

交点では、電源が供給する電力が負荷で使われる電力と電源内部の損失へ分かれる。

\[ UI=RI^2+rI^2+kI^3 \]

ただし、負荷抵抗を大きくすると負荷電力 $P_{\mathrm L}=RI^2$ が単調に増えるわけではない。同じ $U,r,k$ で $R$ だけを掃引すると、

\[ P_{\mathrm L}=I\left(U-rI-kI^2\right), \qquad \dfrac{dP_{\mathrm L}}{dI}=U-2rI-3kI^2 \]

である。従って最大電力点は

\[ I_{\mathrm{mp}}= \begin{cases} \dfrac{U}{2r},&k=0,\\[4pt] \dfrac{-2r+\sqrt{4r^2+12kU}}{6k},&k>0, \end{cases} \qquad R_{\mathrm{mp}}=r+2kI_{\mathrm{mp}} \]

となる。$k=0$ では $R_{\mathrm{mp}}=r$ という線形電源の最大電力伝送条件へ戻る。下の電力曲線は、表示中の $U,r,k$ を固定して $1\le R\le20\,\Omega$ を掃引した比較である。

着眼点

固定した $U=12\,\mathrm V, r=2\,\Omega, k=0.15$ で、$R$ を1から20へ増やすと負荷電力がどう変わるか選ぶ。

操作

操作すると、青の電源特性、橙の負荷線、緑の動作点、紫の $P_{\mathrm L}(R)$ を同時に動かす。

説明

交点の二式、電源電力の分配、緑の最大電力点を数値と固定掃引軸で照合する。

まず、負荷抵抗を大きくすると負荷電力がどう変わるか図を動かして確かめてください。
操作すると、二つの特性と電力分配を数値で比較します。
対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

例題と理解確認

数値例題

$U=12\,\mathrm{V}$、$r=2\,\Omega$、$R=4\,\Omega$、$k=0$ の線形電源では、

\[ I=\dfrac{U}{r+R}=2.0\,\mathrm{A}, \qquad V=RI=8.0\,\mathrm{V} \]

となる。供給電力 $24\,\mathrm{W}$ のうち、負荷で $16\,\mathrm{W}$、内部抵抗で $8\,\mathrm{W}$ が消費される。

よくある誤解

確認問題

  1. 保存的な静電界の閉路積分がゼロになる理由を、電位を用いて説明せよ。
  2. $U=9\,\mathrm V$、$r=1\,\Omega$、$R=2\,\Omega$ の電流と端子電圧を求めよ。
  3. 負荷抵抗を大きくしたとき、動作点が電源特性上をどちらへ移動するか説明せよ。
問1のヒントを見る

ヒント: $\vec E_{\mathrm e}=-\nabla V$ を経路積分する。

解答: 始点と終点が同じため電位差がゼロとなり、$\oint_C\vec E_{\mathrm e}\cdot d\vec\ell=0$ である。

問2のヒントを見る

ヒント: $I=U/(r+R)$。

解答: $I=3\,\mathrm A$、$V=RI=6\,\mathrm V$。

問3のヒントを見る

ヒント: 負荷線 $V=RI$ の傾きを見る。

解答: 負荷線が急になり、交点は小電流・高端子電圧側へ移る。

今回のまとめ