学部で学ぶ電磁気学 第1章
1.6 電界の発散
この節では、電界の発散を、対応する式と操作できる3D教材を行き来しながら確かめます。
3Dで学ぶ電磁気学
第1章教材 ガウスの法則と電界の発散
この回で身につける
到達目標
- 閉曲面を貫く電束と内部自由電荷を結び付けられる。
- 微小直方体の6面の流束収支から $\nabla\cdot\vec E$ を説明できる。
- 積分形と微分形のGaussの法則を同じ場で照合できる。
- 導体内部の電界が0でも電位が0とは限らないと説明できる。
前提知識
- 点電荷の電界
- 面の単位法線 $\vec n$
- 球面積 $4\pi r^2$
学習の順序
- 閉曲面で数える量を決める。
- 対称性から面上の電束密度を一定にする。
- 微小体積の流束を6面へ分け、発散を求める。
- 材料則と線積分から電界・電位へ進む。
電磁気学の理解実験
Gauss面を大きくすると、電束も増えるのか
観察ポイント: 球形Gauss面の半径を2倍にしたとき、面上の $|\vec D|$、面積、全電束を別々に確かめる。
操作: 導体半径と観測半径を動かし、観測点が導体内外をまたぐときの $Q_{\mathrm{enc}}$、$D_r$、$E_r$、$V$ を読む。
観察した後に、Gaussの法則で説明する
導体外では $D_r\propto r^{-2}$、球面積は $4\pi r^2$ なので積は $Q$ のままである。導体内では静電平衡により $\vec E=\vec0$ だが、電位は表面電位で一定になる。
別問題へ: 対称性のない電荷分布ではGaussの法則は成立しても、$|\vec D|$ を面積分の外へ出せない。
自由電荷に対するGaussの法則は、任意の閉曲面 $S$ について
です。半径 $a$ の導体球へ自由電荷 $Q$ を与え、外部を一様な誘電率 $\varepsilon=\varepsilon_0\varepsilon_r$ で満たすと、球対称性から
となります。基準を $V(\infty)=0$ とすれば、導体内外の電位は
です。電位は表面で連続し、導体内では一定です。
可視化 1.5 導体球・ガウス面・観測点
$Q$、$a$、$r$、$\varepsilon_r$ のうち、$\vec D$ と $\vec E$ を別々に変える量を選ぶ。
観測半径を導体の内外へ動かし、球面上の局所量と閉曲面全体の電束を比較する。
まず自由電荷から $\vec D$ を求め、その後で $\vec E=\vec D/\varepsilon$ を適用する。
可視化 1.6 微小直方体の6面と電界の発散
発散は、ある点の電界ベクトルが長いか短いかではなく、その点を囲む微小体積へ入る法線成分と、そこから出る法線成分の差を表します。微小閉曲面 $\Delta S$ と、その内部の体積 $\Delta V$ に対して、
です。次の図では、各成分が座標に対して一次的に変化する場
を使います。この場では微小直方体が有限の大きさでも、6面の外向き流束と体積積分が厳密に一致します。
電磁気学の理解実験
電界が存在すれば、発散も必ず0でないのか
観察ポイント: 6面の矢印を個別に追い、外向き流束の合計と $\rho/\varepsilon_0$ を比較する。
操作: $g_x$、$g_y$、$g_z$ を正負に動かす。次にセルを2個へ切り替え、紫色の共有面で法線が反転する様子を見る。
観察した後に、微分形で説明する
$x$ に垂直な2面の差は $g_x\Delta V$、$y$、$z$ 方向も同様です。3方向を足して体積で割ると $g_x+g_y+g_z$ になります。
別問題へ: 電界が場所によって変化しても、3方向の流入と流出が相殺すれば発散は0です。発散0は電界0を意味しません。
各面の外向き法線 $\vec n$ と $\vec E\cdot\vec n$ の符号を読む。
3方向の偏微分とセル寸法を動かし、単一セルと隣接2セルを切り替える。
面積分を体積で割った値と $\partial E_x/\partial x+\partial E_y/\partial y+\partial E_z/\partial z$ を照合する。
橙:外向き流束青:内向き流束紫:隣接セルの共有面
例題と理解確認
数値例題
$a=2.0\,\mathrm{cm}$、$Q=4.0\,\mathrm{nC}$、$\varepsilon_r=2.0$ の導体球について、$r=5.0\,\mathrm{cm}$ の電界を求める。
よくある誤解
- Gauss面は実在する膜ではなく、流束を数えるための仮想的な閉曲面である。
- 発散は電界の大きさそのものではなく、単位体積あたりの正味の流出量である。
- 導体内で $\vec E=\vec0$ でも、基準を無限遠に取った電位は一般に0ではない。
- $\oint_S\vec D\cdot\vec n\,dS=Q$ から直ちに $D=Q/S$ とできるのは、対称性で面上の法線成分が一定の場合だけである。
確認問題
- Gauss面の半径を3倍にすると、面上の $D_r$ と全電束は何倍になるか。
- $Q$ を固定して $\varepsilon_r$ を2倍にすると、$\vec D$ と $\vec E$ はどう変わるか。
- 導体内部で電位が一定になる理由を $\vec E=-\nabla V$ から説明せよ。
- $g_x=0.8$、$g_y=0.4$、$g_z=-1.2\,\mathrm{kV/m^2}$ のとき、電界は0でなくても発散が0になることを説明せよ。
問1のヒントを見る
ヒント: $D_r\propto r^{-2}$ と面積 $4\pi r^2$ を分ける。
解答: $D_r$ は $1/9$、全電束は1倍のままである。
問2のヒントを見る
ヒント: 自由電荷と材料則の役割を分ける。
解答: $\vec D$ は不変、$\vec E$ は半分になる。
問3のヒントを見る
ヒント: 静電平衡では導体内の電界が0である。
解答: $\nabla V=\vec0$ なので、連結な導体内部で $V$ は位置によらず一定である。
問4のヒントを見る
ヒント: 3方向の偏微分を加える。
解答: $\nabla\cdot\vec E=0.8+0.4-1.2=0$ である。各面には電界があっても、6面全体では流入と流出が相殺するため、体積電荷密度は0になる。
今回のまとめ
- Gaussの法則は閉曲面を貫く電束と内部自由電荷を結ぶ。
- 発散は微小閉曲面の正味の外向き流束を体積で割った局所量である。
- 隣接する微小体積では共有面の寄与が逆向き法線によって相殺する。
- 対称性があれば面積分から局所場を取り出せる。
- 静電平衡の導体内部は等電位で、余剰電荷は表面に分布する。