学部で学ぶ電磁気学 第8章
8.2 マックスウェルの方程式
この節では、マックスウェルの方程式を、対応する式と操作できる3D教材を行き来しながら確かめます。
3Dで学ぶ電磁気学
第8章教材 変位電流とマックスウェルの方程式
学部で学ぶ電磁気学 第8章1〜2節に対応
到達目標
- 同じ閉曲線に張る面を変えてもAmpere-Maxwellの法則が矛盾しない理由を説明できる。
- 伝導電流と変位電流を電荷保存則で結べる。
- 四つのMaxwell方程式を積分形と微分形で対応づけられる。
動かす量
- 電流振幅・周波数・極板面積・位相
- 同じ閉曲線に張る二つの面
- 四つの法則と観察する3D対象
見る順序
- 導線電流と極板間の電束変化を同時に動かす。
- 一つの閉曲線へ張る二つの面を回して見る。
- 源・面・境界・周回を四つの式へ対応づける。
電磁気学の理解実験
コンデンサの隙間で電子が渡らなくても、周回磁界が途切れないのはなぜか
操作: 位相を動かし、導線を横切る橙色の面と、極板間を横切る水色の面を同じ閉曲線 $C$ のまわりから観察します。表示する面を切り替えても、閉曲線と周回磁界は変わりません。
確認: 導線側では伝導電流 $I_{\mathrm c}$、間隙側では変位電流 $I_{\mathrm d}=d\mathit{\Phi}_D/dt$ を数えます。両者が等しいため、同じ左辺を得ます。
動かした後に、電荷保存とのつながりを式で確かめる
極板へ流れ込む電流が電荷を増やし、その電荷が作る電束の時間変化が間隙をつなぎます。変位電流は電子が真空を飛び越える流れではありません。
可視化 8.1 同じ閉曲線に張る二つの面
Ampereの法則を伝導電流だけで書くと、充電中のコンデンサでは面の選び方によって右辺が変わってしまいます。Maxwellの補正を含めると
となります。ただし、一つの面が数えるのはその面を貫く項です。導線を横切る面では $I_{\mathrm c}$、極板間の面では
を数えます。図では空間分布を保つため、極板間の $\vec D(\vec r,t)$ と周回上の $\vec H(\vec r,t)$ を固定した複数の観測点に表示します。矢印の本数は物理量ではなく、向きと長さが状態を表します。
橙:伝導電流 $I_{\mathrm c}$ と導線を横切る面 水色:電束密度 $\vec D$、変位電流 $I_{\mathrm d}$ と極板間の面 緑:同じ閉曲線 $C$ と周回磁界 $\vec H$ 紫:極板電荷 $\pm Q$
次のグラフは断面図ではなく、上の3Dモデルと同じ位相に連動する時間グラフです。横軸は位相 $\omega t$、縦軸は各振幅で規格化した $Q/Q_0$ と $I/I_0$ です。$I_{\mathrm c}$ と $I_{\mathrm d}$ が全時刻で重なり、電荷が最大の瞬間には電流が0になることを読みます。
可視化 8.2 四つのマックスウェル方程式を同じ3D文法で読む
四つの法則は、ばらばらな暗記項目ではありません。閉じた面が源を包む関係、面の境界を周回する関係、そして時間変化を同じ「体積 $V$・面 $S$・境界 $\partial S=C$」で読み分けます。ボタンを押すと、式の中で積分している幾何対象を3Dで切り替えます。
半透明の閉曲面・曲面:積分する領域 太い輪:その面の境界 $C=\partial S$ 矢印:固定した空間点でのベクトル場
電気のGaussの法則
電荷は電束の源です。閉曲面を外へ貫く正味の電束が、内部の電荷を数えます。
磁気のGaussの法則
磁束線には始点・終点がなく、閉曲面へ入る磁束と出る磁束が相殺します。
Faradayの法則
面を貫く磁束の時間変化が、その境界を周回する電界を作ります。
Ampere-Maxwellの法則
伝導電流と電束の時間変化が、その境界を周回する磁界を作ります。
電荷保存がAmpere-Maxwellの法則を閉じる
Ampere-Maxwellの法則の発散を取り、$\nabla\cdot(\nabla\times\vec H)=0$ と $\nabla\cdot\vec D=\rho$ を使うと
となり、電荷の連続の式が得られます。変位電流項は単なる付け足しではなく、局所的な電荷保存とAmpereの法則を両立させる項です。
なお、四つのMaxwell方程式と、媒質の応答を表す構成関係
は役割を分けて読みます。D編はここで電磁場の基本方程式を閉じます。E編では、この四式から波動方程式、伝搬、境界、Poyntingのエネルギー流を導きます。
教科書8.2節の順序に従うと、FaradayとAmpere-Maxwellの二つのcurl方程式が電磁界の時間発展を記述し、電気と磁気の二つのGaussの法則が初期状態の制約を記述します。Faradayの法則の発散を取れば $\partial(\nabla\cdot\vec B)/\partial t=0$ となり、初めに $\nabla\cdot\vec B=0$ なら時間が進んでも保たれます。
例題と理解確認
面積 $S=20\,\mathrm{cm^2}$ の極板へ $I=10\,\mathrm{mA}$ が流れ込むと、端効果を無視した電束密度の変化率は
です。これは伝導電流密度ではなく、電束の時間変化です。
よくある誤解
- 変位電流は、真空中を電子が極板間で渡る電流ではありません。
- 積分面を変えると物理的な周回磁界が変わるのではなく、右辺で数える項が変わります。
- $\vec D=\varepsilon\vec E$ などの構成関係は、四つのMaxwell方程式そのものではありません。
- 3D図の矢印本数は場の強さではなく、固定した観測点の数です。
確認問題
- 電流振幅を2倍、極板面積を4倍にすると $\partial D/\partial t$ は何倍か。
- 磁気のGaussの法則で、閉曲面へ入る磁束と出る磁束の和が0になる理由を説明せよ。
- Ampere-Maxwellの法則から電荷の連続の式を導け。
問1のヒントを見る
ヒント: 平行平板の一様場近似では $\partial D/\partial t=I/S$ です。
解答: 電流振幅2倍、面積4倍なので、$\partial D/\partial t$ は $2/4=1/2$ 倍です。
問2のヒントを見る
ヒント: 磁気のGaussの法則 $\nabla\cdot\vec B=0$ を閉曲面へ積分します。
解答: 磁束線に始点・終点がなく、閉曲面へ入った磁束は別の場所から出るため、外向き法線で数えた正味磁束は0です。
問3のヒントを見る
ヒント: Ampere-Maxwellの法則の両辺の発散を取り、$\nabla\cdot(\nabla\times\vec H)=0$ と $\nabla\cdot\vec D=\rho$ を使います。
解答: $0=\nabla\cdot\vec J_{\mathrm c}+\partial(\nabla\cdot\vec D)/\partial t$ から、$\nabla\cdot\vec J_{\mathrm c}+\partial\rho/\partial t=0$ が得られます。
今回のまとめ
- 変位電流 $\partial\vec D/\partial t$ を含めると、同じ閉曲線に張る面を変えてもAmpere-Maxwellの法則は同じ周回磁界を与える。
- Ampere-Maxwellの法則と電気のGaussの法則は、電荷保存則で整合している。
- 四つのMaxwell方程式が場の源・循環・流束を定め、$\vec D=\varepsilon\vec E$ などの構成関係が材料応答を与える。