3Dで学ぶ電磁気学
D-3 変圧器・インダクタンス・磁気エネルギー
『工科の物理3 電磁気学』第7章2〜5節に対応
到達目標
- 巻数比と誘導電圧比を磁束鎖交数から説明できる。
- 形状と材料からインダクタンスを見積もれる。
- 磁気エネルギーとギャップ吸引力を結び付けられる。
動かす量
- 一次・二次巻数と周波数
- ソレノイドの長さ・半径・透磁率
- 磁気回路のギャップと電流
見る順序
- 磁束から二つの電圧を作る。
- 磁束鎖交数から $L$ を作る。
- エネルギー勾配を力へ変える。
電磁気学の理解実験
同じ磁束を共有する二つのコイルで、何が巻数に比例するか
確認: 二次巻数を2倍にしたとき、二次電圧、磁束、周波数がそれぞれどう変わるか確かめます。
操作: 変圧器、ソレノイド、ギャップ付磁気回路の順に、磁束・鎖交数・エネルギー・力を追います。
観察後に式で確認する
誘導電圧は磁束そのものではなく磁束鎖交数 $N\mathit{\Phi}$ の時間変化です。力はエネルギーの値だけでなく、形状を変えたときの勾配から決まります。
変圧器は同じ磁束の時間変化を二つの巻線で読む
漏れ磁束と巻線抵抗を無視した理想変圧器では、一次・二次巻線が同じ鉄心磁束 $\mathit{\Phi}(t)$ を共有します。
正弦磁束 $\mathit{\Phi}=\mathit{\Phi}_0\sin\omega t$ なら、実効値は
です。Canvasでは鉄心内の磁束、巻線の向き、二つの電圧波形を同じ位相カーソルで示します。
可視化 D-3-1 巻数比と誘導電圧
インダクタンスは磁束鎖交数と電流の比
線形磁気回路では、磁束鎖交数 $\lambda=N\mathit{\Phi}$ と電流 $I$ の比をインダクタンスと定義します。
長さ $\ell$、断面積 $S$、巻数 $N$ の十分長いソレノイドでは、端部効果を無視すると
です。巻数は磁界を強めるだけでなく、鎖交数にももう一度掛かるため $L\propto N^2$ となります。
可視化 D-3-2 ソレノイドの形状とインダクタンス
ギャップに蓄えたエネルギーの勾配が吸引力になる
断面積 $S$、鉄心長 $\ell_c$、ギャップ $g$ の線形磁気回路では、磁気抵抗とインダクタンスを
と近似できます。電流一定でギャップを変えるとき、吸引力の大きさは磁気共エネルギー $W'_m=L I^2/2$ の形状微分から
となります。3D可視化は漏れ磁束とフリンジングを無視する<strong>一様空隙・線形磁気回路の一次近似</strong>です。空隙の矢印を有限要素解析結果のように見せるのではなく、この近似で仮定した一様な $\vec B_g$ を、空隙体積内の固定45点に表示します。ギャップを狭くすると磁束、インダクタンス、吸引力が同時に増え、空隙の体積は小さくなることを同じ空間で確認します。
同じ磁束密度 $B$ でも磁気エネルギー密度は
なので、透磁率の大きい鉄心より空隙に集中します。可視化の橙色体積は温度ではなく、磁気エネルギーを蓄える領域です。一筆書きのコイル、閉じた磁束経路、空隙中のベクトル場、上下の極に働く力を一つの3Dモデルで追います。
可視化 D-3-3 ギャップ・磁気エネルギー・吸引力
緑:閉じた磁束経路 青:空隙の $\vec B_g(\vec r)$ 橙:磁気エネルギーを蓄える空隙体積 赤:上下の極に働く $\vec F_g$ 紫:観測点 $P$
次の曲線は断面図ではなく、上の3Dモデルと同じ $N,I,\mu_r$ を保ったまま $g$ だけを掃引した従属グラフです。$B_g$、$|F_g|$、$W'_m$ は単位が異なるため、それぞれの最大値で正規化し、減り方の違いだけを比較します。
例題と理解確認
$N_1=200$、$N_2=50$ の理想変圧器で一次電圧が $100\,\mathrm{V}$ なら、
です。これは負荷電流や巻線損失を無視した電圧比です。
よくある誤解
- 変圧器の磁束が巻数比で増減するのではなく、共有磁束を読む鎖交数が巻数で変わります。
- $L\propto N$ ではなく、長いソレノイド近似では $L\propto N^2$ です。
- 力は磁気エネルギーの値だけからは決まらず、変位に対する勾配と、何を一定にするかが必要です。
確認問題
- 巻数を2倍にし、他を固定するとソレノイドの $L$ と $W_m$ は何倍か。
- 理想変圧器で周波数を2倍にし磁束振幅を半分にすると誘導電圧はどうなるか。
- ギャップが鉄心より磁気エネルギー密度を持ちやすい理由を説明せよ。
ヒントを見る
$L\propto N^2$、$E\propto f\mathit{\Phi}_0$、$w_m=B^2/(2\mu)$ を使います。
解答を見る
1. $L$ と同じ電流での $W_m$ は4倍です。2. $E\propto f\mathit{\Phi}_0$ なので変わりません。3. 同じ $B$ に対して $w_m=B^2/(2\mu)$ であり、透磁率の小さい空隙のエネルギー密度が大きくなるためです。