3Dで学ぶ電磁気学

E-2 変位電流・Maxwell方程式・Poyntingの定理

『工科の物理3 電磁気学』第8章1〜3・6節に対応

到達目標

  • 充電中のコンデンサで電流が途切れない理由を説明できる。
  • Maxwell方程式から波動方程式を導ける。
  • Poyntingの定理で場のエネルギー収支を読める。

動かす量

  • コンデンサ電流、周波数、極板面積
  • 媒質の $\varepsilon_r$ と $\mu_r$
  • 波束の時刻と観測区間

見る順序

  1. 導線電流と変位電流をつなぐ。
  2. $\vec E$ と $\vec H$ が互いを作る様子を見る。
  3. エネルギーが検査体積へ出入りする量を測る。

電磁気学の理解実験

コンデンサの隙間には電子が渡らないのに、なぜ磁界は途切れないか

確認: 導線を切る面と極板間を通る面でAmpere経路を張ったとき、右辺へ何を数えれば同じ磁界になるか確かめます。

操作: E-2-1で導線電流と電束の時間変化を照合し、E-2-2で電界・磁界・エネルギー流を追います。

観察後に式で確認する

Maxwellが加えた変位電流項 $d\mathit{\Phi}_D/dt$ により、同じ閉曲線へ張る面を変えてもAmpere-Maxwellの法則が矛盾しません。

変位電流が導線とコンデンサ間隙をつなぐ

Maxwellが拡張したAmpereの法則は

\[ \oint_C\vec H\cdot d\vec\ell =I_{\mathrm c}+\dfrac{d}{dt}\int_S\vec D\cdot\vec n\,dS \]

です。平行平板コンデンサで端効果を無視し、極板電荷を $Q(t)$ とすると

\[ \vec D=\dfrac{Q}{S}\vec n, \qquad I_{\mathrm d}=\dfrac{d\mathit{\Phi}_D}{dt} =\dfrac{dQ}{dt}=I_{\mathrm c} \]

となります。導線を横切る面では伝導電流 $I_{\mathrm c}$、極板間を通る面では変位電流 $I_{\mathrm d}$ を数え、同じ周回磁界を得ます。

可視化 E-2-1 充電コンデンサと変位電流

対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

Maxwell方程式から電磁波が現れる

電荷・電流のない一様媒質では、Faradayの法則とAmpere-Maxwellの法則が

\[ \nabla\times\vec E=-\mu\dfrac{\partial\vec H}{\partial t}, \qquad \nabla\times\vec H=\varepsilon\dfrac{\partial\vec E}{\partial t} \]

となります。さらに $\nabla\cdot\vec E=0$ を使うと

\[ \nabla^2\vec E-\mu\varepsilon\dfrac{\partial^2\vec E}{\partial t^2}=\vec0, \qquad \nabla^2\vec H-\mu\varepsilon\dfrac{\partial^2\vec H}{\partial t^2}=\vec0, \qquad v=\dfrac{1}{\sqrt{\mu\varepsilon}} \]

が得られます。時間変化する $\vec E$ が回転する $\vec H$ を、時間変化する $\vec H$ が回転する $\vec E$ を作り、源から離れても伝搬します。

Poyntingの定理は場のエネルギー収支

電磁エネルギー密度とPoyntingベクトルを

\[ u=\dfrac12\varepsilon|\vec E|^2+\dfrac12\mu|\vec H|^2, \qquad \vec S=\vec E\times\vec H \]

とすると、局所エネルギー収支は

\[ \dfrac{\partial u}{\partial t}+\nabla\cdot\vec S=-\vec J\cdot\vec E \]

です。右辺は場から物質へ渡る電力密度です。損失のない平面波では $u_E=u_H$、$|\vec S|=vu$ となります。

可視化 E-2-2 波束とPoyntingのエネルギー収支

対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

例題と理解確認

空気中で面積 $S=20\,\mathrm{cm^2}$ の極板へ $I=10\,\mathrm{mA}$ が流れ込むと、端効果を無視した電束密度の変化率は

\[ \dfrac{\partial D}{\partial t}=\dfrac{I}{S} =\dfrac{10^{-2}}{2.0\times10^{-3}}=5.0\,\mathrm{A/m^2} \]

です。これは伝導電流密度ではなく変位電流密度です。

よくある誤解

確認問題

  1. コンデンサ電流を2倍、極板面積を4倍にすると $\partial D/\partial t$ は何倍か。
  2. $\varepsilon_r=9$、$\mu_r=1$ の媒質で波の速さは真空の何倍か。
  3. 損失のない平面波で電気エネルギー密度と磁気エネルギー密度が等しいことを示せ。
ヒントを見る

$I_{\mathrm d}=I$、$v=1/\sqrt{\mu\varepsilon}$、$Z^2=\mu/\varepsilon$ を使います。

解答を見る

1. $I/S$ なので $1/2$ 倍です。2. $v/c=1/\sqrt{9}=1/3$ です。3. $H=E/Z$ と $Z^2=\mu/\varepsilon$ を使うと $\mu H^2/2=\varepsilon E^2/2$ です。

E: 電磁波へ戻る