3Dで学ぶ電磁気学
B-2 電流密度と局所オーム則
この回で身につける
到達目標
- 電流密度を向きと大きさを持つベクトル場として扱える。
- 任意の面を横切る電流を面積分で求められる。
- 局所オーム則から電界と電流密度を結び付けられる。
前提知識
- 面の単位法線 $\vec n$
- ベクトルの内積
- 円板の極座標積分
学習の順序
- 微小面を通る電流を定義する。
- 面の傾きと内積を対応させる。
- 分布する電流密度を積分する。
電磁気学の理解実験
「面を傾ける」と「導線を斜めに切る」は同じか
観察ポイント: 一様な導線を、電流に垂直な断面から60度傾けて斜めに切る。その切断面を通る全電流が、1倍、1/2倍、2倍のどれになるか選ぶ。
操作: 固定面積パッチと、同じ導線の斜め切断面を切り替える。$\vec i\cdot\vec n$、実面積、その積を別々に追う。
観察した後に、二つの面の違いを説明する
固定面積パッチでは $S=S_0$ のまま法線成分が $\cos\theta$ に減るため、$I/(i_0S_0)=\cos\theta$ となる。一方、同じ導線の斜め切断面は $S_{\mathrm{cut}}=S_0/\cos\theta$ に広がる。そのため $\cos\theta$ と $1/\cos\theta$ が打ち消し合い、全電流は保存される。
別問題へ: 断面内の $i(r)$ が非一様なら、中心値に全面積を掛けず、円環面素 $2\pi r\,dr$ ごとに積分する。
教科書では電流密度を $\vec i$、導電率を $\chi$ と書く。一般の文献で使われる $\vec J$、$\sigma$ と同じ量である。この教材では講義資料に合わせて $\vec i$ と $\chi$ を用いる。
電流密度は、電流の向きへ向くベクトルである。電流に垂直な微小面積 $\Delta S$ を電流 $\Delta I$ が通過するとき、その大きさを次で定義する。
面が傾いている場合、通過する量を拾うのは法線方向成分である。したがって、任意の面 $S$ を通る電流はベクトル場のフラックスとして表される。
微視的な位置ごとにもオームの法則が成り立つ。等方性材料では $\vec i$ と $\vec E$ は同じ向きで、比例係数が導電率である。磁場中の導体や異方性材料では、$\chi$ をテンソルとして扱う場合がある。
可視化 B-2-1 固定面の流束と斜め切断面の保存電流
同じ角度 $\theta$ でも、何を固定したかで結果は異なる。任意に置いた面積 $S_0$ のパッチと、同じ導線を切る斜め断面を分けて考える。
60度の斜め切断面で、法線成分の1/2だけを見ずに全電流を確かめる。
固定面と導線の切断面を比較し、法線反転と非一様分布を別ケースで確かめる。
$\vec i\cdot\vec n$、$S$、$I$ の3量を分け、「方向を変えた」ときに面積まで変わるかを式へ戻って確認する。
操作実験:同じ導線を60度斜めに切ると、通過する全電流は?
法線成分と切断面積の両方がどう変わるか図を動かして確かめてください。
法線成分×実面積を分けて追う
例題と理解確認
数値例題
半径 $a=2.0\,\mathrm{mm}$ の導線を $I=10\,\mathrm{A}$ が一様に流れるとき、
となる。断面積を平方ミリメートルのまま代入しない。
よくある誤解
- 電流密度は「電流を面積で割ったスカラー」ではなくベクトルである。
- 固定面積パッチを傾ける場合と、同じ導線を斜めに切って面積自体が増える場合を混同しない。
- 有向法線を反転すると面積と物理的な流れは変わらないが、積分値の符号は反転する。
- $I$ が一定でも、断面内の $i(r)$ が一様とは限らない。
確認問題
- 一様な $\vec i$ に対して面の法線が直交するとき、通過電流はいくらか。
- 面の向きを反転して $\vec n\to-\vec n$ とすると積分値はどうなるか。
- $i(r)=i_0[1-(r/a)^2]$ を円形断面で積分せよ。
問1のヒントを見る
ヒント: $\cos90^\circ$ を考える。
解答: $I=0$。
問2のヒントを見る
ヒント: 内積は法線の符号に比例する。
解答: 大きさは同じで符号が反転する。
問3のヒントを見る
ヒント: $dS=2\pi r\,dr$。
解答: $I=\pi i_0a^2/2$。
今回のまとめ
- 電流密度はベクトル場である。
- 通過電流は $\int_S\vec i\cdot\vec n\,dS$ で求める。
- 局所オーム則は $\vec i=\chi\vec E$ である。