3Dで学ぶ電磁気学
E-1 伝搬・偏波・境界・放射
この回で身につける
到達目標
- $\vec E$、$\vec H$、伝搬方向の右手系を説明できる。
- 二成分の振幅比と位相差から偏波を判定できる。
- 媒質境界の反射・透過と電力収支を計算できる。
- 双極子放射の方向依存を説明できる。
動かす量
- 媒質の $\varepsilon_r$、$\mu_r$ と周波数
- 偏波成分の振幅比と位相差
- 二媒質の波動インピーダンス
- 双極子からの距離と観測角
見る順序
- 波が進む向きを決める。
- 一点でベクトル先端を追う。
- 境界で波を三つに分ける。
- 閉曲面を横切る放射電力を見る。
電磁気学の理解実験
媒質を変えると、速さ・波長・電界と磁界の比はどう変わるか
確認: $\varepsilon_r$ を大きくしたとき、位相速度 $v$、波長 $\lambda$、波動インピーダンス $Z$ の増減を確かめます。
操作: E-1-1で媒質と周波数を動かし、波面の間隔、$\vec E$ と $\vec H$ の長さ、$\vec S$ の向きを同時に見ます。
観察後に式で確認する
$v=1/\sqrt{\mu\varepsilon}$、$\lambda=v/f$、$Z=\sqrt{\mu/\varepsilon}$ です。非磁性媒質で $\varepsilon_r$ を4倍にすると、$v$、$\lambda$、$Z$ はいずれも $1/2$ になります。
可視化 E-1-1 平面波の伝搬
損失のない一様媒質を $+x$ 方向へ進む正弦平面波は、複素表示で
と書けます。位相速度と波動インピーダンスは
です。Canvasでは赤を $\vec E$、青を $\vec H$、緑をエネルギー流 $\vec S$ とします。三者は互いに直交し、$\vec E\times\vec H$ が伝搬方向を向きます。
可視化 E-1-2 直線偏波・楕円偏波・円偏波
同じ方向へ進む直交二成分を
とします。時間を消去すると、ベクトル先端が描く偏波楕円は
です。$\delta_p=0,\pi$ なら直線偏波、$a=1$ かつ $|\delta_p|=\pi/2$ なら円偏波、それ以外は楕円偏波です。横から見ると波の空間的ならせん、正面から見ると一点での偏波楕円が見えます。
可視化 E-1-3 媒質境界での反射と透過
媒質1から媒質2へ垂直入射するとき、電界振幅の反射係数と透過係数は
です。損失のない媒質では、時間平均電力の反射率 $R$ と透過率 $T$ が
を満たします。$Z_2<Z_1$ では $\Gamma<0$ となり、反射電界の位相が反転します。波形だけでなく、右側の電力バーで保存則も確認します。
可視化 E-1-4 振動電気双極子の放射
長さ $\ell$ が波長より十分短い電気双極子を $z$ 軸へ置くと、遠方界の主要成分は
です。平均放射電力密度と角度分布は
となります。まず同じ距離で観測角を $90^\circ$ から $0^\circ$ へ動かしたとき、電界と電力密度がどうなるかを確かめます。次に距離を2倍にし、電界振幅 $1/2$、電力密度 $1/4$、球面積4倍が同じ立体角を通る電力を保存することを一つの図で照合します。
角度と距離を分けて読む: $|E_\theta|\propto|\sin\theta|/r$ なので、双極子軸上では電界も平均電力密度も0、横方向では最大です。同じ角度で $r\to2r$ とすると $|E_\theta|$ は $1/2$、$\langle S_r\rangle$ は $1/4$ ですが、面積因子 $r^2$ が4倍になるため $dP/d\Omega=r^2\langle S_r\rangle$ は変わりません。
モデルの範囲: これは短い理想双極子の正規化した遠方界です。給電部と $1/r^2,1/r^3$ の近傍界、実アンテナの有限寸法・損失・整合は描いていません。したがって距離操作は $r/\lambda\ge2$ に限定します。
例題と理解確認
数値例題
空気から比誘電率 $\varepsilon_r=4$、比透磁率 $\mu_r=1$ の損失なし媒質へ垂直入射する。$Z_2/Z_1=1/2$ なので、
となります。反射電界は位相反転しますが、反射電力は入射電力の $1/9$ です。
よくある誤解
- $\vec E$ と $\vec H$ が同じ大きさになるわけではありません。比は波動インピーダンス $Z$ です。
- 偏波楕円は空間に固定された物体ではなく、固定点で時間変化する $\vec E$ の先端軌跡です。
- 双極子の放射強度は軸方向で最大ではなく、軸に垂直な方向で最大です。
確認問題
- $\varepsilon_r=9$、$\mu_r=1$ の媒質で、真空に対する $v$、$\lambda$、$Z$ の比を求めよ。
- $a=1$、$\delta_p=-90^\circ$ の偏波について、$+x$ 方向から原点を見る向きで回転方向を説明せよ。
- $Z_2=Z_1$ のとき、$\Gamma$、$R$、$T$ を求め、Canvasの波形と照合せよ。
問1のヒントを見る
ヒント: $v/v_0$、$\lambda/\lambda_0$、$Z/Z_0$ を $\varepsilon_r$ と $\mu_r$ で表す。
解答: $v/v_0=\lambda/\lambda_0=Z/Z_0=1/3$ です。
問2のヒントを見る
ヒント: 観測方向を固定し、$E_y$ が最大の瞬間から少し時間を進めて $E_z$ の符号を調べる。
解答: 採用した位相規約と観測方向を明示したうえで、Canvasの先端軌跡と同じ回転方向になります。観測方向を反転すると見かけの回転方向も反転します。
問3のヒントを見る
ヒント: $Z_2=Z_1$ を反射係数と透過係数へ代入する。
解答: $\Gamma=0$、$R=0$、$T=1$ です。境界で反射せず、入射電力がすべて透過します。