3Dで学ぶ電磁気学

B-1 電流と電気抵抗

この回で身につける

到達目標

  • 電流を単位時間に通過する電荷として説明できる。
  • 定常状態で全電流 $I$ が各断面で保存されることを説明できる。
  • 断面積・温度・電圧の効果を分けて、$i(x)$、$E(x)$、電圧降下を説明できる。

前提知識

  • 電位差と電荷
  • 直列接続では抵抗を加えること
  • 一次関数と定積分

学習の順序

  1. 電荷の流れから電流を定義する。
  2. 微小区間の抵抗を足し合わせる。
  3. 形状だけ・温度だけ・電圧だけを順に比較する。

電磁気学の理解実験

細い場所では、電流そのものが減るのか

観察ポイント: 定常状態の先細り導体で、断面ごとの $I$、$|\vec i|$、$|\vec E|$、単位長さ当たりの電圧降下をそれぞれ確かめる。

操作: まず形状だけを変えた場合を確かめる。操作後に「形状だけ」「温度だけ」「電圧だけ」を切り替え、同じ位置プローブで全電流と局所量を見比べる。

観察した後に、数値と連続の条件を照合する

電荷が蓄積しない直列経路では各断面を通る $I$ は同じである。したがって $|\vec i|=I/S(x)$ と $|\vec E|=\eta(x)|\vec i|$ は断面積や抵抗率に応じて位置で変わり、$-dV/dx=E(x)$ により電位は $E$ の大きい場所ほど急に下がる。

別問題へ: 平均断面積を公式へ代入せず、局所抵抗 $dR=\eta(x)dx/S(x)$ を積分してボトルネックの寄与を評価する。

電流は、ある断面を通過する電荷の時間変化率である。電荷 $\Delta Q$ が時間 $\Delta t$ に通過するとき、平均電流は $\Delta Q/\Delta t$ である。時間間隔を小さくすると瞬時値になる。

\[ I=\lim_{\Delta t\to0}\dfrac{\Delta Q}{\Delta t}=\dfrac{dQ}{dt} \]

長さ $\ell$、断面積 $S$、抵抗率 $\eta$ が一定なら、電気抵抗は $R=\eta\ell/S$ である。しかし、断面積や抵抗率が位置で変わる導体では、この公式へ平均断面積を入れるだけでは正しくない。電流方向を $x$ とし、厚さ $dx$ の微小抵抗を直列に足す。

\[ dR=\dfrac{\eta(x)}{S(x)}\,dx, \qquad R=\int_0^{\ell}\dfrac{\eta(x)}{S(x)}\,dx \]

温度差が大きすぎない金属では、抵抗率の温度依存性を一次式で近似できる。温度上昇によって格子振動が強くなり、自由電子の移動が妨げられることが金属の抵抗増加につながる。

\[ \eta(T)=\eta_0\left[1+\alpha_0(T-T_0)\right], \qquad R(T)=R_0\left[1+\alpha_0(T-T_0)\right] \]

可視化 B-1-1 断面と温度が変わる導体の抵抗

断面積を $S(x)=S_0[1+(k-1)x/\ell]$ とする。$k>1$ なら右へ向かって太くなり、同じ電流が流れると電流密度は細い側ほど大きい。さらに温度を $T(x)$ として、抵抗率も位置ごとに変化させる。

\[ T=T(x),\qquad \eta(x)=\eta_0\left[1+\alpha_0\{T(x)-T_0\}\right],\qquad R=\int_0^{\ell}\dfrac{\eta(x)}{S(x)}\,dx \]
\[ I=\dfrac{V}{R}, \qquad i(x)=\dfrac{I}{S(x)}, \qquad E(x)=\eta(x)i(x)=-\dfrac{dV}{dx} \]

$\xi=x/\ell$、$R_0=\eta_0\ell/S_0$、$I_0=V_0/R_0$ とおく。温度を $T(\xi)=T_0+\Delta T\,\xi$ とすれば、可視化は次の無次元量を同じ位置で照合する。

\[ \frac{R}{R_0}=\int_0^1\frac{1+\alpha_0\Delta T\,\xi}{1+(k-1)\xi}\,d\xi, \quad \frac{i(\xi)}{i_0}=\frac{I/I_0}{1+(k-1)\xi}, \quad \frac{E(\xi)}{E_0}=\frac{I}{I_0}\frac{1+\alpha_0\Delta T\,\xi}{1+(k-1)\xi} \]
着眼点

一様温度で右端の断面積だけを2倍にしたとき、左右の $I$、$i$、$E$ を区別して確かめる。

操作

標準ケースを一つずつ開き、位置 $\xi_p$ を動かして3D断面と位置グラフの黄色線を同期する。

説明

$I$ は直列経路で保存される一方、$i=I/S$ と $E=\eta i$ は局所量である。$dR/dx=\eta/S$ の大きい場所ほど電圧が急に下がる。

操作実験:右端の断面積を2倍にすると、左右の量はどうなるか

━ 全電流 $I$(各断面で同じ長さ)━ 局所電流密度 $i(\xi_p)$━ 局所電場 $E(\xi_p)$■ 位置プローブ導体色:青 $T_0$ → 赤 $T_0+\Delta T$
対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

同じ位置で局所量と累積電圧降下を照合する

━ $I/I_0$━ $i/i_0$━ $E/E_0$━ $(dR/dx)/(R_0/\ell)=\eta S_0/(\eta_0S)$━ 累積電圧降下 $\Delta V(\xi)/V$│ 現在位置 $\xi_p$
対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

式を使う前に書くこと

計算では、電流の向き、その向きに垂直な断面積、導体の長さ、端部効果を無視するかを先に定義する。法則名、座標系、変数の単位も明記する。式だけを並べず、「どの微小抵抗を、なぜ直列に積分するか」を文章でつなぐ。

例題と理解確認

数値例題

銅線の断面が $S_0=1.0\,\mathrm{mm^2}$ から $2S_0$ まで直線的に変化し、長さが $1.0\,\mathrm{m}$、抵抗率が $1.68\times10^{-8}\,\Omega\mathrm{m}$ のとき、

\[ R=\dfrac{1.68\times10^{-8}}{1.0\times10^{-6}}\log2 =1.16\times10^{-2}\,\Omega \]

となる。平均断面積を代入した値とは一致しない。

よくある誤解

確認問題

  1. $1.2\,\mathrm{C}$ が $1.0\,\mu\mathrm{s}$ で通過するときの平均電流を求めよ。
  2. 一様導体の長さを2倍、断面積を3倍にすると抵抗は何倍か。
  3. 温度が $x$ とともに上昇するとき、抵抗率と局所発熱がどの位置で大きくなるか説明せよ。
問1のヒントを見る

ヒント: $I=\Delta Q/\Delta t$ を使う。

解答: $I=1.2/(1.0\times10^{-6})=1.2\times10^6\,\mathrm{A}$。

問2のヒントを見る

ヒント: $R\propto\ell/S$。

解答: $2/3$ 倍。

問3のヒントを見る

ヒント: $T(x)$ を抵抗率 $\eta(x)$ へ代入し、$dR=\eta(x)dx/S(x)$ を見る。

解答: 金属では高温側ほど $\eta(x)$ が大きくなり、同じ電流なら $p(x)=I^2\eta(x)/S(x)^2$ も大きくなりやすい。

今回のまとめ