学部で学ぶ電磁気学 第8章
8.6 ポインティングの定理
この節では、ポインティングの定理を、対応する式と操作できる3D教材を行き来しながら確かめます。
3Dで学ぶ電磁気学
第8章教材 電磁波に対する波動方程式・ポインティングの定理
学部で学ぶ電磁気学 第8章3・6節に対応
到達目標
- Maxwell方程式から波動方程式を導ける。
- 媒質定数と波の速さを結び付けられる。
- Poyntingの定理で場のエネルギー収支を読める。
動かす量
- 媒質の $\varepsilon_r$ と $\mu_r$
- 波束の時刻と幅
- 検査体積を出入りするエネルギー流
見る順序
- 8.2の二つのcurl方程式から波動方程式を作る。
- $\vec E$ と $\vec H$ がともに進む様子を見る。
- エネルギーが検査体積へ出入りする量を測る。
電磁気学の理解実験
源から離れた場所で、電界と磁界はなぜ空間を伝わり続けるのか
操作: 媒質と時刻を動かし、固定した空間点で $\vec E$、$\vec H$、$\vec S$ と検査体積内のエネルギーを同時に追います。
確認: 8.2でそろえたFaradayとAmpere-Maxwellの二つのcurl方程式が、互いの時間変化を通して波動方程式になることを確かめます。
動かした後に式で確認する
電荷・電流のない一様媒質では、二つのcurl方程式へさらにcurlを作用させると、速さ $1/\sqrt{\mu\varepsilon}$ の波動方程式が得られます。
マックスウェルの方程式から電磁波が現れる
8.2 Maxwell方程式でそろえた四式のうち、電荷・電流のない一様媒質ではFaradayの法則とAmpere-Maxwellの法則が
となります。さらに $\nabla\cdot\vec E=0$ を使うと
が得られます。時間変化する $\vec E$ が回転する $\vec H$ を、時間変化する $\vec H$ が回転する $\vec E$ を作り、源から離れても伝搬します。
可視化 8.6 ポインティングの定理は場のエネルギー収支
電磁エネルギー密度とPoyntingベクトルを
とすると、局所エネルギー収支は
です。右辺は場から物質へ渡る電力密度です。損失のない平面波では $u_E=u_H$、$|\vec S|=vu$ となります。
正弦平面波とポインティング流
赤の $\vec E$、青の $\vec H$、緑の $\vec S$ を同じ空間に重ねます。伝搬方向を反転するときは $\vec H$ も反転するため、$\vec E\times\vec H$ は常に選んだ伝搬方向を向きます。紫の観測面 $P$ では、エネルギー密度の時間変化とPoynting流の空間変化を数値で照合します。
補助可視化 8.3・8.6 波束と検査体積のエネルギー収支
例題と理解確認
比誘電率 $\varepsilon_r=9$、比透磁率 $\mu_r=1$ の損失のない媒質では、波の速さは
です。同じ周波数なら波長も真空中の $1/3$ になります。
よくある誤解
- 電磁波は電界だけ、または磁界だけが単独で進むものではありません。
- 媒質中の波の速さは振幅ではなく、$\mu$ と $\varepsilon$ で決まります。
- Poyntingベクトルは電界の向きではなく、$\vec E\times\vec H$ が示すエネルギー流です。
確認問題
- FaradayとAmpere-Maxwellの法則から $\vec E$ の波動方程式を導け。
- $\varepsilon_r=9$、$\mu_r=1$ の媒質で波の速さは真空の何倍か。
- 損失のない平面波で電気エネルギー密度と磁気エネルギー密度が等しいことを示せ。
問1のヒントを見る
ヒント: $\nabla\times(\nabla\times\vec E)=\nabla(\nabla\cdot\vec E)-\nabla^2\vec E$ と、電荷・電流のない一様媒質の二つのcurl方程式を使います。
解答: Faradayの法則のcurlを取り、Ampere-Maxwellの法則と $\nabla\cdot\vec E=0$ を代入すると、$\nabla^2\vec E-\mu\varepsilon\,\partial^2\vec E/\partial t^2=\vec0$ が得られます。
問2のヒントを見る
ヒント: $v/c=1/\sqrt{\varepsilon_r\mu_r}$ です。
解答: $v/c=1/\sqrt{9}=1/3$ です。
問3のヒントを見る
ヒント: 平面波の $H=E/Z$ と $Z^2=\mu/\varepsilon$ を使います。
解答: $\mu H^2/2=\mu E^2/(2Z^2)=\varepsilon E^2/2$ となるので、電気エネルギー密度と磁気エネルギー密度は等しくなります。
今回のまとめ
- 電荷・電流のない一様媒質では二つのcurl方程式が互いを結び、速さ $v=1/\sqrt{\mu\varepsilon}$ の電磁波を作る。
- 電磁エネルギー密度は電界と磁界の寄与の和で、Poyntingベクトル $\vec S=\vec E\times\vec H$ がエネルギー流を表す。
- Poyntingの定理は、検査体積内のエネルギー変化・境界を通る流出入・物質へ渡る電力を一つの収支として結ぶ。