学部で学ぶ電磁気学 第3章

3.4 電束密度とガウスの法則

この節では、電束密度とガウスの法則を、対応する式と操作できる3D教材を行き来しながら確かめます。

電束密度とガウスの法則の3D教材を見る

3Dで学ぶ電磁気学

第3章教材 誘電体と境界条件

この回で身につける

到達目標

  • $\vec D=\varepsilon_0\vec E+\vec P$ を自由電荷と分極の役割に分けて読める。
  • 誘電体界面で連続する法線電束密度と接線電界を使える。
  • 直列誘電体で電界・電圧分担・静電容量を求め、蓄積エネルギー密度と界面力の向きを説明できる。

前提知識

  • Gaussの法則
  • 電位差 $\Delta V=-\int\vec E\cdot d\vec\ell$
  • 平行平板コンデンサ

学習の順序

  1. 自由電荷が決める $\vec D$ を求める。
  2. 材料則から各誘電体の $\vec E$ を求める。
  3. 電圧分担、分極電荷、蓄積エネルギー、界面力を確認する。

電磁気学の理解実験

誘電率が大きい材料ほど、電界も大きくなるのか

観察ポイント: 界面が電界に垂直、平行、斜めの三状態を切り替え、どのベクトル成分が連続するかを見分ける。

操作: 三つの界面姿勢、誘電率比、印加電圧に対応する局所基準電位差を直接動かし、電束密度、電界、分極の向きと長さ、両媒質の蓄積エネルギー密度を同時に見る。

観察した後に、境界条件で説明する

界面に自由表面電荷がなければ $D_{1n}=D_{2n}$、静電場では $E_{1t}=E_{2t}$ である。垂直入射では前者、平行入射では後者が単独で見え、斜め入射では二条件を成分ごとに同時に使う。

別問題へ: 自由表面電荷がある場合は $D_{2n}-D_{1n}=\sigma_{\mathrm f}$ となり、この図の法線成分連続はそのまま使えない。

線形・等方性誘電体では

\[ \vec D=\varepsilon_0\vec E+\vec P =\varepsilon_0\varepsilon_r\vec E, \qquad \vec P=\varepsilon_0(\varepsilon_r-1)\vec E \]

と書きます。二材料の界面に自由表面電荷 $\sigma_{\mathrm f}$ があるとき、微小な柱と長方形経路から

\[ \vec n\cdot(\vec D_2-\vec D_1)=\sigma_{\mathrm f}, \qquad \vec n\times(\vec E_2-\vec E_1)=\vec0 \]

が得られます。界面へ垂直に電界が通り、自由表面電荷がなければ $D_{1n}=D_{2n}=D_n$ です。厚さを $d_1,d_2$、全電圧を $V_0$ とすると

\[ D_n=\dfrac{V_0}{d_1/\varepsilon_1+d_2/\varepsilon_2}, \qquad E_1=\dfrac{D_n}{\varepsilon_1}, \qquad E_2=\dfrac{D_n}{\varepsilon_2} \]

です。面積 $S$ の電極なら

\[ C=\dfrac{Q}{V_0} =\dfrac{S}{d_1/\varepsilon_1+d_2/\varepsilon_2} \]

となり、二つの平行平板コンデンサの直列接続と同じ形です。

一般の向きを一つの式で比較するため、可視化では界面法線を $\vec n$、界面内の接線方向を $\vec t$ とし、媒質1側の電界を

\[ \vec E_1=E_0(\cos\theta_1\,\vec n+\sin\theta_1\,\vec t), \qquad E_0=\dfrac{V_{\mathrm{ref}}}{L_{\mathrm{ref}}} \]

と置きます。自由界面電荷を0とすると、媒質2側は

\[ E_{2n}=\dfrac{\varepsilon_1}{\varepsilon_2}E_{1n}, \qquad E_{2t}=E_{1t} \]

です。$\theta_1=0^\circ$、$90^\circ$、$45^\circ$ が、それぞれ「界面が電界に垂直」「平行」「斜め」に対応します。

線形誘電体が蓄える電気エネルギー密度は

\[ u_{\mathrm e}=\dfrac12\vec E\cdot\vec D =\dfrac12\varepsilon |\vec E|^2 \]

です。界面に垂直な場では共通の $D_n$ に対して $u_{\mathrm e}=D_n^2/(2\varepsilon)$、平行な場では共通の $E_t$ に対して $u_{\mathrm e}=\varepsilon E_t^2/2$ です。同じ「誘電率を大きくする」操作でも、固定される境界量によってエネルギー密度の変化が逆になる点を、図中の桃色の柱で比べます。

可視化 3.1〜3.6 二誘電体の電束・電界・分極・蓄積エネルギー

着眼点

垂直では $D_n$、平行では $E_t$、斜めではその両方が連続する様子と、各媒質の $u_{\mathrm e}$ を確かめる。

操作

三姿勢を切り替え、局所基準電位差を0 Vから12 Vへ動かして、すべての矢印が一緒に伸縮するかを見る。

説明

電界全体が常に連続するのではなく、法線と接線へ分解して境界条件を適用する。

材料界面の向き
水色領域:媒質1($\varepsilon_1$) 薄紫領域:媒質2($\varepsilon_2$) 青緑:電束密度 $\vec D$ 橙:電界 $\vec E$ 紫:分極 $\vec P$ 桃色の柱:電気エネルギー密度 $u_{\mathrm e}$ 金:材料界面 赤矢印:法線 $\vec n$(媒質1→2) 緑矢印:接線 $\vec t$ 赤:正の束縛表面電荷 青:負の束縛表面電荷
対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

この図は、無限に広い平面界面の近くを取り出した局所境界モデルです。法線 $\vec n$ は媒質1から媒質2へ向き、自由表面電荷は $\sigma_f=0$、束縛表面電荷は $\sigma_b=(\vec P_1-\vec P_2)\cdot\vec n$ としています。$V_{\mathrm{ref}}$ は特定の有限コンデンサの端子電圧そのものではなく、$E_0=V_{\mathrm{ref}}/L_{\mathrm{ref}}$ で局所電界尺度を決める電位差です。これを2倍にすると、線形誘電体では $\vec E$、$\vec D$、$\vec P$、$\sigma_b$ が2倍、桃色の柱が表す $u_{\mathrm e}$ は4倍になります。矢印と柱は全操作で共通の固定尺度を使います。青緑・紫・橙の矢印を異なる $z$ 高さへ置いたのは読み分けるための表示レーンであり、各量が別の物理層だけに存在する意味ではありません。斜め状態で見える屈折は境界条件による静電場の向きの変化であり、光線の時間伝播ではありません。直列コンデンサの電圧分担式は、三状態のうち「界面 $\perp\vec E$」に対応します。

可視化 3.7 誘電体境界面に働く力

境界条件が分かると、界面両側の電気的な応力差から界面力を求められます。媒質1から媒質2へ向く法線を $\vec n$ とし、$\varepsilon_1>\varepsilon_2$ とします。電界が界面に垂直で自由表面電荷がない場合は $D_{1n}=D_{2n}=D$ なので、単位面積あたりの力は

\[ f_n=\dfrac12\left(\dfrac1{\varepsilon_2}-\dfrac1{\varepsilon_1}\right)D^2 \]

です。電界が界面に平行な場合は $E_{1t}=E_{2t}=E$ なので

\[ f_n=\dfrac12(\varepsilon_1-\varepsilon_2)E^2 \]

です。どちらも $\varepsilon_1>\varepsilon_2$ なら $f_n>0$ となり、界面は高誘電率側から低誘電率側へ押されます。

連続量を選ぶ

垂直配置では $D_n$、平行配置では $E_t$ を両側で同じにする。

材料を変える

$\varepsilon_1$ と $\varepsilon_2$ を入れ替え、力の向きが反転することを確かめる。

応力差へ戻す

両側の $\tfrac12\vec E\cdot\vec D$ の差から、界面力の向きと大きさを説明する。

媒質1媒質2電界 $\vec E$電束密度 $\vec D$界面力 $\vec f$

対話型可視化。内容は直前の本文と数式でも説明しています。

この図は平面界面の局所モデルで、表示する $f_n$ は単位面積あたりの力です。実際の物体全体に働く力を求めるには、界面上の分布を面積積分し、端部で乱れる電界も含めます。

例題と理解確認

数値例題

$d_1=d_2=1.0\,\mathrm{mm}$、$\varepsilon_1=2\varepsilon_0$、$\varepsilon_2=6\varepsilon_0$、$V_0=12\,\mathrm V$ とする。

\[ D_n=\dfrac{12}{10^{-3}/(2\varepsilon_0)+10^{-3}/(6\varepsilon_0)} =1.59\times10^{-7}\,\mathrm{C/m^2} \]

$E_1=9.0\,\mathrm{kV/m}$、$E_2=3.0\,\mathrm{kV/m}$ で、電圧分担は $V_1:V_2=3:1$ です。

よくある誤解

確認問題

  1. 自由界面電荷がないとき、界面で連続する法線成分は $E_n$ と $D_n$ のどちらか。
  2. $\varepsilon_2$ を2倍にしたとき、同じ $D_n$ に対する $E_2$ はどうなるか。
  3. $\varepsilon_1>\varepsilon_2$ のとき、垂直・平行の両配置で界面力がどちらへ向くか説明せよ。
問1のヒントを見る

ヒント: 自由電荷に対するGaussの法則を使う。

解答: $D_n$ が連続する。

問2のヒントを見る

ヒント: $E_2=D_n/\varepsilon_2$。

解答: 半分になる。

問3のヒントを見る

ヒント: 垂直では $D_n$ 一定、平行では $E_t$ 一定の式へ代入し、$f_n$ の符号を見る。

解答: どちらも $f_n>0$ となり、媒質1から媒質2、すなわち高誘電率側から低誘電率側へ向く。

今回のまとめ