学部で学ぶ電磁気学 第2章
2.4 ポアソンの方程式とラプラスの方程式
この節では、ポアソンの方程式とラプラスの方程式を、対応する式と操作できる3D教材を行き来しながら確かめます。
3Dで学ぶ電磁気学
第2章教材 ポアソンの方程式とラプラスの方程式・導体系
学部で学ぶ電磁気学 第2章4〜5節に対応
到達目標
- 電荷の有無でPoisson方程式とLaplace方程式を使い分けられる。
- 調和関数の平均値性質を、球面上の電位と中心電位から説明できる。
- 導体内部の電界0と、導体表面に現れる電荷を結び付けられる。
前提知識
- $\vec E=-\nabla V$
- Gaussの法則
- 導体中の自由電荷の移動
学習の順序
- 球の内外で電荷の有無を判定する。
- 中心電位と球面平均を比較する。
- 導体系の表面電荷と遮蔽を追う。
電磁気学の理解実験
境界上の電位が分かれば、内部の電位はどこまで決まるのか
観察ポイント: 点電荷を球の外から内へ移し、球内が電荷0の領域かどうかを最初に見分けます。
操作: 電荷位置と球面標本数を変えて、中心電位と球面平均の一致を数値で確かめます。その後、同心導体系で表面電荷の移り方を観察します。
観察した後に式で説明する
電荷密度が0なら $\nabla^2V=0$ であり、中心の電位は球面上の電位の平均に等しくなります。導体では自由電荷が移動して $\vec E=\vec0$ となり、導体全体が等電位になります。
電荷の有無がPoisson方程式とLaplace方程式を分ける
静電場では、Gaussの法則と $\vec E=-\nabla V$ から
が得られます。電荷密度 $\rho$ がある領域ではPoisson方程式、$\rho=0$ の領域では
というLaplace方程式になります。Laplace方程式を満たす電位は調和関数であり、球 $S_a$ の中心 $P$ では
という平均値性質を持ちます。ただし、この球の内部全体に電荷がないことが条件です。
可視化 2.4 球面平均と電荷の位置
赤い点電荷 $q$ が球の外にあるか内にあるかを確認する。
球面標本を増やし、色で示した電位を面積平均する。
$V(P)$ と球面平均が一致する条件をPoisson・Laplace方程式へ戻す。
点電荷 $q$球面上の電位:青から赤ほど高い注目する球面点 $R$
この図では $aV/(kq)$ を表示し、$k=1/(4\pi\varepsilon)$ としています。電荷が球の外側 $d>a$ にあれば
です。電荷が球内へ入ると、球内にPoisson方程式の源が含まれるため、この等式を使う前提が崩れます。球面標本の色は電位の相対分布であり、電気力線ではありません。
導体では表面電荷が電界0を作る
静電平衡にある導体では
です。空洞を持つ導体の内側に電荷 $Q$ がある場合、導体の厚みの中を電界0にするため、空洞側表面には合計 $-Q$ の電荷が現れます。外側導体を接地するか孤立させるかで、外面電荷と外部電界が変わります。
可視化 2.5 同心導体系と静電遮蔽
内球、外側導体、接地の三状態を切り替える。
赤を正電荷、青を負電荷として、各表面の合計を追う。
導体内部と空洞、外部を分け、どこで電界が0になるか説明する。
正の表面電荷負の表面電荷電界 $\vec E$等電位の導体観測点 $P$
半径 $a$ の内球へ電荷 $Q$ を与え、内半径 $b$、外半径 $c$ の外側導体を孤立・中性とすると、表面電荷は $Q,-Q,+Q$ となります。電位は
です。外側導体を接地すると外面電荷は0となり、理想的な同心球モデルでは外部電界も0になります。半透明表示は内部を観察するための表現であり、導体が半透明な材料であるという意味ではありません。
例題と理解確認
数値例題
半径 $a=4.0\,\mathrm{cm}$ の内球へ $Q=4.0\,\mathrm{nC}$ を与え、外側導体の内半径を $b=7.5\,\mathrm{cm}$、外半径を $c=9.5\,\mathrm{cm}$ とする。
外側導体の厚みでは電位は一定で、電界は0です。
よくある誤解
- Laplace方程式は電荷がどこにもないという意味ではなく、調べている領域内の電荷密度が0という意味です。
- 平均値性質は、球の内部に点電荷などの特異な源を含むとそのまま使えません。
- 導体内部の $\rho=0$ と、導体表面の表面電荷密度 $\sigma$ を混同しません。
- 静電遮蔽では、接地の有無により外面電荷と外部電界が変わります。
確認問題
- 球の外にある点電荷を球へ近づけたとき、中心電位と球面平均の関係はどうなるか。
- 中性の外側導体の空洞内に電荷 $+Q$ を置いたとき、内面と外面の合計電荷を答えよ。
- 外側導体を接地すると、なぜ外部電界を0にできるのか。
問1のヒントを見る
ヒント: 電荷が球の外にある限り、球内の $\rho$ は0です。
解答: 電位分布は大きく偏りますが、中心電位と球面平均は等しいままです。
問2のヒントを見る
ヒント: 導体の厚み内でGauss面を取ります。
解答: 内面は $-Q$、外面は $+Q$ です。
問3のヒントを見る
ヒント: 接地は電位を0に保つための電荷の出入りを許します。
解答: 空洞側内面の $-Q$ を大地から供給し、外面電荷を0にできるため、外部の境界値問題は $V=0$ の解になります。
今回のまとめ
- 電荷がある領域はPoisson方程式、電荷がない領域はLaplace方程式で扱う。
- 調和関数の中心値は球面平均に等しく、境界値から内部の解が制約される。
- 静電平衡の導体では自由電荷が表面へ移動し、導体内部の電界を0にする。