学部で学ぶ電磁気学 第1章
1.3 電界の定義
この節では、電界の定義を、対応する式と操作できる3D教材を行き来しながら確かめます。
3Dで学ぶ電磁気学
第1章教材 ベクトル場と点電荷
この回で身につける
到達目標
- スカラー場とベクトル場の違いを、電位と電界を例に説明できる。
- 位置ベクトル $\vec r$ と、その点での場の値 $\vec E(\vec r)$ を区別できる。
- 点電荷の電位と電界について、向きと距離依存性を求められる。
前提知識
- ベクトルの成分表示と大きさ
- 距離 $r=|\vec r|$
- 第1回の関係 $\vec E=-\nabla V$
学習の順序
- 場所と、その場所に割り当てられた矢印を見分ける。
- 等電位面と電界ベクトルを同時に観察する。
- $V\propto1/r$ と $|\vec E|\propto1/r^2$ を比較する。
電磁気学の理解実験
距離を2倍にしたとき、電位と電界は同じ割合で弱くなるか
観察ポイント: 点電荷からの距離を $r$ から $2r$ にすると、$V$、$|\vec E|$、半径 $r$ の球面を通る電束はそれぞれ何倍になるか。
操作: 1.3で矢印の向き、1.5で球面上の矢印と球面積を一緒に見る。局所的な場の弱まりと、球面全体を通る量を分けて考える。
観察した後に、Gaussの法則で説明する
$V\propto1/r$、$|\vec E|\propto1/r^2$ なので距離2倍でそれぞれ $1/2$、$1/4$ になる。一方、球面積は4倍になるため、$\oint_S\vec D\cdot\vec n\,dS=q$ は半径によらない。
別問題へ: 「矢印が短くなること」と「源から出た総電束が減ること」を混同せず、逆二乗則を面積の増加から説明する。
原点の正電荷から距離を2倍にしたとき、電位と電界の大きさがそれぞれ何倍になるか確かめる。
1.3の図で観測点を並べた球面を広げ、すべての電界ベクトルが一斉にどう変わるかを見る。1.5では球面積も加え、局所的な電界と球面全体の電束を別々に確かめる。
電位はスカラー、電界は方向を持つベクトルであることを $\vec E=-\nabla V$ と距離依存性から説明する。
可視化 1.3 空間の複数点に電界ベクトルを置く
ベクトル場は、位置ベクトル $\vec r_k$ を入力すると、その場所でのベクトル $\vec E(\vec r_k)$ を返す関数である。図では、原点から同じ距離にある26個の観測点を球面上に分布させ、各点を始点とする電界ベクトルを同時に置く。球の半径 $r$ をゆっくり動かし、26本が一斉に短くなることと、どの場所でも矢印が球面の外向き法線方向を保つことを観察しよう。
橙色の点 $P$ だけは、原点から点までの位置ベクトル $\vec r_P$ と、その点を始点とする場ベクトル $\vec E(\vec r_P)$ の対応を強調している。これは二つの場所を比べる図ではなく、空間の各場所に値が割り当てられることを見る図である。
数値表示は $Q=+1.0\,\mathrm{nC}$ とし、半径をメートル、電界を $\mathrm{V/m}$ で示す。
ここでは、真空中に固定した源の点電荷 $Q$ が作る静電界を考える。観測点 $P$ に置く試験電荷 $q_0$ は、源の電荷配置を変えないものとする。電界は単位正電荷あたりの力として定義され、負の試験電荷では力と電界が逆向きになる。
半径を固定して試験電荷の符号だけを反転し、青い電界と赤い力を見比べよう。電界の単位 $\mathrm{N/C}$ は $\mathrm{V/m}$ と同じである。
読み方: 半径を変えても、26本の青い矢印はそれぞれの観測点を始点とし、球面の外向き法線と平行です。同じ球面上では全点の大きさが等しく、半径を広げると $1/r^2$ に従って一斉に短くなります。$q_0$ の符号を反転しても電界は変わらず、赤い力だけが反転します。この球面は局所的なベクトル場を並べるための観測面です。面積と全電束は次の1.5で扱います。
可視化 1.5 球面を広げて全電束を測る
1.3では1点ごとの電界を見た。次は点電荷を包む仮想的なGauss球面を広げ、球面上50点の局所的な電界、球面積、球面全体を通る電束を同時に比べる。青い矢印はどの点でも外向き法線と平行で、代表点では黄色い小面積 $dS$ を垂直に貫く。半径が増すと50本が一斉に短くなるが、電束の出口となる面積は増える。
読み方: 50本は、球面の各場所に定義された局所電界を見えるように標本化したもので、矢印の本数が全電束を表すわけではありません。$R=r_0$ では観測電界と基準電界が一致するため、同じ青い矢印を $\vec E(R)=\vec E(r_0)$ と表示します。$R$ 倍で各 $|\vec E|$ は $1/R^2$、面積は $R^2$ になるため積は一定です。したがって $\Phi_D=\oint_S\vec D\cdot\vec n\,dS=Q$ は球面半径によらず保存されます。
例題と理解確認
数値例題
真空中の原点に $Q=1.0\,\mathrm{nC}$ の点電荷がある。距離 $r=0.20\,\mathrm{m}$ における電位と電界の大きさを求める。
$Q>0$ なので、電界は原点から観測点へ向かう放射方向である。
よくある誤解
- $\vec r$ は観測点の位置、$\vec E(\vec r)$ はその点に割り当てられた場の値であり、同じベクトルではない。
- 距離を2倍にすると、電位は2分の1、電界の大きさは4分の1になる。
- 負電荷でも電界の大きさは正である。負号は電界が電荷へ向かうことに反映する。
確認問題
- 点電荷からの距離を3倍にすると、電位と電界の大きさはそれぞれ何倍になるか。
- 原点に $Q=-2.0\,\mathrm{nC}$ を置いたとき、$x=0.10\,\mathrm{m}$ の点における電界の向きと大きさを求めよ。
- 点電荷の等電位面が球面になり、電界がその法線方向になる理由を説明せよ。
問1のヒントを見る
ヒント: $V\propto1/r$ と $|\vec E|\propto1/r^2$ を使う。
解答: 電位は $1/3$、電界の大きさは $1/9$ になる。
問2のヒントを見る
ヒント: 大きさを計算した後、負電荷へ向かう方向を付ける。
解答: $|\vec E|=1.80\times10^3\,\mathrm{V/m}$、向きは $-x$ 方向である。
問3のヒントを見る
ヒント: 電位は距離 $r$ だけの関数である。
解答: $r$ が一定の点は球面を作り、$\nabla V$ は $r$ が最も速く変わる半径方向を向くためである。
今回のまとめ
- スカラー場は各点へ数値を、ベクトル場は各点へ向きと大きさを割り当てる。
- 点電荷の電位は $1/r$、電界の大きさは $1/r^2$ に比例する。
- 電界は等電位面に垂直で、正電荷から外へ、負電荷へ向かう。